4-2. リナの呼び込みで繁盛
翌日から、本格的に営業を開始した。
「いらっしゃいませー! 新感覚マッサージのお店ですよー!」
店の前では、リナが元気よく呼び込みをしている。
彼女の明るい声が通りに響き、道行く人々が興味を持って足を止める。
(さすがリナ、人付き合いが得意なだけあるな)
彼女はこの町での顔も広く、通りかかった知り合いに声をかけては店に誘い込んでいた。
「ねえねえ、お兄さん! ちょっと疲れてない? うちのマッサージ、すっごく気持ちいいよ~!」
「え、マッサージ? そんな店あったっけ?」
「昨日オープンしたばっかりなの! 私も働いてるから、安心して来てよ♪」
「お前がいるなら…まあ、ちょっと試してみるか」
そんな調子で、少しずつ客が増えていった。
◆
店に来る客層はさまざまだった。
リナが知り合いの町人たちを呼び込んでくれるおかげで、主婦や労働者が訪れることもあれば、偶然通りかかった旅人が興味本位で入ってくることもある。
そして、リナが元ギルド職員だったこともあり──
「お、リナじゃねぇか。なんだ、ここで働いてんのか?」
「そうなの! ねえ、マッサージどう? 冒険者さんって絶対体バキバキでしょ?」
「まあ、確かに…んじゃ、試してみるか」
冒険者たちも次第に店に足を運ぶようになった。
◆
施術を受けた人の反応は、どれも上々だった。
「おお…これは…!」
「今までのマッサージとは違う…!」
「じわ~っとくるな…こりゃ癖になるわ」
微弱な雷魔法による刺激が、他のマッサージ店では味わえない独自の快感を生み出していた。
初めて受けた客たちも、帰る頃にはすっかり満足した表情を浮かべていた。
(これは…本当にいけるかもしれない)
◆
「もっと強くしても大丈夫ですか?」
「おう! 俺たちは頑丈だからな、ガツンと頼むぜ!」
冒険者たちは基本的に体力があり、体のコリも深い。そこで、少し強めに雷魔法を込めながらマッサージを行うと──
「おおっ! これはすげぇ…!」
「痺れる感じがたまんねぇな!」
彼らは満足そうに笑い、リピーターになってくれる者も増えていった。
◆
しかし、数週間営業してみると、客層がある程度固定化されていることに気がついた。
──年配者と冒険者が多い。
もちろん、この層は常連客としてありがたい。しかし、店の経営を考えれば、もう少し幅広い客層に来てもらう必要がある。
「どうしたの?」
店の片隅で考え込んでいると、リナが顔を覗き込んできた。
「いや、客層のことを考えてたんです。今のところ、冒険者や年配の人が多いですよね」
「うーん、確かにそうかも?」
「今後のことを考えると、もう少し違う層の人にも来てもらえたほうがいいんですが…」
リナは腕を組んでしばらく考えた後、ぽんっと手を打った。
「じゃあさ、女性向けのメニューとか作ってみる?」
「女性向け?」
「うん、例えば美容とかリラックス効果を強調するとか! 女性はそういうの好きだから♪」
(なるほど…)
確かに、今のままでは「疲れた体を癒すマッサージ」という印象が強く、女性が気軽に来られる雰囲気ではないかもしれない。
「それは、いいアイデアですね。ちょっと考えてみます」
こうして、新たな客層を取り込むための策を練り始めた。