じゃあね親友
「私ね、今度引っ越すんだ。遠い街に行くの」
一番の親友が突然告げた。
そっか、と私は返す。
しばらく私たちの間に沈黙が居座った。
何を言うべきだろう……。
本音を言えば引越しなんてして欲しくない。でもそれは私のわがままだ。
私たちは子どもで、何をしたところでどうしようもないことがあると理解している。
だから――わがままを言って彼女を困らせたくない。
だって、離れたくない気持ちはきっと彼女も一緒のはずだ。
じゃあ何を言うべきか。
引っ越しても元気でね? 離れてもずっと友達だよ?
どれもこれも薄っぺらい。
もっと彼女に伝えなきゃいけないことがあるはずだ。……だけど、それは言葉になってくれない。
「……何も言ってくれないんだね」
沈黙を散らした失望の言葉。
一番の親友は悲しみに染めた瞳で私を見た。
彼女はなにか伝えようとしたのか口を開いたが、言葉にはならず、代わりに出たのは決定的な別れの言葉。
「じゃあね」
それだけ言うと去っていく友達。
その背に――行かないで、と言うことはできなかった。手を伸ばすことさえ、私は……。
――この時、私は無様でも不格好でも、彼女に「行かないで」と言うべきだった。
それでも黙ったままでいたのは、怖かったから。
私の“一番”。
何よりも大切だった……その気持ちが友情以上のものだと認めてしまうのが怖くて、物わかりがいいフリをして……結果、私の手から零れ落ち、二度と会えなくなってしまった。
いくつ歳を重ねようと、私は失ってしまった“特別”にいつまでも心囚われている。




