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感謝祭に誘いたい

あの夜より3日後――あれからルーア様が現れる気配はなかった。

やはりマグの力を使って出てきていたということだろう。

ディーアもこの間のことはまったく覚えていないようだった。


ゴシゴシ・・・今日は明日からの感謝祭のために教会の清掃活動中だ。

いつもは限られた人しか出入りしないこの教会も明日は一般公開される。

感謝祭は毎年秋の収穫を神様に感謝するお祭りで今年はムルタ国王の就任後初となることもあり例年以上に王都内も準備で活気づいているようだ。


「お~い、ジン兄~!」向こうからヒカリが走ってやってくる。


「ヒカリ、もうお菓子作りは終わったのか?」

ヒカリは明日教会へ来る子供たちに配るクッキーを作る係になっている。


「うん。終わったよ。はい、これ味見。」

ヒカリは紙に包んだクッキーを差し出してきた。

「ああ、ありがとう。」

そう言いながらクッキーを一枚口に運んだ。「お、美味いな。」


「ホント?良かった。。。あの、、それでなんだけど、、アンタ、感謝祭の予定はどうなってるの?」

感謝祭は3日間開催され、初日は教会での集会で始まり、3日目は王の挨拶で終わる。

だから1日目と3日目は警備で忙しくなる。


「今回も初日と最後の日はずっと警備だな。」


「2日目は?」


「空いてるけどまさかなんか仕事押し付ける気か?」


「違うわよ!そうじゃなくて、もし良かったらアタシと・・」


そのとき「お~い、ジ~ン!」向こうからケンがやってくる。

さすが兄妹。登場の仕方が一緒だ。

「感謝祭なんだけど明後日は休みだろ。一緒に屋台回ろうぜ。」


「そうだな。そうするか。そういえばヒカリ、何か言いかけなかったか?」


「何でもないわよ!!」

何故か少し不機嫌になっていた。


「ヒカリも一緒に来るだろ?」

一応確認してみる。


「行くわよ!!ジン兄のばか!!」

ヒカリは走って行ってしまった。

やはり良く分からないけどご機嫌ナナメのようだ。


「なんだ、お前らケンかでもしたのか?」


「いや、そんなことはなかったと思うんだけど・・」

難しいお年頃なのかも知れない。


城に向かい歩いているとルリ姉が洗濯物を干しているのが見えた。

「あ、ルリ姉は感謝祭どうするんだ?」


「なあに~お姉ちゃんとお祭り行きたいの~?」

「でもジントちゃんはお姉ちゃんじゃなくてディーアちゃんを誘わなきゃダメだよ。」


そりゃあオレだってディーアと一緒に感謝祭を見て回りたい気持ちはあるけど仮にも一国の王女様だ。 護衛など大名行列のような形になるだろう。

「参勤交代かっ!」


「お姉ちゃんときどきジントちゃんが何言ってるのか分からないわ~?」


いや、実を言うとルーア様が居なくなって落ち込んでいたディーアを元気づけるためにこっそりとディーアを連れ出して二人で感謝祭に行ったことがあった。

彼女にとっては目に映るものすべてが新鮮に感じられたらしくキラキラと目を輝かせていたが、母親と楽し気にはしゃぐ子供を見たときは少し寂しそうな表情を浮かべていた。

もちろんそのころ王城は王女が居なくなって大騒ぎ。師匠率いる捜索隊がいざ王都へ繰り出すってときに帰ってきっちり見つかってこっぴどく怒られたっけ。

当然怒られるだけでは済まずにオレには1週間部屋から出られない軟禁罰が言い渡されたのだがディーアが「お父様とはもう一生口きいてあげない」って拗ねて自室に閉じこもっちゃったものだからゼクタ王も困って結局オレの罰は取り消しになった。


「でもそうだな。もう一回やってみるのも面白いかな。」

「ありがとうルリ姉。ディーアに声かけてみるよ。」


「それがいいわ~。健闘を祈ってるね~。」


ルリ姉と別れてディーアの元へ向かった。


(・・・最近は妙に静か・・・嵐の前の・・・か・・)


彼女は先日就任演説が行われた公演場にいた。

「ここに居たのか。何を見てるんだ?」


「ジント、、王都の様子を見ていたの。みんな明日の準備に大忙し。でもどこか楽しそうでもあるわ。」


「王国の一大イベントだからな。」

「そうだ、ディーア。あの・・・えっと・・」

何か感謝祭に一緒に行ってくれって言うのはデートに誘ってるみたいでちょっと気恥ずかしい。それに もし断られたりしたら結構ショックかも。。。


「なあに?どうしたのジント??」


「あ、あの明後日・・は仕事が・・休みだから・・その・・一緒に感謝祭に行かないかっ?」     最後早口になったけど何とか言い切ったぞ。


「え・・?だめよ行けるわけないじゃない。」


「いや、二人っきりというわけじゃなくケンとヒカリも一緒なんだ!だから・・」

(何を言い訳してるんだろう)


「待って。そういうことじゃなくて・・分かるでしょ、私には立場があるのよ。」

「もう子供じゃないんだから昔みたいなわけにはいかないわ。」


「そうだよね。。。。ゴメン。。。」

ジントは肩を落としてがっかりした。(やっぱり言わなきゃ良かった・・)


(あんなにがっかりして。。。そんなに私と感謝祭に行きたかったのかしら。。)

「ああ、もう。わかったわよ。行くわよ。行ってあげる。そのかわりまた見つかって今度は本当に罰を受けても知らないからね。」


何かあんまり男らしくない気がしないでもないけどとりあえず目標は達成・・でいいのかな?


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