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第一章 【5】 敵を倒せ

文章力がなさすぎて・・・

「一発で敵を…?」

「そう。僕が今から言うことをよく聞いて。これから僕は、魔法を一発やつらにぶちこむ。あんまり沢山の魔法を投げ込むと、反撃されるときにどこから攻撃が来るかわからなくなるからね。一発で5、6人はやれるよ。その後僕は塔の中に入って、生き残りを殺す。メアはここから援護して欲しいんだ」


 メアはすがるようにルイの袖をつかんだ。


「一人でなんて危ないよ!援護なんて私にできっこない」

「できる。δ(デルタ)部隊でやってきた事を思い出して。もう時間がない、行くよ」

「でも…」


 うつむいたメアの肩に手を置き、ルイは微笑んだ。


「大丈夫、うまくいくよ。もしメアのところに攻撃が行ったら、僕が守ってあげる」


 そう早口で伝えると、ルイは手元の本を開き、文字をなぞった。文字が消え、魔法が発動する。

 ルイは右手の人差し指で、塔の中にいる悪魔達を指差した。すると、どこからともなく炎の塊が現れ、悪魔達の真ん中に落ちていった。


「じゃあ、よろしくね」


 そう言い残し、通気口からルイは飛び降りた。その瞬間炎が燃え広がり、メアは思わず目をつむった。

 悲鳴が聞こえた。その後に、グシャッと何かがつぶれる音も、キン!と金属同士がぶつかる音も。

 メアは恐る恐る目をあけ、塔の中を覗いた。

 煙が立ち込めており、地上付近は見えない。これではどこから攻撃がくるかわからない。

 メアはすっと右手を差し出した。すると突風が塔内に吹き荒れ、煙をかきけしていった。


「………っ!!」


 バッと顔を背けた。あまりにも残酷すぎる。

 焼け死んだ悪魔を踏みながら、ルイが戦っていた。四方八方からの攻撃も防御魔法で弾き返し、攻撃を叩き込む。淡々と、冷酷なまでに人を殺すルイに、寒気を感じた。

 すると。


「見ィつけたァ!」


 バッと上を仰ぎ見ると、悪魔の少年が天井に張り付いていた。いつの間に、と驚愕しているメアに向け、悪魔は鋭いが小ぶりのナイフを突き出してきた。


「っ!!」


 反射的に腕で顔の前をバツ印にガードする。

 しかし、聞こえてきたのは鋭い金属音だった。

 カチカチ、とナイフを何かの金属に突き立てた音が響き、メアはうっすらと目を開けた。


「る、ルイ君!」

「メア!大丈夫!?」


 なんと、今さっきまで下で戦っていたルイが通気口の前に立っているではないか。狭い通気口のふちに足をかけ、魔力によってバランスを保ち、装備していた剣を片手に攻撃を防いでいる。


