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日常

次の朝、オレは朝の鍛錬を終え朝食をとると制服に着替えて城の敷地内にある庭園にやってきた。

ここはかつてルーア妃が故郷にあった花畑を模して造られた庭園だという。ルーア妃が失踪した今ではルリ姉が管理している。手入れの行き届いた庭園は色とりどりの季節の花々を咲かせる。


その中に綺麗な赤い髪が揺れている、後ろ姿が見えた。


「おーい、ディーアー!」オレは呼びかけながら駆け寄る。


「ジント、朝から元気ね。」

彼女はオレに気づいてこちらへ振り返ると柔らかく微笑んだ。その姿はまるでこの世界に舞い降りた天使・・・

いやルーツ的には魔族だけど、この際どちらでもいい。


「ディーア、そろそろ学校の時間だぞ。」

オレ達は週に1~2回教会の一室でサハリ司祭より語学や算術、歴史といった一般教養の授業を受けている。

今日はちょうどその授業がある日だった。


「私はもう準備できているわよ?」

見ると確かにディーアはすでに学校の制服を着ていた。


「でもそうね、そろそろ行きましょう。」

オレ達は教会に向かって歩き出す。

途中に小高い丘がある。昔はよくここでディーアと駆け回って遊んだものだ。

けれども7年前、ここで火事があって以来ここに2人で来ることは無くなった。

今でも焼跡が残っている木が何本かある。


「ねえ、じんとはずっとわたしといっしょにいてくれる?」

ふと幼いころのディーアの言葉が頭の中にフラッシュバックする

オレは何て答えたんだっけ。その時の記憶は曖昧でよく思い出すことはできなかった。

あの日は確か・・・


「・・・ント。ジントってば!何をぼ~っとしてるの。着いたわよ。」

ディーアに呼びかけられてオレは我に返った。


「ごめん、少し昔のこと思い出してた。あのときのディーア、かわいかったな。」


「なにそれ、今は可愛くないってこと?」


「え・・・?もちろん今も可愛いよ。いや、あのときよりもずっと。」


「うっ。ま、まあ素直でよろしい。さあ、行くわよ。」

彼女は少し顔を赤らめながらオレの服の袖を引っ張って歩き出す。


教会の教室に入るといつものメンバーが揃っていた。ルリ姉、ケン、ヒカリの3人だ。

ここに来るのは城内に住んでいる者だけで他の子供達は王都内の自分が住んでいる場所の近くにある教会に通うことになる。


教室に入るとすぐにルリ姉が声をかけてきた。

「あら~?2人で手を繋いで登校なんて大胆ね~。もうそんなことできる関係ってことかしら~。」


「繋いでない!繋いでないからっ!ジントがボ~っとしてて遅れそうだったから服を引っ張って来ただけ!」ディーアが服から手を放し全力で否定する。


「は・な・れ・な・さ・い!」その時小さな影がオレとディーアの間に割り込んできた。

「ジン兄!アンタなにディーア様相手にデレデレしてるのよっ!」

「ディーア様もディーア様ですっ!立場をお考え下さいっ!」

ヒカリがぎゃんぎゃん喚いている。


ケンはそんなオレ達をニコニコしながら見ている。

「ヒカリ~?強敵だな~?」


「ケン兄、意味わかんないこと言わないでっ!!」

バキッ(ケン痛)ヒカリよ相変わらず良いグーパンチだ。お前なら世界を狙える。


サハリ司祭が入室し授業が始まった。


サハリ司祭 王国で広く信仰されているオーリアス教の司祭だ。

オーリアスというのは神族国に何人かいると言われている神様の1人らしい。

なんでも正しい道を指し示してくれる神様だとか。。。


「・・・現在この大陸は大きくは3つの勢力によって統治されている。1つはこのオルメン王国、もう1つは魔族国メルサリス、そして3つ目は神族国ピシミウだ。」

「だが、神族国は基本的には他国に関し不干渉だ。こちらからもピシミウに行くことはできない。なぜか分かるかいジント?」


「はい。神族国の国境には精霊の住む森があってそこには霧の結界が張られており誰もその森を抜けることができないからです。」


「うん、そうだな。しかしキミ達に象徴されるように精霊たちの中にも人間とかかわりを持つ者が増えている。いつの日か神族と会うことができるものが出てくるのかもしれないな。」


そのとき教会の鐘の音が響いた。

午前の授業が終わりいつものように教会の外でルリ姉の作ってくれたお弁当を広げる。

バスケットには見るからにおいしそうなサンドイッチが並んでいる。


「いただきます。モグモグ、ルリィさんとってもおいしいです。毎日でも食べたいくらい。」


「あらあらどうしましょ~お姉ちゃんケンシーちゃんにプロポーズされちゃってるのかしら~~」


「こら、バカ兄!何しれっとルリィさんを口説こうとしてんのよ!あ、でもルリィさんがお義姉ちゃんになるのならそれはそれでアリかも。。。」


「あら、そうなのケンシー。でもルリィは簡単には渡さないわよ。」


「あ、ごめん。そんな風に言ったつもりじゃなかったんだけど。。でも本当に毎回おいしいよ。」


「あらあら、ありがとう~みんなもたくさん食べてね。」

ケンは笑って否定したが以前からルリ姉に思いを寄せているのは明らかだ。

ルリ姉がどう思ってるのかは分からないけど、態度を見るにかわいい弟の成長を見守ってるお姉さんという感じかな。頑張れケン。


昼食を終えると午後の授業が始まりやがて終了の鐘が響いた。

「よし、今日はここまで。次回も皆遅れないように。」


「じゃあみんなまたね。ルリィ戻りましょ。」


「はい。みんなもお仕事頑張ってね~。」


「王女様、ルリィさん失礼します。」


「ああ、またな。」


「お疲れさまでしたー。」


ディーアとルリ姉が先に戻った後

「オレ達も戻って仕事するか。」


「そうだな。あ、ヒカリ、来週の感謝祭のことで少しいいか。歩きながら話そう。」


「うん。じゃあジン兄またね。さぼるなよ。」


「ああ、二人ともまた。」

オレも夜の見回りがあるので戻って準備しよう。

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