01
魔法国ウィンストン
私が生を受けたのは、魔法国とは名ばかりの小国の、さらに田舎の農家であった。
この国では魔法を使える人の事を魔法士と呼び、魔法の実力で身分が決定する。
魔法は基本遺伝し、貴族の子は貴族になるし、農家の子は農家になる。
ただ、ごく稀に例外が発生する。
私ヴィクトリアもその例外の内の1人だった。
私が産まれた時は嵐の晩だったらしい。
らしいというのは、母は私を産んだ後、すぐそのまま亡くなってしまったからだ。
私を取り上げてくれた産婆さんは
「酷い晩だった。稲妻は闇を切り裂き、雨は酷く、まるで天が落ちて来るんじゃないかと身をすくめたよ。ただ、赤ん坊を取り上げた時、一瞬空気が凍った気がしたんだ。でもその子を見て確信したよ。この子が今その一瞬を作り出したんだ。この子は絶対只者にはならないよ。」
といつも語ってくれた。
母を失った私は、そのまま孤児院で育てられる事になった。
父はどこ?とシスターに尋ねると
「貴方のお母さんは元々都会の方で働いてたけど、ある日お腹を大きくして1人でこの町に帰って来たの。その時の子供が貴方よ。だから、父が誰かはわからないわ。もしかしたら天に召します神様かもしれない。でもそんなの関係ないのよ。だって私達が貴方の家族なのだから。」
と優しく諭してくれた。
孤児院には私の他にも沢山の子供がいた。
毎日神に祈りを捧げ、農作業を行いながら、私は孤児院の家族達と無邪気に楽しく生きていたのだ。