「メア!こいつを吹き飛ばして!」

「うん!」


 ありったけの魔力をこめ、最大出力の風を悪魔に叩き込んだ。

 悪魔は物凄い勢いで地面に衝突し、派手な音を断末魔に息を引き取った。


「ルイ君、下の敵は!?」

「あぁ、それは大丈夫。あらかた片付けて、あとは縛っといた。情報収集のために、学院に引き渡すよ」

「そっか」

「ケホッ…煙いから外出る?」


 ルイが口元をセーターの裾で押さえるのを見て、メアはあわてて通気口の反対側まで行く。


「じゃあ降りるよ!」


 ぎゅっとルイの手を握り、呪文を詠唱した。下から風が吹き、飛び降りたルイ達を優しく包む。

 トン、と地上に降り立ち、すぐに辺りを見回した。


「…敵はいないな。セレン達はどこだろう」

「ひとまず裏側行こう」


 グイ、とルイの手を引きながら走り始めたメアに、ルイはおずおずと口をはさむ。


「あの、メア、手…」

「えっ!?わあっ」


 ババッと手を離し、後ろに組んだ。メアはボヒュンと顔を赤くし、しかしルイに見られないように顔を背ける。


「ご、ごめん、早く行くよ!」

「あ、うん」


 と、ルイは急にあたりを見回した。顔に緊迫した表情を浮かべている。


「どうしたの?」

「いや、今、銃を発砲した音が…」

「え!?」


 メアも耳をすます。

 と。


「…けて!助けて!」


 小さいが、確かな叫び声が聞こえた。途端にルイが走り出す。


「あ、待って!ローレン達はどうするの!?」

「メアはそっち行ってて!こっちは僕がなんとかする!」


 物凄い勢いで走り去るルイを見送り、メアは塔周辺を探索し始めた。


 魔力を足にこめ、全力で駆ける。息が上がってくるが、それでもルイは走り続けた。

 やがて大きな森に入った。中は暗く、シンとしていて不安感を募らせてくる。

 たしか、もう少し先のほうで悲鳴が…。


「あ!」


 眼前に、座り込んでいる少女を見つけた。そのすぐ50メートルほど後ろには、2人組の悪魔が近づいている。


「この!」


 魔方陣を展開させ本を取りだし、ページも見ずに開き文字をなぞる。すかさず悪魔のほうを指差し、魔力によって作られた炎と氷の塊を悪魔達に叩き込んだ。


「うぉ!?」

「ぐああっ!!」


 まだ生きてるか、とすかさずまた文字をなぞる。

 今度は毒性の強い液体をぶちまけ、相手がたたらを踏んでいる間に一瞬で間を詰め、装備していた剣で相手を突き刺した。声を発する間もなく倒れた悪魔を無視し、少女にかけ寄った。


「ひっ!!」

「怖がらないで、僕も天使だから。怪我をしてるね」


 少女の足には弾丸で浅くえぐられた傷があり、血がまだ流れていた。それ以外にも切り傷や火傷をしていて、とても歩けそうではない。


「君、名前は?学院に行けば、なんとかしてもらえるかもしれない」

「あ…ぅ」


 まだショックが抜けていないのか、ちゃんと声を発せていない。

「あ、まずは傷の手当てからしよう」

「…っ」


 少女はビクリと体を震わすが、抵抗せずにおとなしく従った。

 ルイはすぐさま本のページを変え、文字をなぞる。するとルイの右手が黄緑色の光の粒におおわれ、少女の足に手をかざすと、光の粒が吸い込まれていった。じわじわと傷がふさがり、痕も消えた。


「!」

「学院に行くと、こういう便利な魔法もすぐ使えるんだ」


 少女の手をとりつつ、ルイは続けた。


「君、両親は?」

「…」


 無言でうつむく少女から、両親はいないあるいは殺されたということを察した。


「ひとまず立てる?」

「っ!」


 ルイの手を握りしめ、少女は半ば引き上げられる要領で立ち上がった。


「話せる?名前は?」

「ぼ…くは…」


 !!?

