異変
翌日は次の日からの護衛任務に備えて朝の鍛錬にケンが参加していたため2人で模擬戦を行うことになった。
ケンは文官として事務方の仕事をしているが小さい頃から一緒に師匠の元で鍛錬を積んでおり剣の腕も中々のものである。それに精霊の力を使った「「緑壁」」という防御壁を展開できる。もう一つ使える能力があるがこちらは実戦向きではない。
一方のオレは「「今再びの朝」」を除くと「「迅速」」という5分程度3倍速で動けるようになるものと「「光弾」」という掌から握りこぶしほどの大きさの光弾を撃つことができる力がある。この光弾は何かにあたると爆発する。
もちろんこの模擬戦では能力は使わない。
キン!ガン!という打ち合いの音が響いている。
「はっ!」最後のフェイントを入れた一撃でケンの剣を弾き飛ばす。
「そこまで!!」師匠の掛け声で模擬戦が終了する。
互いに礼をして朝の鍛錬を終えた。
「今日は良い鍛錬になったな。やっぱりケンも騎士団に来いよ。」
「いや。もうかなり腕が鈍ってるのを今ので痛感したよ。明日は筋肉痛で動けないかも。」
本末転倒!!
「ジントよ。今日は明日の隊列と動き方の確認があるので遅れるでないぞ。」
「分かりました、師匠。」
「久しぶりに稽古つけて頂きありがとうございました。」
オレ達は師匠に礼をすると城に向かい歩き出す。
「よし、じゃあ朝飯に行こう。」
2人で食堂へ向かうとヒカリと合流した。
「ケン兄~。で、どうだったの久しぶりの鍛錬は?」
「まあ、やっぱり僕には剣術の才能は無いみたいだ。」
「そんなことでルリィさんを守れるのかしらね~?」
「なっ、明日からは本気出すから絶対に守って見せる!」
(そのセリフはどうかと思うぞ友よ。)
(そういえばこの間の感謝祭のあれは何だったんだろう。)
そんなことを思いながらオレはヒカリの方を見ていた。
「何、じっとアタシのこと見つめて。もしかしてアタシに惚れちゃった?」
「ねえ、ジン兄はちゃんとアタシのこと守ってくれるよね?」
「ん?ああ、ディーアとルリ姉を守ってまだ余裕があったらな。」
「なんだと~!なんでアタシが序列3番目なのよ!ジン兄のバカ~!!」
ヒカリは怒って行ってしまった・・・
「今のセリフはさすがにどうかと思うな友よ。」
「すまない。後で謝っておいてくれないか。お前のことも特別枠で守るからって。」
「うん。それはそれで勘違いしそうだけど伝えておく。」
「じゃあ。」
ケンとも別れるとオレは師匠や直属隊のメンバーたちと明日のための訓練をして1日過ごし部屋に戻った。
「よし、旅支度もこれで完了っと。明日は朝早いからちゃんと起きないと。」
そして明日からのメルサリス行きに備えて少し早めに就寝する。
だがジントが就寝後まもなく異変が起こる
「!!」
その気配を感じたのは突然だった。
何かがうごめく気配を感じたと同時に城内のあちこちから悲鳴が聞こえてくる!
「お、お前らどこから、ぐあっ!」
「や、やめてくれ!ギャッ!」
「やめて、来ないで!・・ガッ!」
「て、敵襲!うわあああ!」城庭からも見張りがやられる声が聞こえる。
(何が起こってるんだ?)
考えるよりも早く飛び起きると剣を持ちディーアの元へ駆ける。
(無事でいてくれ!!)願いながら駆けるがジントの前に黒騎士が3体立ち塞がる!
「「迅速」」ジントは剣を抜きながら加速する。
加速したまま跳躍すると中央の黒騎士の肩に剣を突き立てそこを支点にして回転し黒騎士の後ろに回るとそのまま走り出す。
(今はお前らにかまっている暇は無い!!)
