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夢みるように恋してる  作者: 月城 響
Dream13.洋上の幽霊(ゴースト)ー Ghost on the Ocean ー
116/134

17.そして、バラスは・・・

今回はちょっと短め・・・。

 もう1人の乗客だったバラス・カルロ・スタッテリオ・フォスも、フランスから陸路を通って実家のあるバレンシアに戻って来た。いつもなら実家から30分ほど車を走らせた北部にあるマンションに戻るのだが、旅行から帰ったら実家に寄るようにと、父の秘書から連絡があったのだ。


 ちなみにマンションは父の名義だが、彼はその最上階に住み他の住人からの家賃収入で悠々自適に過ごしている。勿論小遣いは別にカードを貰っているので、それで限度額までは好き放題に使えるのだ。


 それにしても旅行の事は父には言っていないのに、何故バレたんだろう。どうしよう、土産も買ってないぞ。こんな事ならロダンに言って何か見繕わせれば良かった。あいつもこっちに戻って来たら、そそくさと家に帰ってしまったしな。


 そんな事を思いながら、実家の広いリビングに顔を出すと、ドミンゴ・オリバの社長である父が一人、リビングの大きなL字型のソファーに座っているのが見えた。


「今、戻りました。父さん。何か用ですか?」

「何か用・・・だと?」


 まるで化け物のようにゆらりと立ち上がった父の目は、今まで見た事が無いほどギラギラと光り、顔は憎しみに歪んでいた。


「お前は・・・自分が何をしたのか分かっているのか?」


 その質問にバラスは声も出せずにふるふると首を横に振った。初めて見る父の異常な雰囲気に戦慄を覚えた。


「アルティメデス・エ・ラ・ハザードを知っているだろう」


 どうして親父が今、その名を言うのか分からない。あのカエルじじいが何だと言うんだ?


 あの男に対してものすごく苛ついていた気持ちも、デッキからあのカエルを思い切り海に投げ捨ててやった快感ですっかり忘れていた。なのに何故家に帰ってまで、その名を聞かなきゃならないんだ?


 バラスが答えないので、父親は彼に顔を近づけ、いきなり胸ぐらを掴んだ。


「アルティメデス・エ・ラ・ハザードは、我がドミンゴ・オリバの大株主だ。まさか知らなかったとは言わせないぞ」


“し、知りませんでしたぁっ!!”


 バラスは涙目になりながら、怒りに震える父の額に浮かび上がった青筋を見つめた。


「あの方が株を全てライバル会社に売ってみろ。明日にでもドミンゴ・オリバは乗っ取られるかも知れんのだぞ?そんなお方をお前は見下した挙げ句、海に突き落としただとぉ? 殺す気かぁ!? あぁ!?」

「ひいぃぃぃっっ!!」


 父親のあまりの迫力に、バラスは真っ青になって悲鳴を上げた。


「今までどんなに素行が悪くても何も言わず見逃していたが、もーう許せん!カードも高級車もマンションも全部没収!いや、そんな生ぬるい罰じゃ飽き足らん!お前は勘当だ!一度無一文になって世間の荒波にもまれて来い!このクソ大バカ息子がぁぁっ!!」


 そう怒りをまき散らした後、急に冷めた目をして息を整えると、父親は足元の息子から目をそらした。


「ああ、もうお前は私の息子では無かったな。さあ、さっさとこいつをつまみ出してくれ」


 その言葉にいつも社長の周りに控えるボディーガードが2人現れ、父親の足にすがりつきながら床にへたり込んだバラスを両側から脇を抱えて連れ出した。


「ま、待って。嫌だ! 助けてぇ、パぁパぁぁぁーッ!!」


 その悲痛な叫び声は、陽光に包まれたオリーブ御殿にしばらくこだまし続けていたと言う・・・。






いつもお読み頂きありがとうございます。

Dream13.洋上の幽霊ゴースト ー Ghost on the Ocean ー はこれで終了です。次はDream14.初恋は星空の下で をお送りします。赤毛の成金令嬢、ティアナの物語になります。宜しくお願いします。

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