アメ
蜂熊真澄:飴ちゃん舐めてる女の子。
鶫侑芽:真澄ちゃん舐めたい女の子。
:本編
侑芽:「(M)飴玉。口元から覗くグレープの色味が、彼女の舌の動きに乗せられて、からりと隠れる」
真澄:「――ねぇ。聞いてる?」
侑芽:「え、あ、うん。聞いてるよ」
真澄:「ウソつけ」
侑芽:「(M)からり、と、また音がして。彼女の頬に、小さな膨らみが浮かんだ。私は、衝動に駆られる」
侑芽:「う、ウソじゃないよ」
真澄:「じゃあ、何の話してたか、言ってみなよ?」
侑芽:「え、えっと……」
真澄:「ほらね。やっぱり聞いてないんじゃん」
侑芽:「ご、ごめん……」
侑芽:「(M)からり、と。今度は反対側の頬に、小さな膨らみが移る」
侑芽:「ね、ねぇ……」
真澄:「うん? なに?」
侑芽:「(M)彼女の純粋な瞳が、私を見つめる。頬杖をついて、じっと」
侑芽:「あ……えと……」
真澄:「なによ、どうしたー?」
侑芽:「(M)私は目を逸らして俯き、固まってしまう。顔が赤く、熱くなるのを感じて、今すぐにでも逃げ出したくなる。でも、それ以上に――」
真澄:「……侑芽?」
侑芽:「(M)彼女が私の名前を呼ぶ声が、耳の奥で蕩けるように響く。私はぎゅっと目をつぶって、大きく息を吸った。胸の内でわだかまり、溢れる瞬間を今かと今かと待っている衝動を、なんとか振り払うようにして、顔を上げる」
侑芽:「その飴、私にもちょうだい」
真澄:「え。なんだ、そんなことか。いいよ」
侑芽:「(M)彼女はあっさりと、ポケットの中から飴玉を一つ取り出した。それを、私の方へと差し出す」
真澄:「はい。たぶん、オレンジ味。他のがいい?」
侑芽:「う、ううん、これで大丈夫」
侑芽:「(M)手が震えていた。包装を破くのも苦労して、ようやく口の中へと放り込む」
真澄:「おいしいでしょ?」
侑芽:「うん、おいしい」
侑芽:「(M)ウソじゃない。それに、彼女がくれるものは、なんでも嬉しくて、おいしくないものなんてないんだ」
侑芽:「(M)でも――」
真澄:「〜♪」
侑芽:「(M)彼女は呑気に、鼻歌を唄ってる。こっちの気も知らないで」
侑芽:「(M)また、からり、と音がして」
侑芽:「(M)そうして頬に浮かぶ、小さな膨らみに、私の心臓はどうしようもなく跳ねた」
侑芽:「(M)舐めたい、と、そう思ってしまった。その膨らみを口に含んで、深いキスのように味わいたい、と」
侑芽:「(M)でも、それは決して叶わない。歪んだ願望は、決して表に出してはいけない。だから、私は必死に衝動を抑え込んで――」
侑芽:「(M)飲み込んだ唾の中に、少し苦味のあるオレンジの味が混ざり込んで、私の喉を締め付けるように、息苦しさを残していった」




