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Prism Hearts  作者: 霧原真
序章
2/222

滑り込み登校

寝不足がたたって爆睡している霧子を背中にくっつけて登校する。当然だが、人一人背負っているわけだからそんなにスピードが出るはずもなく、のろのろと学校への道を進むことになる。

「あのね~、今日の朝ごはんはふりかけごはんだったんだよ。ゆっきぃは、なにたべたの?」

「…、パン」

「パンもおいしいよね。パンだったらたまごのパンが好き~」

「そうか……」

片手にもった三つのバックを感じさせないような軽快な腕振りで、俺の隣を志穂が歩いている。こうして益体のない話をしていても、俺はどこか気もそぞろだった。

「ゆっきぃは力持ちだねぇ」

「霧子は軽いから、そんなでもない」

「でもあたしはおんぶできないよ?」

「お前は小さいからな。さっき自分で言ってたろ」

「? そだっけ?」

どうしても、後ろから注がれているいくつもの視線が気になって気になって仕方なかった。俺たちのことなんて気にしないでさっさと追いぬいてくれればいいのに、どうしてか、ちんたら歩いている俺たちを追い抜こうとしないのか。

いくつもの視線の針に全身を突き貫かれているような、そんな気分だった。一言でいうなら最悪だ。

当然分かっていたことだけど、周りを歩く人たちの視線が相当に痛い。その視線の出所の大半はうちの学園の生徒たちだ。

新入生か、あるいは周りのことに興味が全くないような人でもない限り、たいていの人は霧子のことを知っている。それほどまでに、俺の背中で無邪気に安らかな寝息を立てる娘は名の知れた存在だった。

さて、はたして彼らはどのような心持ちで俺に視線を送っているというのだろうか。

去年同じクラスで、その上理解もあるようなやつなら、もしかしたら生暖かい目に諦感を込めてスルーしてくれるかもしれない。

しかしそれはあくまでごく少数で、大半の生徒はそんなことをしてはくれない。恐らくこの光景を見てこう思うだろう、「あの男はなんなんだ、この野郎」、と。

俺としては、別に代わってくれるならその役を譲ってやっていいとまで思っているのだが、遠巻きに俺に視線を送るだけで、「代わりましょうか?」という一言をかけることすらしてこない。

こんなことは、さすがに滅多にないのだが、ある度にこうして好奇と怨嗟の入り混じったような視線に刺されるのは、正直疲れる。

登校中に眠るということの恐ろしさについて、今度しっかりと教え込んでやることにしよう。

「ゆっきぃ、おつかれなの?」

「いや、なんか、もうずいぶん慣れてきた」

「ゆっきぃ、また強くなったね!」

「あぁ、志穂よ。俺は、どこに行くんだろうな……」

「ついたところが行くところだよ。ついたらわかるんじゃない? あたしもいっしょに行っていい?」

「志穂…、お前たまに言うこと深いな……」

「? どういうこと?」

「…、まぁ、別に気にしなくていいぞ。俺の思い過ごしの可能性がものすごく高いからな。スルーしようぜ」

「え、なになに? どういうことなの?」

「せっかくスルーしようと提案してるのに……」

「ゆっきぃ、むずかしいこと言うからわかんない~。わかるようにちゃんといっていって~!」

霧子をおぶりながら登校ということで、比較的テンパっている俺なのだが、志穂はそんな俺の腕にしがみつき、ぶんぶんと振って俺に言葉の続きをせがむ。志穂はポテンシャルが半端じゃないので、当然腕力も相当以上に強い。

