プロローグ(1)
オリジナル新作です。仕事しながら書いてますので更新遅いかもですがよろしくお願いします。
新国歴元年
それまで点在していた人間の集落・小国をディナル=オルメンが統一しオルメン王国を建国。
これにより人間同士の争いは無くなったが次は隣国の魔族国、メルサリスとの領土争いが国境で発生するようになっていた。
魔族はあまり纏まりはないが身体能力の高いものが多く、高位の者になると炎や水を操る魔術を使う者もおり厄介な相手であった。
新国歴15年 ――オルメン王国国境――
徐々にエスカレートしていた人間と魔族間での衝突は魔族側がオルメン王国との国境の街ニルノスに向かって大規模な勢力で侵攻を開始。
これを迎え撃つべく出陣したオルメン王国軍との間で激しい戦闘が起こっていた。
兵士A「申し上げます!ヤギウ団長率いる主力部隊が敵左方より中央を突破!急ぎ右方より敵勢力を押し戻す部隊を派遣されたし、とのことです!」
ゼクタ
「流石はヤギウ団長。父上、今こそ好機です。出陣の命を!」
彼はゼクタ=オルメン、王国の王子であり栗色の髪に端正な顔立ちの青年である。
先日15歳になり元服したばかりで今日が軍を率いての初陣だが幼いころから王国随一の騎士であるヤギウより剣術・軍の差配を仕込まれており臆している様子はない。
ディナル王
「うむ、見事初陣を勝利で飾って見せるのじゃ!出陣じゃあ!」
ゼクタ率いる後発部隊は右側面に予め潜ませておいた部隊と合わせ敵を挟撃。
ヤギウ団長ともに見事に魔族を撃退して見せたのだった。
「よし、ひとまず魔族の侵攻は食い止められたのじゃ。これでしばらくは時間が稼げるじゃろう。その間に国境の警備を固めるのじゃ!」
「全軍王都へと帰還じゃあ!!」
ディナル王より全軍撤収の命が出され、ヤギウ、ゼクタは帰路の村々で民の歓声を浴びながら王都へと帰還。
王城に着くとすぐにゼクタのもとに駆け寄ってくる姿があった。
ムルタ
「兄さま~ご無事で何よりです~」
彼はゼクタの6歳年下の弟ムルタ=オルメン。年が少し離れていることもあって面倒を見てもらうことが多いゼクタによく懐いていた。
ゼクタ
「おー良い子にしてたか。母上は?」
カリナ
「ゼクタ、よく無事で帰りました。また今回の戦で勇ましい初陣を飾ったと先の使いの者より聞いていますよ。」
後ろより出てきた彼女はカリナ=オルメン。ディナル王の妻でゼクタとムルタの母親である。
ゼクタ
「ありがとうございます母上。これからも王国のため尽くしていく所存です。」
戦功うんぬんよりも無事で帰ってきてさえくれれば、との思いを胸にカリナは
「頼りにしていますよ。」と返した。
オルメン王城 夜宴の席にて
ディナル
「皆、魔族相手によく戦ってくれたのじゃ。今宵は大いに飲み、食い、英気を養ってくれ
なのじゃ!」
兵たち
「うぉーー!!オルメン王国万歳!!ディナル王万歳!!!」
こうして祝宴会場が喧騒に包まれる中ヤギウがディナルとゼクタの座る席のもとを訪れた。
「我が王よ、少し良いですかな。」
「何じゃ改まって、言うてみるが良いのじゃ。」
「戦況が有利な今こそメルサリスと和睦を結ぶ好機かと。戦いを長引かせれば身体能力が高く特殊能力を持つ者もいる魔族を相手に我らが先に疲弊してしまいましょう。」
「何を言うておるのじゃお前がいれば大丈夫じゃろう。建国の英雄ヤギウよ。」
騎士団長ヤギウ。小国の王であったディナルの前に突然現れた謎の男。聞けばどこか他の国からやって来て気付いたらここに居たのだという、当初は髪をおかしな形で束ねており無精ひげをたくわえた綺麗とは言い難い風貌で少し胡散臭いところもあった。だが彼の忠義に厚い在り方と何よりも抜群の軍才をディナルは高く評価し傍に置くようになった。人間国統一の立役者である。
「聡明なる我が王よ。どんなに準備を重ねてもどんなに計略を巡らせても情勢があちらに
傾けば負けることもあるのが戦。負ければ多くの民の命が失われることになりましょう。」
「・・・して具体的にはどうしろというのじゃ?」
「魔族の姫をゼクタ王子の嫁に頂きましょう。」
ゼクタ
「はいい!?!?アナタハナニヲイッテルンデスカ?」
ディナル
「・・・。」
ヤギウ
「某が元いた国では古来より国同士が盟約を結ぶ際に縁組をすることはよく行われていること。」
「ちょうど都合が良いことにメルサリスの王ドルゴアには王子と同い年の姫がおると聞いておるので急ぎ交渉の使者を遣わしましょう。」
「しかもその姫はかなりの美姫だと魔族の間で評判だとか。いやあ王子羨ましいですなあ。」
「ちょっと待って!魔族基準の美姫って怪物とかモンスターとかウロコとか尻尾とか色々大変なのではっっっ!?」 ※あくまでゼクタ王子個人の想像です。
「父上、メルサリスとの全面戦争を具申いたします!」
「よし、明朝すぐに和睦の使者を遣わすのじゃ。」
兵士A
「はっ!」
ゼクタ
「父上~~~!!!!!(泣)」
そうして宴もたけなわとなり、祝勝会の夜は更けていった。