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Parfum  作者: 響かほり
第十四章 男の本能∴女は理解不能
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71 ~吉良side~

   第十四章  男の本能∴女は理解不能



 週明け早々、院長から榊紫苑対策のレクチャーを受けてから数日が過ぎたけれど、榊紫苑は私の前に姿を見せなかった。

 構えていた分、榊紫苑が現れないと少し気が抜けた感じもするけれど、平和な日々が私に戻ってきたような気がしてほっとしていた。

 なのに…嵐は思わぬところからやってきた。

 金曜日の午後診療の後、自動扉にクローズの札を下げて待合室に掃除機をかけていると、突如、ガンともバンともつかぬ大きな音がする。

 慌てて音のする方を見ると、自動扉のワイヤーの入った強化ガラスをガンガンと叩く人が居た。

 金髪を盛り髪にして、Ⅴ系と呼ばれる人たちの衣装を着て、シルバーアクセサリーを全身にあしらった様な男性が。

 しかも、中性的で無駄に一つ一つのパーツが整った顔をしている。肌にシミもないし肌理も細かくて羨ましいくらい。

 顔だけ見ると、女性に見えなくもないけど、二の腕とか肌が見える場所の筋肉の付き方は男性特有のそれだから、間違えようがない。

 目があった瞬間、その見慣れない男性は、笑顔で更にガラスを叩く。

 掃除機の音さえしのぐような音で。


“な、何なのこの人!?回覧板で回ってきた変質者!?”


 最近、この界隈で深夜に変質者が出るって、警察からの掲示物が閉じられた回覧板が回って来たばかり。

 たしか、その変質者は中年男性って書いてあった気がするんだけど…

 目の前のこの人は、見た目だけなら、間違いなく絢子さんと結城さん好みのイケメンなのに…行動は変質者というか…大きな子供?

 ガラスをたたき割られる前に、奥に居る院長を呼んだ方が良い様な気がして、診療室のある奥に振りかえれば、不機嫌そうな院長が姿を見せた。


「何だ、うるせぇな」


 音を聞き付けた院長の方から、眉間に深い皺を刻んで待合室に出てきてくれた。

 今日は他のスタッフさんがパートさんばかりだったので、定時に退社していて、私と院長しかいない。


「あ、院長…変な人がそこに…」


 掃除機を止めて院長にそう言えば、院長は破壊活動一歩手前な音を立てる相手を睨む。

 でも、その表情が不意に緩む。とはいっても、不機嫌な眉間の皺は全然治っていないけれど。


「…あいつ」

「?お知り合いですか?」


 院長は何も言わず、そのまま施錠された自動扉の前に行き、鍵を開けて変な人を招き入れる。


「よぉ、兄貴!久しぶり!」

「…お前、何処で調べてきた」

「え?そんなの、ネットに決まってんじゃん!このクリニック、ホムペあるし、兄貴の名前を入力したら速攻、顔写真入りで表示された!」


 たしか五藤さんが、うちのクリニックのホームページを作成してたから、それの事だろうと思うけれど、一つ疑問が浮かぶ。


“あれ…確か院長って、末っ子だったはずよね?弟なんていないわよね?”


 しかも院長のご両親は共に榊の一族の人だから、従兄弟なら医者か官僚系のはず。

 見た感じ、現れた彼は美形だから一瞬、榊の人かとも思ったけど、彼は見た感じ学生という年齢でもない。

 躾の厳しい榊家の人は、榊紫苑もそうだけど一般人にはない独特の育ちの良さがあるし、普段ラフな格好でもこんなにチャラい格好をしている人はまずいない。だから近親者ではないと判断したほうがよさそう。


「…院長、どこで弟なんて作ったんですか?」

「吉良…お前な。さらっと、俺の隠し子みたいに言うな。それから、こいつは弟でもない。他人と言う名の犬だ、犬。何しに来た、犬」

「あははははっ…俺は亮だって」


 豪快に笑った相手は院長の毒舌をさらりと受け流し、院長の影に隠れていたその顔を私の方へ覗かせた。


「あんたがキラ?」

「え…あ、はい」 思わず答えると、相手は物色するように私をじっと見る。

 なんで初対面の人間に、こんなにマジマジと見つめられるのか解らず、私は身の危険を感じて背後に一歩下がる。

 そしたら、相手が一歩近づいてくる。


「うん。わかった。何となく、そんな感じ」


 一人納得した様に頷くけれど、何が納得ポイントなのか、さっぱりわからない。


「…な、何ですか?」

「苗字は?」

「あの…苗字が吉良ですけど?」

「え?」

「ですから、吉良は苗字ですけど?」


 信じられないというような顔をして、金髪Ⅴ系の青年は更に私を食い入るようにじっと見つめたまま動かない。




アルファポリスさんの『恋愛小説大賞』にエントリーしてみました。

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二月いっぱいが投票期間になるそうです。


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