しかもさらに、追い打ちをかけるように俺の腕に体重を預け、ぶら下がるようにして全ての体重をかけてくるのだった。

人間一人としての重さ自体はたいしたことはないのだが、しかしそれでもやはりけっこうな負担だったりするわけである。

頼むから、俺の体にこれ以上負荷をかけるんじゃない。

「あぁっ! もう! 言うよ、言うよ! 言うから、俺の腕にぶら下がるのをやめなさい!」

「は~い」

まるでうんていで遊ぶ子どものようにぶらぶらと体を揺らしていた志穂だったが、意外とあっさり俺の腕にぶら下がるのをやめてくれたのだった。

人一人分の重しが取れた俺は、少しだけ開放的な気分に浸っていた。

「お前はたまに言うことが深い、ってことはだな、逆に考えるといつも浅いってことだよな。今のが湖くらいの深さだとするならだな、いつものがどれくらいかっていうと……」

「ゆっきぃ、よくわかんないから、もういい」

「そうか、それならもう止めておこうか。しかし…、お前はいつもだいたい自分勝手だよな。自分からしたいって言った話を自分で打ち切るのはどうかと思うぞ?」

「むずかしい話するとね、頭がうにゅ、ってなりそうだから、やめとく。ゆっきぃはやっぱりすごいね!」

「そうか? ……、あぁ、やっと着いたな」

「あっ、もう校門が見えるよ。ちこくにならなくてよかったね」

「ほんとだな。さて、そろそろ霧子起こさねぇとなぁ。志穂、歩きながらで悪ぃけどちょっと頼むわ」

「うん、いいよ」

志穂は俺の背中にいまだくっついている霧子の足を片方持つとローファーを脱がせる。志穂の名誉のために言っておくが、こいつは決して特殊性癖持ちというわけではない。

「はい、くつ。あとバックも」

「はいはい、っと。よし、やってやれ」

俺は霧子の靴と志穂の腕にある三つのかばんを受け取った。もちろん俺も、靴を受け取りはしたものの、特殊な性癖を持っているというわけではない。

霧子の足の裏に親指をあて、狙いをつけて押す。狙うのはこの間ネットで調べた寝不足のツボ。一切の容赦も呵責もなく、一気に撃ち抜いた。

「ふゎぁっ! い、痛っ!」

一撃で、全身に痺れるような痛みが走ったのだろう、霧子は体を震わせて、文字通り飛び起きた。軽く涙目になっていることだろう。

「霧子、おはよう」

「幸久君…、おはよ」

「肩くらいなら貸してやる。少しは寝たし、あとは自分で歩けるよな?」

「あ、うん。幸久君、ごめんね、重かった…、かな……?」

「いや、身長のわりに軽すぎるな。きっと晴子さんがあんまり食わせてくれてないんだろ。俺に任せろ、今度腹いっぱい食わせてやるからな」

「ぅ、うん、わかったよ」

「よし、分かればよろしい。さぁ、そろそろ遅刻でもおかしくない時間だ、急ぐぞ。志穂も急げよ」

「は~い」

志穂に撃ち抜かれた左足は当分使い物にならないだろうから、俺は霧子の左側に立って肩を貸してやる。

二人三脚みたいになりながら校門を目指しているわけだが、時間的にはかなりやばい。

少しだけ早く出てきたのに始業式から遅刻なんてことにはなりたくない。できるだけがんばろう。


…………


「あと一分で門を閉じる! 走れば間に合うぞ、急げ!」

ずいぶんと近くに見えてきた門のあたりから、凛と響く風紀委員の声。ヤバいな、門を閉じられるまでに着かないと遅刻扱いだ。

けっきょく今日も遅刻ギリギリとは、よくないな。

「ちっ…、まずいな……。志穂、霧子を頼んだぞ」

「ゆっきぃときりりんのピンチだからがんばるよ。おまかせだよ、ゆっきぃ!」

足がまだ痛いらしく、肩を貸していた霧子を志穂に預けるよ、俺は一足先に正門へと走り、手をメガホンのようにしてよく通る声を響かせながら姿勢よく立ってる風紀委員の少女に声をかける。

