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恋して、また恋をした

作者: 渋谷悠

初投稿。

恋愛ものって難しいです。恋心はよくわかりません。

「ごめんね」



 その一言で、私の恋は終わった。



 いつから好きだったのかなんて分からない。

 4つ年上の向かいの家のお兄さん。

 そう、お兄さんだったのだ。彼は最初から最後まで。

 私には姉が二人いるけれど、年が一回り以上離れているため生活リズムも違い、食事ぐらいしか一緒にならず、よく遊んでくれたのは実の姉たちではなく向かいのお兄さんだった。



「いいかげん、泣き止めよ…」

 ココアを差し出しながら、困ったように頬をかいて、隣に座った。

 あーだの、うーだの唸りながら、なんて慰めようか考えているようだ。

 私の恋しい人を知っていて、応援してくれていたから、気にしているのかな、失恋したこと。



 いつから好きだったか、そんなの最初からだ。

 初めて会ったときから好きだった。

 総ちゃん、あそぼ。

 そういうと、笑っていいよって言ってくれた。

 あんまりきれいな顔で笑うから、小さいころは総ちゃんは天使だと思っていた。



「総一さんさ、なんて言ってたの」

 ごめんねって言われたよ。

 思い出したら、また泣けてきた。

「うわ、なくなよ!」

 あわてて、ティッシュを差し出す。

 ハンカチは持ってなくても、ティッシュは持ってるのね。

「そうじゃなくて、お前のこと、どう思っているのかって…」

 大事だ。好きなんだよって。

 でもね、恋愛感情で見たことはないんだって。

「そっか」

 うん。

 私は、妹みたいなんだって。

「そう」

 うん。



 いつだって、総ちゃんって呼んでいた。

 お兄ちゃんって呼んだことは一度もなかった。

 お兄ちゃんじゃないから。

 総ちゃんは、たった一人の、総ちゃんだったから。 

 


 好きですって言ったら、驚いていた。

 なんでそんなこと言うのって顔をしていた。

 そんなの、知っているよって、ふんわりと笑って言ってくれた。


 そうだね、知っているよね。

 でも、違うの。

 今日言ったのはそれとは違う好きなの。

 もっと、もっと好きなんだよ。


 驚いた?

 


「これから、どうするの?」

 きまってるわ。

「ふうん」

 ちらりと笑う。そうこなくっちゃって顔してるわね。

 私は総ちゃんが好き。

 今は妹でも、いつか、一人の女の人としてみてくれるかもしれないもの。

 あきらめたりしないわ。

「でも、恋は終わったんだろ?」

 今までのはお終いよ。

「そっか」

 そうなの。

「そうか」

 楽しそうに笑うのね。

「楽しいから。お前が前向いてるならね」

 ありがとう……。



 私の恋は終わった。

 ごめんねって言われて、終わった。

 でも、また恋をした。

 あんまりきれいに、やさしく笑うから、その微笑に魅せられた。

 改めて、同じ人に恋をした。

 まだ言わないけど、好きになった。前よりもっと。

 

 迷惑をかけたりしない。

 付きまとったりしない。

 でも、あなたに私を知ってもらえるように努力する。

 いつか私がこの思いを伝える前に、あなたが別の人を選んだら、祝福するから。

 だから、好きでいてもいいでしょう?



「話を聞いてくれてありがとうね、京ちゃん」

 立ち上がって、京ちゃんを振り返る。

「どういたしまして」

 にっと笑って、京ちゃんも立った。

「俺は、お前を応援するからね。話くらいは聞いてやるよ」

「ありがとう。私も、京ちゃんの恋を応援してるからね。話くらいなら、いつでも聞くよ」

 おうって、笑いながら私の肩をたたく。

「お互い、頑張ろうな」

「うん、頑張ろうね」



 恋して、恋が終わって、また恋をした。

 難しいものだと初めて思った。

 でも、こんな幸福な気持ちは、他にはない。 

 叶うかなんて分からない。

 だからこそ、叶えるために努力しよう。

 恋をしたのだから。



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