表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一章

サアア…


少年の目の前に広がっている庭の木々は,緩やかな夏の風に身を任せ,音を奏でている。


その音は,例えるならば


[川のせせらぎ]のようであり,少年の心を 体を 吹き抜けるように響き渡っていた。



少年の名は 鈴野(スズノ) 光希(コウキ)


1年前,両親をある事故で亡くし,現在は祖母,祖父の家に引き取られている。

生まれつき声帯が悪く,声が出ないってお祖母ちゃんが教えてくれた。

今は中学2年生で,丁度夏休みが終わる頃だ。

「光希君。明日は学校よ。準備はしなくてもいいの?」


お祖母ちゃんだ。


かなり穏やかな声だから,後ろからいきなり声をかけられても驚きはしなかった。


僕は声が出ないから,お祖母ちゃんに顔だけ向けて,

軽く頷いた。


「ハア…いつも言ってるでしょ?メモ張とペンを常にもってなさいって。」


頷いてるだけじゃ分からないわ,と言葉に付け足した後,僕がつかっているメモ帳とペンをわざわざ2階にある僕の部屋から持ってきてくれた。


僕はそれを受けとると,


「夕飯を食べてからにするよ。今はここに居たい気分なんだ。


わざわざごめん。おばあちゃんありがとう。」

と書いて見せた。

お祖母ちゃんはそれを見ると


「いいのよ。もっと頼ってくれても。光希君,あなたは一人でなんでもしよいこみすぎよ?迷惑なんて,これっぽっちもおもって無いんだから…」


お祖母ちゃんがそう言ってる間,ふと悲しそうな目をしたのが僕には分かった。


僕は


「うん。分かったよ。」


とメモにかいて見せた。



その日の夜,夢を見た。


ずっと向こうで誰かが手を降っている…


僕は,その「誰か」に近づこうとするけど,距離は離れるばかり。そして,「誰か」の姿がもう消えそうになった時…


「「光希…」」


この声は…父さんと…母さん…?



一瞬で辺りが闇につつまれる。



「き…こう…」


誰かの声がする。


「…」


あれ?聞こえなくなった。


「光希君!!!!」

「…!」

目を開けたら,掛け布団をまくりあげられていた。


もう…朝だ。声の正体はお祖母ちゃん。


「今日から学校よ?しゃきっとしなさい。しゃきっと!」


なんだか今日はものすごくテンションが高いような気が…


僕はその後,朝ご飯を食べてから学校へ向かった。

朝ご飯を食べている時に聞いたのだが,今日はお祖父ちゃんが帰ってくる日らしい。どうりでお祖母ちゃんの機嫌がいいわけだ。




そんな事を考えていたら,いつの間にか学校の校門に着いていた。


翼芽生中学校


僕が通っている学校だ。

ツバサメバエ中学校…なんとも洒落た名前だと,みるたびに痛感させられる。


なんでも,この名前になった理由は,翼は未来に向かって羽ばたく勇気を表していて,その勇気を芽生えさせよう。と言うことらしい。


頭に光沢がみられる校長先生が毎回,集会などで懲りずに説明している。

その熱烈に語る姿は,どこかの独裁者のようだ。

だから学校にいる皆は,イヤでも覚えてしまう。


後ろから足音が聞こえてきた。ゆっくりと近づいてきている。僕を驚かすつもりだろう。


残念だけど…バレバレだ。


僕は後ろを素早く振り向いて,「彼」を睨み付けた。


「…!?よ,よお!光希。校門に突っ立って,なにしてんだよ。相変わらず変なやつだなぁ!」


ハッハッハ と豪快にわらっている。周りの視線とか,気にならないのだろうか。 声をかけてきたのは,去年知り合った,福田(フクダ) 典弘(ノリヒロ)だった。知り合ったと言っても,彼が一方的に僕に話しかけてきただけだ。


「ただ,ぼうっとしてただけだよ。」


そうメモに書いて,彼に見せた。


「…お前は,ほんっとに相変わらずだなあ。」


そして一呼吸おいた後に


「早く,教室いこうぜ。」と言ってきた。



彼が歩き出したので,僕はなにも言わずについていった。


なにも言わず,といっても僕は喋れないのだが。


僕たちが生徒玄関に入ろうとした瞬間


不意にガラスの割れる音がした。しかも,結構な音量だ。


おそらく,校門を右に出たところにあるコンビニ付近からだろう。


僕たちは瞬間,顔を見合わせた,そして福田が言った。


「…行こう!!」


僕と福田は足を揃えて音がした場所に向かい,走り出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