「よぉ、姐さん。おはよう」

「ん、三木か。新学期早々遅刻間際ではないか、今度からはもっと早く来るように気をつけるんだぞ」

「そうするよ、今度からね」

「まったく…、きちんと余裕を持って家を出れば遅刻などしないのだぞ」

「分かってるって。あっ、そういえば、姐さんは選択なに取ったの?」

「私か? 私は家庭科だ。確か三木も同じだったように思うぞ。クラス分けは、もう確認したからな」

「あっ、探してくれたの? なんか、手間かけたな」

「気にするな、手間などかかっていない」

「そうだ姐さん、今日は手伝うぜ。探してくれたお礼。カウントすればいいんだっけか?」

「あぁ、そうだ、時間は…、ふむ、あと30秒といったところだな。頼めるか?」

「まかせてくれよ、姐さん」

やや向こうの方に霧子と志穂が見える。どうやら志穂が霧子をおぶっているようで、小走りくらいのスピードで門へと迫っている。これならさっきも志穂におぶらせればよかったかもしれない。

まぁいい、追加の時間は五秒もあれば足りるだろう……、それではカウントを始めよう。

30から始めて、20を過ぎ、10に差し掛かる。

「9…、8…、7…、6…、5…、4…、3…、」

ゼロに迫るカウントが耳に届いたのだろうか、志穂のスピードが一気にあがる。人を一人おぶっているとか、そんなことを感じさせない軽快な走りだった。

「あっ、そうだ。姐さん、いま何時か分かる?」

「またか…、はぁ、八時だ」

「7…、6…、5…、4…、3…、2…、」

霧子を背中に乗せているはずの志穂が、まるで競走馬のようにゴールラインである正門に突っ込み、そして速度を落とさず向こうの方へと駆けて行った。

その背中は、もうすでに見えない。

「門を閉める! 怪我をするようなことはしないように!」

そしてゆっくりと門が閉められ、脇に控えていた数人の風紀委員によって止められた遅刻者は門の外に閉め出されるのだった。

「間に合ったものは行ってよし。門外のものは生徒手帳を出して待つように」

「それじゃあな姐さん」

「三木、それではまたあとでな。皆藤と天方にも遅刻には気をつけるよう言っておいてくれ。あと、こんなことはもうしないからな」

「おっけ、了解」

そう言いながらも付き合ってくれる姐さんが大好きだ。

さて、志穂はどこまで行ったかな、と。

「おぉ、いたか」

基本的に全力で走り出したら直線にしか進めない志穂は、どうやら昇降口のあたりまで行ってようやく止まることができたらしい。

急ブレーキでもしたようなゴムが地面に焦げ付いた匂いを周囲にばらまきつつ、志穂はこちらに向かってぶんぶんと手を振っている。

その横で霧子が

「よしよし、今日も遅刻にならなかったな」

「うまくいったね!」

「ね、ねぇ…、のりちゃんに悪いからもう止めない?」

「霧子が寝坊しないようになったら止めような」

「う、うにゅ……」

明らかに原因が自分にあると分かっているからか、簡単に引き下がる霧子。これをやめてしまうと、これまでギリギリと偽っていたものがまるごと遅刻になってしまいかねないのだ。

まぁ、姐さんも分かって付き合ってくれているというか、優しさで見逃してくれているというかだし、まぁ、本当にマズいとなれば言ってくれるだろう。

「っていうか、あれは姐さんの温情だしな」

「りこたん、やさしいからね」

「うにゅ、だから早くやめさせてあげられるようにがんばらないと……」

さて、さっさとクラス分けを見に行かないとな。さっきの口ぶりからして姐さんは俺と同じクラスらしい。となると、家庭科専攻は一クラスにまとめるって話を聞いてるし、俺たち四人は全員同じクラスっていうことになるのだろうか。