 という疑問符というか驚きがルイの頭に浮かんだ。

 ぼく…?まさか、この子。


「ぼくはユキ。あの、男で…」

「嘘…」


 ゴワーン、とタライが頭に落ちたような衝撃がルイを襲った。

 この子の年齢は多分ローレンと同じくらいだ。髪の毛は赤茶で、肩より長めで少しハネている。声も高めなので、見るからに『少女』だ。


「あの…?」

「あ、なんでもない。行こうか」


 手を握っている事自体恥ずかしくなり、片手で頬を掻きながらも歩き出す。

 森を抜け、数分歩くとメアとキセとセレンに会った。


「あ、ルイ。こっちは今終わったとこ」


 パパン!と手をはらいながらセレンが歩み寄ってきた。


「ん?誰よその子」

「おっ?浮気かルイ」


 キセが相変わらずからかってくるが、無視。


「この子、両親がいないみたいなんだ。学院に預けちゃダメかな」

「あのねー、学院は孤児院じゃないのよ。無理かはわからないけど」

「だよね…。ところでローレンは?」

「あぁ、今から合流するわ」


 と言うのもつかの間、突然金色の疾風がセレンを包み込んだ。

 しかし金色の風かと思ったモノは髪の毛で、赤く長いリボンがはためいている。


「ローレン、無事だったんだね」


 ルイが安堵のため息をつくと、ローレンはセレンの陰にバッと隠れた。


「?」

「あ、ローレンって凄く人見知りなのよ。慣れるまではあんまり喋ってくれない」


 ガーン、と肩を落とすルイ。相変わらずローレンは隠れたままだ。


「てかよ、もうこの町に悪魔いるのか?」

「頭は潰したから、残った悪魔達は逃げたハズだよ」

「そろそろ援護隊も来るから離脱してもいいんじゃない?」


 セレンの言葉に、やっと帰れる!と喜ぶキセとメア。ルイも自分が思ったより疲れているのに気づき、まだまだだなぁとため息。


「じゃあさっさとマロンのとこに戻るわよー」

「マロン?」

「キセもう忘れたの!?どアホ!!」


 町の外に出ると、ガチガチの装備に身を包んだβ(ベータ)部隊の隊長と、真っ白な制服の生徒がいた。

 改めてルイは自分のあちこちを見てみる。セーターとズボンには返り血がおびただしい量付いており、髪も乱れて前髪が片目にかかっている。誰かマニアが見たら「中2臭い!」とかワケわからん事を言い出す格好だ。魔法を使えば一瞬で汚れは落とせるから問題はないが。


「α(アルファ)部隊の諸君、お疲れ様。後は任せてくれ」

「はい、お願いします」


 メアは軽く頭を下げ、移動されていたマロンの所へ走っていく。ルイもそれに続いた。


「やっと帰れる!っていっても、学院出てから4時間くらいしか経ってないけどねー」

 

 辺りは日が陰り、そろそろ夕暮れだ。ルイ達の髪を涼しい風があおった。マロンにまたがり、手綱を引く。空高く舞い上がり、水平飛行。と、メアの声が無線から聞こえた。


「結局、塔の入りかた分からなかったね」


 ルイは苦笑した。あの驚きは一生忘れないだろう。


「分からないままでいいんだよ。それが一番平和だ」

「ん、そうだね」


 一応この会話はセレン達には聞こえていない。内緒話をしているようで、ルイは少し赤くなった。


「そ、それでね、ルイ君」

「なに?」

「あの、通気口で、わ、私を守――――」


 ゴウ、と風が吹き、メアの声が掻き消されてしまった。


「――てどういう意味?だったの?」

「あ、ごめん、風で聞こえない」

「えーっ!」


 そんなのないよー!!というメアの大絶叫を右から左へ流した後、別の絶叫が聞こえてきた。そう…


「ちょ、ルーイ!!お前メアに何ちょっかい出してんだよ!今メアの声が聞こえたぞ!?」

「キセうるさい」


 キセとセレンの声が。

 どうやらメアの絶叫は、ものすごい速度で飛んでいる別のマロンに乗った皆にも聞こえたらしい。


「ところでルイ、あの女の子はどうしたの?」

「あ、あれ男の子だよ」

「んなバカな!!」


 これはキセ。


「β部隊の隊長に預けた。ファノステル学院に引き取ってもらえるっぽいよ」


 へぇ、とセレン。

 すると、無線からは初めて聞くローレンの声がした。


「…きみの、じこしょうかい…しようよ…」

「そういえばルイの自己紹介聞いてねえな!」

「そうね」

「ルイ君、よろしくお願いしまーす」


 自己紹介って言っても…、とルイが悩んでいると、ローレンが助け船を出してくれた。


「はじめまして…」

「あぁ、そっか」


 そういえばメアにも皆にもはじめましてすら言ってなかったな。


「あー、その…」


 無線の沈黙が逆に恥ずかしく、ルイは声が小さくなっていく。


「はじめまして、僕はルイ・・・」

「小っさ!!」


 キセが絶叫したのが無線からも遠くからも聞こえた。

 ひとまず自己紹介はしたんだ!と抗議し、夕焼け空を見た。

 こうして平和に笑っていられるのも、きっと今のうちだけだ。楽しまなくては、と微笑みながら。

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