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最弱魔力の異世界マッサージ師  作者: 紡識かなめ
第3章. 偶然の発見と転機
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3-2. 快感の再現と肩こりマッサージ

翌朝、家の扉を叩く音がした。


(……誰だ?)


まだ町の知り合いはほとんどいない。何かの勧誘か、それとも昨日の女の子が文句を言いに来たのか──


扉を開けると、そこには昨日の彼女が立っていた。


「あ…おはようございます!」


予想外に明るい笑顔。抗議しに来たわけではなさそうだ。


「えっと…どうかしました?」


「昨日のことなんですけど…」


彼女は少し頬を赤らめながら、もじもじと足元に視線を落とした。そして、意を決したように顔を上げる。


「もう一回、やってもらえませんか?」


「……え?」


俺は一瞬、何の話かわからなかった。


「ほら、昨日…肩にビリビリってきたやつです!」


(……まさか)


「えっと…痛くなかったですか?」


「最初はびっくりしたけど、なんか…気持ちよくて」


「気持ちよくて?」


「うん、肩がふわ~って軽くなって…もう一回試してみたくて」


(いやいや、そんなわけ……いや、待てよ)


確かに、電気を使ったマッサージ器みたいなものは俺の世界にもあった。低周波治療器とか、整体の電気刺激療法とか。もしかすると、俺の雷魔法も似たような効果を生んでいるのか?


「……まあ、いいですけど。でも、本当に大丈夫ですか?」


「うん! ぜひお願いします!」


彼女の期待に満ちた瞳に圧され、俺はしぶしぶ家の中に招き入れた。



「じゃあ、肩に軽く触れますね」


「お願いします♪」


彼女は俺の前に座り、俺は後ろから肩にそっと手を置く。指先に微弱な魔力を込めると──


ビリッ…


「あっ…♡」


(……ん?)


思った以上に色っぽい声が出た。


「だ、大丈夫ですか?」


「うん…っ、これこれ、この感じ…!」


彼女の肩がふっと緩む。心なしか、呼吸も深くなっているように見えた。


「もっと強くしてもいいですか?」


「うん、もうちょっとだけ…」


少し魔力を込める。バチッ…と微弱な電流が流れると──


「あっ…ん♡」


(いや、待て待て待て)


「大丈夫ですよね? 痛くないですよね?」


「うん…すごく気持ちいい…♡」


彼女はとろけるような表情を浮かべながら、肩をくいっと前後に動かした。


「……それじゃあ、肩を少し揉みますね」


「うん、お願い…♡」


言われるがままに、俺は肩を指圧する。雷魔法を帯びた指先がじんわりと刺激を与えると──


「っ…んんっ♡」


彼女の声が甘く震えた。肩が徐々にほぐれていくのが、俺の指先にも伝わる。


「はぁ…なんか…今までで一番気持ちいいかも…」


「そ、そうですか…」


(いや、なんかやばい雰囲気になってないか?)


彼女はうっとりとした表情で俺に身を預けていた。


──雷魔法。微弱すぎて戦闘には使えないと思っていたが、まさかこんな形で効果を発揮するとは。


しかし、この時の俺はまだ気づいていなかった。


これが、俺の人生を大きく変える転機になるということを──。

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