出席番号的に霧子の名前を探すのが一番早いな。その名前があった組が一年間我らのホームになるわけだ。

早く探して教室にいかないと、せっかく門を抜けたのに遅刻にされるしな、急がないと。

そういえば、さっきの風紀委員の女の子の名前は風間紀子カザマ ノリコという。通称「風紀の申し子」「風紀の戦乙女」。

どこからどう見ても普通の学生にしか見えないけど、彼女は風紀委員会のエリート部隊、特別突撃鎮圧部隊に所属する俺たちの友だちだ。

どちらかといえば地味な外見をしているが、それとは裏腹に普通とか地味とかからはほど遠い、非常に充実した学生生活を送っている。

入学式の翌日には風紀委員に入っていたという奇特な志願兵であり、一兵卒から実績を積み上げ、夏休みが終わるころには今も所属している部隊に所属替えになったというエースアタッカーである。

風紀委員長、またの名を幕僚長にもっとも近い人間といわれている、それが我らの姐さんだった。

もう姐さん以外に呼び方が思いつかない。

たぶんまともに張り合えるのは志穂くらいだろう。二人が手加減抜きの本気の本気でふつかりあったら地が裂け、天が割れると言われている。

あぁ、二人とも俺の味方でほんとによかった、とほっと胸をなでおろしたくなるほどだ。

「ゆっきぃ、はやくはやく!」

「ほんとに、霧子の名前は探しやすくていいな。出席番号二番なんて、俺からしたら信じられないぜ」

「にゅ、今年は一番じゃなかったね」

「一番なんて夢のまた夢だな、俺にとっては」

「ゆっきぃ、は~や~く~!」

そして、俺たちの教室は二年七組だったらしい。

まぁ、二年からは単位制だから共通科目とHR以外はクラスがばらけることも多いのだが、教室の中のつながりっていうのはけっこう重要なわけである。

それに選択授業もそこまで多いわけじゃないしな。

しかし…、今年も席が遠いな……。

「いや、別に分かってたことなんだけどさ」

天方、皆藤、風間と来て、三木だから仕方ないんだけど、なんかつまらん。だいたい席順が名前の順だからいけないんだ。事態の改善を要求したいところだ。

…、いやいや、そんな後ろ向きはいけない。前向きに解決策を探ろう。

そうだな…、まずは手始めに周りのやつに声をかけてみるか。それで話相手をつくればいいな。

…、なんて思いながら教室までたどり着いたわけなんだが、周りを見渡すとどこを見ても男がいない。

「あれ?」

えっ? なになに? みんな遅刻?

そんなことはあり得ないと、俺だって分かっているが、どうしても悪い想像を心の底に押し込み、ずっとましな幻想に逃げ込もうとしてしまう自分がいた。

だが現実は非情である。すでに席はすべて埋まっている。

男、俺一人、なの……?

なんだ、みんなそんなに単位が大事か? そんなに勉強が大事か? 俺は異端者か?

いや、なんか空気がおかしいと思ったんだよ。教室入ったときほんのり甘い香りがした気もする。

まぁ、家庭科だしな……。ほんの、ほんっの少しだけなら覚悟してたよ。

まぁ、ほんとになるなんて思ってなかったけどさ。

とりあえずだ…、当初の目標通りに席の近くに話せる人を見つけねぇとな。

「ぁ…、ぁの……」

「ん……?」

俺が「俺ならできる俺ならできる俺ならできる……」と効果があるのか甚だ怪しい独り言自己暗示をかけていると、なにか声のようなものが聞こえてきたような気がする。

ついで肩になにかがかすったような感覚があった。

「…、俺、ですか?」

可能性にかけて振り返ってみる。

初日から、クラス唯一の男子というマイノリティになってしまった俺に降って湧いたような大チャンス。世界もまだまだ捨てたもんじゃないかもしれないな……。

しかし俺が振りかえると、隣に座っている女子はアプローチをかけてきたときのアグレッシブさはどこへやら、急にあたふたとし始めた。

あれ…、もしかして、ただの気のせいだったのか?

しかし、一度掴んだチャンスをやすやすと手放すことはできない。そんなことをしてしまえば俺はクラス唯一の男子として、肩身の狭い生活を送ることになりそうな感じがしてならないから。

「いま俺の肩、叩いたよね。俺は三木幸久。よかったら、君の名前、教えてくれないかな?」

できるだけ優しく、丁寧に言葉を選んでいい奴を演出しながら、俺はいまだわたわたとあわてた様子の隣の席の女の子に声をかけていく。

わたわたと、なぜか自分のカバンをあさり始めるお隣さん。どうしたんだ? 宗教上の理由か?

