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第7話 さあ! ズバーンとお前の乳とデカ尻を晒してみせろ!

 急いでいたので色気はまったくなかったが、ドレスが地面に落ちれば、当然のように下着が露わになる。


 薄暗い洞窟の中でまだよかったと思っているかもしれないが、恐らくは人間よりもずっと夜目がきくマーラにはティエナの下着姿がよく見える。


 エロティックな下着ではないものの、前世の近いデザインで、純白のブラジャーとショーツのセットが、すべやかそうな肌と相まってなんとも悩ましい。


 目の前で女性の下着姿を見たのは、前世も含めて初めてだった。魔剣万歳、異世界万歳。心の中で叫びながら、よりティエナを凝視する。


「ちょ、ちょっと……なんか、呼吸が荒くなってるんだけど」


 怯えたようにティエナが言った。


 剣であっても普通に会話できるマーラだけに、息遣いの度合いも相手に判別されてしまう。


 だがそうなっても仕方ない。それだけティエナの肢体は魅力的だ。肉感的ではあるが、決して太ってはいない。出るべきところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。


「せっかくだから、その場で一回転してみてくれ」


「はあ!? もう十分でしょ! それにそんな真似してる暇ないわよ。レッサーデーモンがすぐそこまで迫ってんのよ!?」


「だからこそだ! 奴を倒すためには必要なんだ!」


「くううーっ! これで倒せなかったら、アンタをバラバラにして埋めてやる!」


 どうやって、などと無粋な指摘はしない。マーラはそうしろと応じ、ティエナに一回転させる。


 くるりと回ったティエナの下着に包まれた臀部がお目見えする。むっちりと張っていて、ショーツからかすかに覗く肉たぶがぷるんと揺れた。


 予想通りに大きなお尻には、肉の他に大量に魅力が詰まっている。触れないのは残念だが、見ているだけでマーラの中が熱くなってくる。


「きた……きたぞ……滾ってきたぞおォォォ!」


 叫ぶマーラから何かを感じ取ったのか、露骨にティエナは嫌そうな顔をする。


 しかしレッサーデーモンを倒すために、それまで断り続けていたにもかかわらず、マーラの前で服を脱いだのだ。今さら後には引けない。


「グリップを握る指を優しく上下に動かすんだ。早く!」


「ひいっ! も、もしかして私、とんでもないことをしてしまったんじゃ……ううう、これもディグルを守るためよ!」


 言われた通りに指を動かしたティエナのおかげで、マーラの中の熱さがより一層強くなる。


「久しぶりにここまで滾ったぜ。下着も脱いでもらえると、もっと滾れるんだが……駄目?」


「駄目に決まってるでしょうが! いい加減にしてよぉぉぉ!」


 羞恥の涙を瞳に溜めたティエナが顔を真っ赤にする。


 照れ隠しか復讐か。握り締めたマーラを力任せに振り回す。


 リズムも何もないでたらめな動きなのに、それまでティエナを餌くらいにしか思っていなかったレッサーデーモンが明らかにぎょっとした。


「あ、あれ? なんだか、レッサーデーモンの動きが遅くなったような気がするんだけど。アンタ、何かしたの?」


 マーラには、レッサーデーモンの動きに変化は見られなかった。あえて変わった点をあげるとすれば、マーラを持つティエナの動きだった。


「軽くでいいから、ちょっと飛んでみろ」


「はあ? どうしてアンタは変なことばかり――うわわっ!?」


 グチグチ言っていたはずのティエナから、驚愕の言葉が漏れる。


 無理もない。適当にジャンプしただけなのに、レッサーデーモンの顔付近まで跳躍できたのだ。戦闘経験などないはずの貴族のお嬢様が、二メートル近い高さまで飛び上がったのである。これには当人だけでなく、壁際に避難しているディグルも驚いたみたいだった。


 薄暗い洞窟内での滞在時間が増えるにつれて、ティエナもディグルもだいぶ闇の中でもそれなりの視界を維持できるようになっていた。マーラほどではないが、近くで何が行われているかくらいは判別可能みたいである。


「ど、どうなってんの、これ!? そ、それに、うわっ! な、何よ、あの化物っ!」


 狂乱気味のティエナが悲鳴じみた声で騒ぐ。


「レッサーデーモンだろ。人間じゃないとわかってたのに、どうして今さら騒ぐんだ」


「し、仕方ないでしょ! 体格や角らしきものは見えてたけど、顔までじっくりとは観察できなかったんだから!」


 ティエナの説明に、マーラは違和感を覚える。


「今はじっくり観察できるようになったのか?」


「そうよ。急に暗い中でもはっきり見えるようになったの。なんだか体も軽いし……どうなってんのよ!」


 どうなってんのよと喚かれても、急激な変化をティエナにもたらした原因はひとつしか考えられない。


 なるほど、とマーラはひとり頷く。滾るとマーラ自身の攻撃力が増すだけじゃなく、持ち主の身体能力も向上させるようだ。


 今、気付きました。まあ、びっくり。なんてとても言えないので、昔から知ってましたふうに冷静を装い、あえて偉そうにマーラはティエナに教えてやる。


「言っただろ。俺を滾らせれば悪魔にだろうと勝てるってな。だがまだ中途半端だ。完全な熱とともに最高硬度にするには刺激が足りない。おかわりだ!」


 ただの貴族令嬢にすぎなかったティエナが、自身でも驚くほどに肉体能力が強化されている。その事実が、今までのように簡単に拒絶できない状況を作り出していた。


 けれど嫌なものは嫌。悩んだ末に、ティエナは脱ぐのを拒んだ。


 こうなったらレッサーデーモンに、さらなる窮地に追い込んでもらうしかない。そうすれば、マーラの実力を知ったティエナはより頼ろうとするはずだ。大切なディグルを守るために。