ビュッ!ビュッ!飛んで来る矢も驚異的なスピードで回避しディーアの元へ向かう。
(師匠はすでに国王の元へ向かっているだろう。ケンとヒカリも宿舎の非戦闘員を守りつつ体勢を立て直し敵掃討に移る筈だ。こちらはディーアを必ず守らないと!)
「ディーア!!」部屋の前にたどり着くとドアを勢いよく開け放つ。
???
「あら、淑女の部屋にノックもなしに入ってくるなんて無粋な男だねえ。」
声のした部屋の奥を見ると壁にディーアとルリ姉が磔にされている。意識はないようだ。
その真ん中に立つ黒いローブを纏った女が今の言葉を発した。
「ディーアとルリ姉に何をした!!」ジントが叫ぶ。
部屋を見回すとディーアとルリ姉の横に1人ずつ黒騎士が剣を構えて立っている。
ジントとディーアたちの間にも黒騎士が3人剣を構えていた。
(部屋の敵は黒騎士5人とローブの女1人か)
「まだ殺しちゃいないよ。剣を捨てな!」黒ローブが言うと同時にディーアとルリ姉の横の黒騎士が剣をディーアとルリ姉の首元にあてる。
「・・・わかった。」ジントはわずかの時に思考を巡らせる。
(剣を捨てれば前方の3人が切りかかってくるだろう。もう一度「「迅速」」をかけ、攻撃を躱しながら射線を確保し「「光弾」」をディーアとルリ姉に剣を突き付けている黒騎士2人に放ち同時に撃破。そのままの勢いで剣を拾い黒ローブを撃破。振り向いてさっきの3人を撃破。これだ。)
ジントは剣を前方に投げ捨てる。「「迅速」」
同時に黒騎士が斬りかかってくる。いくら3倍速で動けてもすべては躱しきれない。
「くっ!」何か所かは斬られて血が出ているが致命傷ではない。
中央の黒騎士が剣を振りかぶった。
「今だ!」ジントは黒騎士の股の間をヘッドスライディングのように滑りぬけてディーアとルリィの横に立つ黒騎士2人に両手を向ける。
「「光弾!」」光の弾がそれぞれの目標の頭部に当たり小さく爆発する。
黒騎士2人はその場に崩れ落ちる。
計算通りちょうど前にある先ほど捨てた剣を拾いあげ加速したまま黒ローブに斬りかかる。(あとは剣をこのまま降りぬいて黒ローブを倒し、背後の黒騎士を片付ける!)
―――だが
剣を振下す前に窓の外にとてつもない何かが現れ、たと同時にジントの体は無数の魔力矢によって射抜かれ、横の壁に激突した。
「な・・に・・が・・」ジントは頭を起こし何が起こったのかを確認しようとする。
窓から先ほどの何かが部屋に入ってくるのが見えた。
???
「――ミアよ。あまり手間を掛けさせるな。まだーー不完全―――。」
黒ローブ
「申し訳―――ーー閣下。―――花嫁――――――――。」
???
「――、―――――――――――。」
その場にいたジント以外の全員の気配が消えた。
敵は最早ジントは居ないものとしてディーアとルリィを連れ去ったのである。
ジントは薄れゆく意識の中、自分が致命傷であることは理解できた。
ジントの右手の甲が光り、模様が浮かび上がる。
(やり直すしかない、でも記憶を失えば結果は変わらない、何か、何か自分へのメッセージを残せないだろうか?)
そして自分の命が尽きる前に詠唱する。
「「立ち止まり振り返ってごらん。キミの歩いた道筋を。その結果としての今を。もう気づいた筈だ、ここはキミが来るべき場所ではないと。さあ今こそ砂時計を逆さに返しもう一度同じ朝を迎えよう。今再びの朝」」
同時に力は発動し、世界は巻き戻りそして再び動き出す