「あの…、どうかした?」

俺の声が聞こえないかのように無心にカバンをがさがさとあさり、そしてぱっと嬉しそうな顔をしたと思うと、なにかを取り出した。

……。携帯…、電話?

メールでも来ていたのか、急にキーをかたかたと叩き始めたかと思うと、今度はその画面を俺にぐいっと突きつけてきた。見せられたのなら見ないわけにはいかない。

仕方なく、画面に踊る文字に目をやった。

『持田メイ』

持田、メイ? もちだって…、もしかして名前か?

「もしかして…、名前?」

こくっ こくっ

あぁ、なるほど、お隣さんのお名前は持田さんだったわけだな。そうだよな、俺は「み」なんだし、「も」はけっこう近いしな。しかし、なぜに携帯電話?

「…、で、持田さん」

『メイ』

「……、メイちゃん」

『メイ』

「…、メイも、家庭科専攻だよな。料理好きか?」

『あんまりやったことない』

「あぁ、なるほど、できるようになりたいってことか」

『うん』

なんだかチャットしてるみたいだ。会話に挟まる微妙なタイムラグとかのあたりが。

あと、意外と押しの強い娘なのかもしれない。

『アドレス教えてほしい』

「ん? メアド? いいよ」

俺は、カバンから携帯を取り出した。

そして気づく。

「なんだ、もしかして同じ機種じゃない? おぉ…、なんかこの機種使ってるやつ少ないんだよね」

こくっ こくっ

なんだかそれだけで仲間のような気がしてくるから不思議である。いつの時代でもマイノリティは結束するものなのだ。

「ほれ、赤外線」

俺が携帯を差し出すと、メイもおずおずと携帯を出してくる。赤外線を飛ばして通信完了。

すぐにメールが届いた。

『メイです、これからお隣さんだけどよろしくね♪ 仲良くしてほしいな?』

「あぁ、よろしく」

しかし、打つの速いな…、確かにこれだけ速けりゃ会話もできるか。っていうか、今も会話してたか。

『幸久くんはお料理するの?』

「あぁ。そうだ、ここで隣になったのもなにかの縁だからさ、調理実習同じ班になろうぜ」

前情報によると、実習は五人で一つの班になるらしい。俺、霧子、志穂、姐さん、メイでちょうど五人になるわけだしちょうどいいだろう。

しかしこの班だと五人のうち霧子と志穂が使い物にならないという状況になるわけで。若干だが、これでいいのか、と思わないこともない。

ちょうどいい、この機会に二人の考えを修正して、料理上手のいいお嫁さんに仕立てあげてやることにしよう。

『いいの? うれしい……』

「いや、あと一人どうしようかと思ってたから、こっちとしても助かってるんだ。お互い様だな」

『あたし、お友だち少ないからどうしようかと思ってたの。誘ってくれて、ありがと』

「それならさ、あとで俺の友だちに紹介するよ。仲良くしてもらえばいい」

『幸久くんも、なかよくしてくれる?』

「当然だ。お隣さんだからな」

少し恥ずかしそうにはにかむメイに、なんとなく心が温かくなるような気がした。

よしよし、無事にお隣さんと仲良くなることができたぞ。しかし、これって俺が一人でしゃべってるみたいに見えないだろうか?

それで変人扱いされたりしたら、ちょっと嫌だな……。

そしてチャイムが鳴って教師が扉を開き、朝のホームルームが始まるのだった。今日はこのあとの始業式が終われば学校も終わりで、すぐ家に帰れる。

せっかくだから霧子と志穂と、あとメイ、時間が空いてるなら姐さんも家に呼んで、昼飯でもいっしょに食うとしよう。

そうしたら、みんなの親交もきっともっと深まることだろう。

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