表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

第四話 マラソンマン、やってしまう

 俺は強盗に向かって走った。

洞窟の中はデコボコが激しく何度も倒れそうになるが体勢をうまいこと整え、走る。

俺はずっと通学路の商店街の中を突然飛び出てくる人や自転車を避けながら走っていたんだ。

この程度の悪路、鍛えられた俺の体内姿勢制御装置の敵じゃない!


 そんな事を思いながら走り続けると強盗との距離はグングン縮まってきた。

てかマジで遅いなアイツ。

中学生だってもうちょっと速く走れるわ。


 強盗がこちらを振り返り驚愕の表情を浮かべる。


「な! なんでだよっ! なんでゴーレムが走って!」


そう叫ぶと強盗の走るスピードがアップする。


クソッ、本気で走ってなかっただけか。だがまだ遅い!


 というかゴーレムって俺の事か?

確かに俺の全身は土塗つちまみれだがゴーレム呼ばわりするとは。

何と言うか、ひょっとしてコイツもお仲間オタクなのだろうか?

そうでなければそんな表現せんだろうし……。

だがいくら趣味が近くても、犯罪に手を染めるような奴は同士なんかじゃない!

徹夜、犯罪。駄目絶対!


 俺は強盗と距離を縮めるべくスピードを上げる。

強盗もこちらを何度も振り返りながら必死の形相で走る。

距離はもう三メートル程しか離れていない。


「あっ!」


 そんな叫びと共に強盗が足を取られて転びそうになる。

しかしギリギリの所で耐えた様だ。


 だが残念。足を止めたな。

この距離。この速度。最高のタイミングだ。喰らえっ!


「ジャスティス! キィィィィィーーーーーーーック!」


俺は絶叫と共に強盗の背中に全力疾走からの飛び蹴りを叩き込んだ。


ブチブチブチゴキボキィ!


え、何。今の音?

なんだろう、すごく生理的に受け付けない音が蹴りを喰らわした強盗の背中から聞こえたような……。


 蹴りを喰らった強盗はかなり離れた前方に緩やかな弧を描きながら吹っ飛んで行き、

派手な音を立てながらゴロゴロと転がった。


 さっきの強盗の股間を蹴り上げた時もそうだったが今の俺は火事場の馬鹿力が……。

いやそんなレベルじゃない!

どう考えても非常識な程の力が湧き上がっている。

なんなんだ、一体? 

車にはねられ、母なる大地に埋められる事により、俺の中の眠れる力が解放されたのか?

いやそんな事より!


 俺の蹴り飛ばした強盗はピクリとも動かない。

そろそろと俺は倒れた強盗に近づいていき、様子を見る。


……やばい。

強盗は白目を剥き、血が大量に混ざった泡をゴボゴボと吐き出している。

俺は医者じゃないがこれなら誰だって一目でやばいとわかる。


 ど、どうする?!

このまま放って置いたらこの強盗は死ぬだろう。

そう、俺が殺した事になる。

俺が殺し…………。

せ、せ、せ、せ、正当防衛だよな! 刃物で切りかかってきたし!

いやそうじゃない! 医者! 病院! 救急車!


 俺は慌ててポケットにいつも突っ込んでいる携帯を取り出そうとする。


ゴリッ。


 あれ? ポケットが無い。

いや違う。今の俺は全身を土が覆っているのだ。


「ああ、もう、邪魔だ、クソが!」


さっきまでの命を救ってくれた感謝は何処へやら。

口汚く罵りながらポケットがある付近の土を手で落とそうとする。


ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ……。


 か、硬い! 硬すぎる!

なんだこれ? 土というか鉄?

俺は何度も手で引っかくように土を削ろうとしたが駄目だった。

鈍い音が響くだけでポケット付近の土も手に纏わり付いた方ですらも、全く落ちる気配が無い。


 というか良く考えたら俺は此処がどこか知らない。

救急車を呼んでも場所の説明が全く出来ないではないか。

どうする? どうしたらいい?


 俺は焦燥感に駆られながら必死で考える。

こいつらの仲間の所に行って説明する。うん、俺が殺されるな。

他に、他にここの場所を知ってる人はいないか!?

……………………あ、そうだ!さっきの赤い髪のお姉ちゃん!

あの人ならここの場所を知ってるかも! ついでに電話も借りれれば…。


 しかし自分を襲った奴を救う為に電話をしてくれるだろうか?

いやコイツの事はぶっ倒したとだけ言って警察を呼んでもらおう!

その時に俺、怪我してるんで救急車を……。と言えば……!


 俺は急いでさっきの場所に引き返そうとした。

その時。


カツンッ。


背後に足音が響いた。



注:洞窟の中で携帯が使えるかどうかにまでは気が回っていません

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