 わざと手を抜くのもいいかもしれない。マーラはそう画策していたが、ティエナに持たれているだけに、事あるごとに柔らかそうな肢体が目に映る。


 ミューリールほどの巨乳ではないが、それなりの大きさの乳房がブラジャーの中で忙しげに揺れる。こぼれそうになるたび、身を乗り出す感覚でマーラは二つの果実を凝視してしまう。


 その分だけ滾り度が上昇していき、勝手にティエナの能力を上昇させ、マーラの切れ味をも増加させる。


「能力を発動させる条件がアレだけど、レッサーデーモンを倒せるというのはでたらめというわけじゃなさそうね」


「当たり前だ、俺を誰だと思ってる。古の時代からあったかもしれない、魔剣マーラ様だぞ!」


「あったかもしれないって……まあ、いいわ。自分で魔剣というだけはあるわね。このまま一気に倒してやるわ!」


 意外に調子乗りでもあるのか、ティエナは下着姿なのも忘れてやる気だった。

「くうう。走り難い!」


 蹴りを放つように足を動かし、はいていた高価そうな靴をそこら辺に脱ぎ捨てる。


 本当に貴族の令嬢かと疑わしくなるが、もともとこういう性格の女性なのだろう。嫁にするのはごめんだが、顔と肉体は素晴らしいので、愛人にするのは許容範囲どころか余裕で合格だ。


 裸足になったティエナがスピードをアップさせ、両手に持ったマーラでレッサーデーモンに襲いかかる。


 逃げるだけだった獲物に急に反抗され、戸惑いを強くしたレッサーデーモンが忌々しげに腕を払って対応する。


 指の爪が鋭く伸び、一本一本がショートソードみたいに変化する。コートの下では、何かがもこもこと動いている。もしかしたら、羽でも出そうとしているのかもしれない。


 戦闘中とはいえ、レッサーデーモンの様子を観察してばかりはいられない。マーラのすぐ横には、魅力的な半裸の女性がいるのだ。外見は剣だけに、じろじろと見まくってもバレない。見なければ大損確定である。


「……あんまりじろじろ見ないでくれる? 少しは遠慮しなさいよ。ドスケベ、変態」


 どうしてわかったのか。マーラが質問する前に、ティエナは種明かしというか答えを口にする。


「女性はね、見られてるとわかるものなの。街中で向けられる不快な視線なんかにも、ほとんど気づいてるんだから」


 不愉快そうなティエナにジト目を向けられても、マーラには軽く撃退できる強固かつ正当な理由が存在する。


「誤解するなよ。下心で見てるわけじゃない。俺はお前たち姉弟を救いたい。その力を与えるために、あえて見てるのだ。そう、すべてはお前たちのために!」


 ティエナとディグルのためにという部分を執拗に強調し、遠慮のない視線を下着のみの女体に絡ませる。


 動いたせいでブラジャーがずれ、露わになる面積の増えた胸元が、マーラの両目へ刺激的に突き刺さる。まさに眼福。言葉にこそしないが、自然に頬が緩む感覚を覚える。


 そんなマーラを、ティエナは不気味そうに見る。力を得られた現状に多少の感謝はしつつも、できることならすぐにでも手放したいという意思が丸見えだ。


「だから、もっと俺を滾らせるんだ。弟を救うために。悪しきレッサーデーモンを滅ぼすために。さあ! ズバーンとお前の乳とデカ尻を晒してみせろ!」


「デカ尻って言わないでよっ!」


 どうやらお尻の大きさを気にしていたようで、ティエナの怒りと敵意はレッサーデーモンよりマーラへ多く向けられることになった。


 今にも地面へ叩きつけられそうだが、そんな真似をすればティエナは大切な弟ともどもレッサーデーモンに殺されてしまう。この場でもっとも頼りになるのは他の誰でもなく、マーラなのである。


「どうして嫌がる。尻が大きいのは女性として魅力のひとつだぞ。よりアピールするために、今後はもう少し小さめのパンティをはくといい」


「何のアドバイスよ! どうせなら戦闘に関してのをしなさいよ!」


「そう言われてもな。戦うのは俺じゃなくてお前自身だ。ほら、また攻撃してきたぞ」


 迫りくるレッサーデーモンの右手を、ひらりとティエナは回避する。マーラの力が流れ込んだりでもしているのか、身体能力と視力が向上しているおかげだった。

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