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第三話 マラソンマン、走る

「「ゴーレムだっ! ゴーレムがでたぞぉぉぉっ!」」


 突然、強盗達はわけのわからん事を叫びだした。


 ゴーレム? ゴーレムって言うと魔法で作られた石人形みたいな奴だよな?

俺は後ろを振り向く。

当然そこには何も無い。


 本当に何を言ってるんだこの強盗おっさん達?

オタクの俺でもそんな物、実在しない事はわかっている。

まだアンドロイドやサイボーグの方が信憑性があるわ。

ゴーレムて (笑)。


そんな風に内心爆笑している俺なぞどこ吹く風で強盗達は青い顔をして騒いでいる。


「なんでだよ! なんでこんな田舎にゴーレムがいるんだよっ!」


都会にだっていねーよ。ゴーレム。


「畜生! こんな場所に逃げ込んだのはそういう訳かよ、クソ女がっ!」

「おい! 魔法使い呼んで来るぞ! こんなの俺等じゃどうにもなんねぇぞ!」

「ちょっと待てよ! この女どうすんだよ!」

「んなモン知るか! ほっときゃゴーレムがぶち殺すだろ! その後で回収すればいいだろうが!」


 あ、やっぱり強盗なんだなこいつ等。

しかしなんか気になる単語が出てきたな。

魔法使い? 三十歳童貞親父まほうつかいでも連れてくる気か?

ゴーレムがどうだの騒いだり、何を言ってるのかさっぱり解らん。

ひょっとして強盗の専門用語か何かだろうか?


「二人で一気に行くぞ! いくらゴーレムでも一旦逃げれれば追いかけられん!」


強盗達が俺に向かって鉈を向ける。


ちょっ!

 まずいまずいまずい! 笑ってる場合じゃねぇ!

と、とにかく何か喋り掛けて隙をつく……

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

強盗達は一斉に鉈を振り上げ、俺に襲い掛かってきた。


駄目だっ、終わったぁぁぁぁぁぁぁ! 


 俺は逃げようと後ろを振り向く間もなく俺の腕に片方の強盗の鉈が叩き付けられた……。


………………。


あれ? ぜんぜん痛くない?


 その時俺は初めて自分の体の様子に気が付いた。

鉈の叩き付けられた腕には、大量の土が付着していた。

腕だけではなく足や体、全身を覆うように土がまとわり付いている。

ひょっとして顔もだろうか? いや目は見えているから顔にはないようだ。

この土が俺を守ってくれたのか……。

ありがとう! 名も無き土よ!


俺に鉈を叩き付けた強盗は鉈の刃の背の部分を手で掴み、ウンウンうなっていた。


 やばっ! ぼさっとしてる場合じゃねぇ!

俺にダメージが無いのを見て無理やり押し込む気か!

その前になんとかせんと!

よし! 通信空手も習っていない俺がこいつを倒すにはコレしかない!

おっちゃん! ゴメン!


俺は強盗の股間を思いっきり蹴り上げた。


「ハォッ!」

強盗の一人がそんな声にならぬ悲鳴を上げ、お姉さんの方まで吹っ飛んでいった。


いやいくらなんでも飛びすぎ!

 

 こっちの命がかかっている以上手加減なしでやらせてもらった。

しかしせいぜい悶絶してその場にぶっ倒れる程度だと思っていた。

土を全身に纏っているのに重みも感じず自由に動かせるし、

これが火事場の馬鹿力とか言う奴か? 

恐らくあの男は男として完全に終わっただろうな……。

ピクピク痙攣する強盗を見ながらそんな事を思う。

あれ? もう一人はどこいった?


 辺りを見回すともう一人の強盗はいつの間にか俺の横を抜け、

後ろに走って行く所だった。


「じゃーな、クソ女! お前のお宝は後でゆっくりいただいてやるよ!」

そんな事を叫びながらそいつの姿は遠ざかり小さくなっていった。


 逃げたの……か?

まあ、これでとりあえずの安全は確保され……

いや違う!

さっき魔法使どうていいを呼ぶとか言っていた。

つまり他に仲間がいる。

どれだけ仲間がいるかわからない以上、絶対に呼ばせるわけにいかない!


 今の俺にはつちの鎧とそれを動かすパワーがある。

これもいつか剥がれ、興奮が落ち着けば力も尽きるだろう。

その前に終わらしてやる!


 幸いあの強盗の足はあまり速くない。

俺の脚なら今からでも十分追いつける。

そして股間をまた蹴り上げてやればいい。


 そう思い通りに行くかはわからないが、

逃がせばそれこそ最悪のどうにもならない事態に陥るだろう。


俺はいつもの通学路を行くかの様に強盗に向かって駆け出した。



良い子は、駄目だぜキンテキ!

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