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最弱魔力の異世界マッサージ師  作者: 紡識かなめ
第3章. 偶然の発見と転機
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3-1. 雷魔法の練習と女の子の反応

才能がないと分かっていても、魔法のことばかり考えてしまう。


他にやることがないというのもあるが、それ以上に、この世界に召喚されてから魔法を使えること自体が新鮮だった。


「…ちょっとは、コントロールできるようになったか?」


俺は指先に意識を集中させる。


ビリッ──


軽い刺激が指の先に走る。微弱な雷魔法。静電気のようなものだ。


さらに魔力を込めると、パチッと少し強めの電気が弾けた。といっても、せいぜいドアノブを触ったときに感じる程度。これを攻撃に使うのは、さすがに無理がある。


「うーん…やっぱり役に立たないよな」


静電気を自在に操れたとして、いったい何に使えばいいのか。


俺は深いため息をつきながら、街へと出た。



魔法の練習を続けながら、大通りを歩く。


市場には活気があり、行き交う人々が元気な声を上げていた。屋台では焼きたてのパンや串焼きの肉が売られ、漂う香ばしい匂いが食欲を刺激する。


(こういうところは、現代の商店街と変わらないな)


指先に魔力を込めつつ、何となく景色を眺めていると──。


向こうから一人の女性が歩いてきた。


(あの子、近所の…)


何度かすれ違ったことのある女の子だ。年齢は20代半ばくらいだろうか。柔らかそうな髪を後ろで軽くまとめ、大きな瞳が印象的な美人だった。そして、何より──。


(……胸、大きいな)


俺も男だ。胸が大きい女の子は好きだ。


とはいえ、話したことはほとんどない。ただ、たまに顔を合わせると、軽く挨拶をする程度の関係だ。


「こんにちは」


「……あ、どうも」


彼女が微笑みながら通り過ぎていく。俺も軽く会釈しながら、そのまま歩こうとした──が、ふと気になって振り返った。


(肩に…ゴミ?)


彼女の肩に、小さな埃のようなものが付いていた。


「すみません、ちょっと」


自然と手が伸びた。彼女の肩にそっと触れ、ゴミを払う。


その瞬間──。


「ひゃっ…!」


小さな悲鳴。


俺は一瞬何が起こったのかわからず、彼女を見た。


彼女は肩を押さえ、少し驚いたように俺を見上げていた。


(……あ)


静電気が走った。


「ご、ごめん! ちょっと静電気が…」


「あ…いえ、大丈夫です…びっくりしましたけど…」


彼女は苦笑いしながら、肩をさすっている。


(完全に俺の雷魔法のせいだな…)


電撃といっても、本当に軽い刺激だ。ドアノブに触れたときにバチッとくる程度のもの。とはいえ、いきなり人に帯電させるのは、さすがに申し訳ない。


「本当にごめん、それじゃあ…」


俺はそれ以上何も言わず、その場を立ち去った。



(……使い道がないどころか、むしろ邪魔かもしれないな)


魔法が使えても、役に立たなければ意味がない。


それどころか、人に迷惑をかけることもある。


「……はぁ」


俺はため息をつきながら、家へと戻ることにした。

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