番外:魔法使い(女)、復活。
番外編。
普段より長いし、ちょいグロ注意です。
長いといってもこれで普通ぐらいなのかな?
「ぐ……痛っ……」
私は脇腹に走る痛みに耐えながら立ち上がる。
辺りを見回すと、このダンジョンまで案内させていた山賊共は一人もいなく、
あるのはこのダンジョンのボスとも言える鎧ムカデの死体だけだった。
「ふんっ……これもあのゴーレムの仕業か?山賊共では傷一つ付けれぬだろうからな。しかしもっとも硬度の高い頭を粉砕するだと……。」
いかに天才の私といえどもそれは難しい。いや出来ない事もないぞ!
だが効率を考えれば硬度の最も低い首を切り落として殺すのが一番だ。
「あのような異常なゴーレムがいるとは……。しかしゴーレムめっ!この私を物理攻撃で一撃だとっ!」
むかつくっ!むかつくっ!このっ!この私を!
ゲシゲシッ!
転がっているムカデの死体の腹部に八つ当たりの蹴りを入れる。
っとこんな事をしている場合じゃないな。
山賊共が追いかけていた女はどこに行ったか解らんし放って置こう。
私の目的はそっちじゃないからな。
さあ、目的とレベル上げを終わらしてさっさと帰ろう。
私は杖を拾い、移動を始め…………。
あれ?私の杖が無い?
どれだけ辺りを探しても影も形も見当たらない。
というか無いのは杖だけじゃない。
私が折角杖と良く合うだろうと用意したローブと聖石で出来たペンダント。
この身に着けていたその二つも無くなっている!
ゴーレム……いやゴーレムはそんな事はせんな。
せいぜい決められた場所を歩き回り、侵入者を排除するぐらいしか出来ない物だ。
とすると山賊共か……。くくくくっ……、いい度胸だ。
この私の物に手を出すとはなぁっ……!
本来ならダンジョン奥の目的を先にしようと思っていたが気が変わった。
「さあ、レベルアップの時間だ!」
暗い笑みを浮かべながら私は外に通じる道を進み始めた。
そして後に残されるのはダンジョンのボス、鎧ムカデさん、27歳、オス。の死体だけだった。
その体は頭を粉砕され、腹部に幾つもの拳大の穴を開けていた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ふははははははっ! まだこんな所をうろちょろしていたとはなっ!」
ダンジョンの入り口の近くで山賊共はうろうろしていた。
一斉にこちらを向くと山賊のリーダーが叫んだ。
「生きてやがったのか! この役立たずがっ!」
「や、役立たず!? こ、この私を役立たずだと!」
こんな山賊なぞのアホに役立たず呼ばわりされるだとっ……!
「なにが魔法使いだ! 散々でかい態度を取っときながら一発で伸されやがって!」
ぐぬぬっ。事実なので何も言えない。
黙っている私に調子に乗ったのか次々と罵声を浴びせてくる山賊共。
「いきなり魔法で俺らに襲い掛かってきて、何が『このダンジョンまで案内するがいい』、だ!ふざけやがって!」
「移動してる最中も臭いだ汚いだ好き放題言いやがって!」
「おい! こいつ杖を持ってねぇぞ!」
山賊の一人がその事に今更気付くと一番近くにいた山賊が武器を手に私に向かって駆け出した。
「魔法の使えない魔法使いなんざ怖くねえんだよっ!」
そう叫び、山刀を振り上げ襲いかかって来る。
私は切りかかってきた山賊に片手を向けると指先を軽く振った。
シピンッ!
そんな鋭い音が響くと同時にその山賊は突如その足を止めた。
「……? おい、どうした……?」
ソイツの近くにいた仲間が声をかける。しかし山刀を振り上げた山賊はそのまま微動だにしない。
「おい! どうしたっつって……!」
その山賊の下に一人が駆け寄り、動かない仲間の肩に手を置き揺さぶった。
すると――――――――、
ボトボトドサッ!
まず頭が地に落ちた。
次に腕と胸が落ちた。
最後に思い出したかのように血を噴出しながら下半身が崩れ落ちた。
「ひぃぃぃぃっ!」
目の前でバラけた仲間に駆け寄った山賊が情けない悲鳴を上げる。
「おいおい、それぐらいで悲鳴なぞ上げるなよ。それぐらいの事なんて山賊稼業では日常茶飯事だろう?」
私は気楽な様子で朗らかに声をかける。
「き、気を付けろ! こいつ杖を隠し持ってやがるぞ!」
山賊リーダーが叫ぶと、他の山賊共は一斉に武器を構えこちらに向けた。
「杖はお前らが持っていったのだろうが! さっさと返せ! レベルを上げれぬだろうが! 」
「あぁ?! 杖なんざ知るかっ!」
ほう? 知らぬ存ぜぬで通す気か? ならば仕方ない。殺す気は無かったがこんな態度を取るんじゃあ仕方ないな。
私は無言でゆっくりと山賊共に歩を進めた。
「くっ! 一斉に行くぞ! 数で押せばこんな女なんざっ!」
「「「「おうっ!」」」」
リーダーの声に一斉に走りかかって来る山賊達。
お馬鹿さん。一斉に逃げれば一人ぐらいは助かったかもしれないのに。
仕方ない、”魔法使いとしての”レベル上げはあきらめるか――――――――――――――――――――――――
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「無い……無いぞ……どこにも……。」
私は山賊共の馬の鞍に括り付けられた荷物入れから持ち物を漁るが汚い武器か銅貨、非常食らしき臭くて硬いパン――――ゴミしか出てこない。
そもそも私の杖なぞ隠し持てる様な物でもない。
なんせ私よりデカイ特大の杖だからな!
…………別に私がチビというわけではないぞ?
はあ……。
私はため息をつくと最後のゴミを後ろのゴミの山に放り投げる。
グチャッ!
その”真っ赤な”ゴミの山の頂上に生々しい音を立ててパンが突き刺さった。
「こいつらが持っていない……とするとやはりあのゴーレムが……?」
考えにくい事だがそれしか思い浮かばない。
そもそも侵入者を殺す為のゴーレムが私に止めを刺さなかったのも不自然だ。
とするとあのゴーレムは……。
「フフフッ! ”奴”が復活しようとしているという噂……。あながち、デタラメではなかったようだなぁ!」
思わず笑い声を上げる。また”奴”と戦えると思うと背筋がゾクゾクする。
勝手に封印が解けたのなら”奴等”も文句を言うまい。
私は再びダンジョンへと進入を開始した。
本来の目的、
10年前、5人の仲間と封印した”奴”の眠る間に――――――――。
この世界の説明回みたいなのも書きたいけどどのタイミングで書くべきか……。
まあ、気ままにやっていきます。