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Parfum  作者: 響かほり
第十三章 黄金色の愛の宣教師
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「え、熊さんも初聞き!?なんかずっと気になる女性がいるとか言ってたからさ、今日は見舞ついでに、その話も聞き出そうと思ってさ」

「それは是非、伊織の口から聞きたい話だね」


 亮の話に賛同するように熊井は頷きながら、逃さないぞと、俺を眼で牽制する。

 亮だけなら話を誤魔化せるが、熊井がいるとなると嘘は言えない。吉良の話に嫌でも踏み込まなければいけなくなる。


「…だからって亮、お前このために、母親に料理させたのか?」

「赤飯食わせる店なんて、俺知らねぇし」

「別に赤飯はいらないだろ」

「赤飯を馬鹿にすんなよっ!」


 むっとしたように言われても、俺には意味が分からない。


「赤飯の話は、話のネタじゃないのか?」

「日本人なら、祝い事は赤飯だろうがっ!」

「いや、俺、日本人の血は薄いから」

「日本生まれの日本育ちなら、大和魂を持てっ!漢だろ!」


 見た目の何所にも大和魂の無い、金髪ビジュアル系の亮が言っても、正直、説得力は皆無だ。

 しかも、俺は日本生まれでもない。それを否定すると更に面倒くさくなりそうだったので、言わないでおくが。


「まあまあ。とりあえずご飯を食べながらじっくり、女性の事について話を聞かせてもらえばいいよ」


 有無も言わさぬ気迫で熊井が俺に視線を向ける。

 普段はおっとりしているくせに、俺の女性関係に関しては神経過敏な熊井に、自然とため息が漏れる。

 まあ、俺が女性関係で熊井に心労をかけているということなのだから、甘んじて受ける。


「大したことは何もないが、何でも聞いてくれ」


 俺は箸を持ち、好物の唐揚げをそれとなく皿に取り寄せる。

 他の二人は、食前の挨拶をしっかりしてから箸を持って、食事を取り分け始める。

 二人が食べ始めたのを見届けてから、俺は唐揚げを口に運ぶ。

 大蒜や香辛料が効いて、酒呑み好みの濃い目の味付けではあるが、これはこれで美味い。

 けど、吉良が作った唐揚げの様に、たくさん食べようと言う気にはならない。

 何時も通り、体が、受け付けようとしないのだ。

 吉良の料理は喉を通るのに、他の人間が作った料理は思うように喉を通らなかった。


“…吉良の唐揚げは、あっさりして食べやすかったな”


 彼女の唐揚げは、生姜が効いていて、味は薄く、揚げ物だというのにあまり脂っこくなかった。

 だから食欲がなくても、たくさん食べられた。

 海老フライにしても、ハンバーグにしても、俺が食べやすいように工夫されていた。

 熱を出した時に用意した料理も全て。

 吉良の料理が俺の崩れた体調に合わせたかのように、食べやすく作られているからだ。

 今更ながらに気付いて、俺は苦笑する。

 大して親しくもない人間の体調まで考慮して料理を作るなんて、神経使い過ぎだろ。

 そのくせ、男がモーションをかけても全く気付かないあの鈍さ。

 一体、吉良の思考構造はどうなっているのだろう。


「伊織、何笑ってんの?」


 亮を見れば、箸を口にくわえて食べ物を頬張ったまま、ものすごく不思議そうな顔をしている。

 熊井も同じような表情をしている。


「さてはお前、片想いの君を思い出したな?やらしぃ」

「…何がやらしいだ。それから片想いの君って誰だ」

「お前、『俺の心を二年間、ずっと心を占めている女なら居るぞ』って、言ってただろ」

「片想いじゃない」

「なんだ!晴れて両想いか!」


 亮は、本当に一つで多くを妄想できる男だと思う。

 見て飽きないが、話をすると面倒くさいのが問題だ。


「スキャンダルじゃないかっ!」

亮に共鳴して、熊井は悲壮な顔をして叫ぶ。

「違う。付き合ってもいないし、口説きはしたけど、別に恋愛感情でその人を見ている訳でもない」

「はぁ?」


 納得のいかなさそうな亮と熊井は、互いに顔を見合わせる。

 亮がいたので、不眠治療についての話は誤魔化して、吉良とのこれまでの関係とやり取りを二人へ簡単に話した。

 従兄弟が医者である事。

 彼女が従兄弟の病院で働く、腕の良い看護師であること。

 二年間、俺を上坂伊織だと気付いていない上、俺の容姿にも興味がなさそうな事。

 幾度、口説いても俺には靡かない事。

 それらが二人にしっかりと伝わる様、説明した。

 ただし、自分が吉良に手を出したことは伏せた。

 亮や熊井を信用していない訳ではない。ただ、自分の意識が自然とそうさせた。



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