第一章 はじめまして
第一章です。第一章といっても、話は複数あります。アドバイス等もらえると嬉しいです^^
<650年・1月 ホワイティア某所>
会議室にて、国の重要機関の各責任者達が話し合っていた。
「分からないのか?我々の陣地に悪魔が攻め込もうとしているんだぞ!」
60歳前後の髪薄な男がわめく。
「そう言われても、軍事活動が行われていたのははるか昔ですよ。いまさら兵など育成して間に合うとお思いですか!?」
高年の女性も声をあげた。
「しかしなぜ今更悪魔が・・・?」
「すぐに攻めてくるほどの戦力が黒の陣にあるとは思えんが・・・」
「解決策はないの!?」
様々なところで意見があがる。
何時間も話し合った末、ある男が裁可を下した。
「これから全学院は兵の育成を目的とした教育に変え、各学院は部隊を結成し、魔法使用が可能な20歳以前のすべての天使に戦闘義務を与えましょう。あとは・・・」
男はうつむき言った。
「国境付近の天使達には、仕方ないですが犠牲になってもらうしか・・・」
そして、この会議から100年が経った。
<750年・4月 ホワイティア付近 ファノステル学院正面玄関にて>
少女がうずうずしながら立ち止まっていた。
今日は、自分が所属している部隊に新たな使生徒が加わるのだ。
自分は代表として、新入生の迎えをすることになっている。
少女の名前はメア。15歳。クリーム色の髪を肩までたらし、優しげな面持ちだ。
新入生の名前はルイ。同じく15歳で写真を見るかぎりは女の子のような顔立ちをしている。
10分ほど待っていると、正面玄関の前に真っ白な車が止まった。車といってもタイヤはなく、宙に浮いている状態だ。
静かに地面に車が着地し、ドアが開く。
中からは、メアの持っている写真に写っている人物と同じ人物が出てきた。青い髪がサラッとゆれる。
メアはその人物に話しかけてみた。
「あ、あの、ルイさん・・・ですよね?」
その人はメアのほうを向く。
美麗で整った顔にメアはドキッとした。少年とも少女ともとらえられる。
ルイはメアをみつめて言った。
「・・・君は?」
メアはあわてて自己紹介をする。
「私はメアです!ルイさんと同じ15歳です。えっと、α部隊に所属していて、ルイさんと同じで、その・・・」
内容がまとめられてないメアに、ルイは言った。
「一応話は一通り聞いてあるから、そこまで説明しなくても大丈夫だよ。同い年なんだから敬語じゃなくてもいいんだけど。それと、分かってないようだから言うけど・・・」
ルイはため息混じりにメアを見た。
「僕は男なんだけど」
「えっ!あ、ごめんなさい!女の子か男の子かわからなくて・・・」
ルイ車から荷物を降ろしつつ言う。
「まあ髪の毛男にしては長いし、女子にもこういう髪型の人いるからよく間違えられるけど、名前から判断してほしいよね。よいしょっと」
ガタン、とキャリーケースを後部座席からおろし、メアのほうを見た。
「僕、まだこの学院のことよく知らないんだよね。寮とか院内とか案内してくれる?」
「う、うん!まかせて」
二人は正面玄関に入り、ルイは入寮許可証を渡し鍵をもらった。
ファノステル学院と付属の寮は離れているため、魔方陣を使わなければならない。
「寮はいくつかの棟に分かれてるんだよ。ルイ君の棟は私と同じA棟だね」
広い正面玄関のすみっこの床にいくつかの魔方陣が描いてあった。
それぞれが壁で仕切られていて、魔方陣の真ん中には棟のアルファベットが描いてある。
「このAっていう魔方陣で行くんだけど、行きかたわかるかな・・・」
するとルイは魔方陣の上に乗りつつ言った。
「こういう形式の魔方陣は天使の魔力に反応して起動するから、足から微量の魔力を出せばいいんでしょ?」
言い終わったとたん魔方陣が金色に輝き、シュンッと風を切るような音と共にルイが消えた。A棟へとワープしたのだ。
メアは目を丸くしつつ呟く。
「なんで知ってるんだろ?」
メアも魔方陣でワープをした。
A棟の正面玄関の受付ににルイはいた。いろいろな手続きを行っているらしい。
メアは魔方陣から離れる。もしあとからワープしてきた人と重なったら大惨事になる。安全対策はされているのでそのような事は起こりえないが、一応だ。
ルイが手続きを終え、こちらにやってきた。
手続きが終わったらしい。
「荷物は預けたから、学院の案内してもらってもいいかな」
「もちろんだよ!」
そしてまた二人はファノステル学院の正面玄関に戻った。
メアが高い天井を見ながら言った。
「ここはファノステル学院。学院っていっても、並大抵の広さじゃないよ。学院がひとつの街みたいになってるの。ここも、玄関っていうよりホールみたいでしょ?」
二人は正面玄関の奥へ行く。そこにはひとつの大きな扉があった。
メアは思い切り扉を開く。
そこには洋風の町並みが広がっていた。石畳の道に噴水やレンガの店がある。道行く人々はルイとさほど変わらない年代の人ばかりだ。
「ここは一応使生徒しかいないから、いるのは10代の人だけなんだよ。たまに指揮官とか先生とかいるけどね。この町並みもひっくるめてファノステル学院!部隊ごとの教室は正面玄関にある大魔方陣でいけるよ」
「ふーん・・・」
歩きながら、メアはいろいろな施設を説明した。寮生活にはかかせないデパートや家電売り場、制服を購入できるショップや本屋や図書館までいろいろ。
一通り説明し終え、正面玄関前の広場まで戻ってきた。
「えーと、これで終わりかな?困ったことがあったら言ってね」
「あ、うん」
そこでメアはあることを思い出し、あわててルイに言った。
「あ、院長がルイ君が来たらつれてきてって言ってたんだ!どうしよう、忘れてた・・・ごめんね、行ってもらってもいい?」
「え、ああ分かった」
「場所は、学院の最上階だよ。最上階は院長室しかないから、すぐ分かると思う!私も用事あるから行くね」
そう言ってきびすを返し走り出すメアにルイは言った。
「今日はその、あ、ありがとう」
メアが振り返って一度笑い、そのまま走り去っていった。
(院長が、僕に用?手続きか何かかな)
また意味不明な書類にいろいろ書かなければならないのか、とうんざりしながら魔方陣へルイは向かった。