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7/15

深まる秋と、散りゆく落ち葉。

 秋はだんだん(ふか)まってくる。

 朝晩(あさばん)()()みが(はげ)しくなってきて、大きな(えのき)の木は、ハラハラと葉っぱを散らし始めた。

 小鳥たちの好きな(えのき)の実は、もうすでに乾燥(かんそう)してしまって、カピカピになっている。

 

 

 あぁ……もうすぐ、本格的(ほんかくてき)な秋が来る。

 

 

 ボクは少し悲しくなる。

 庭にある薄黄木犀(うすぎもくせい)の花が、優しく(かお)り、ハラハラと散った。

 

 

 薄黄木犀(うすぎもくせい)のその香りは、キンモクセイの香りにすごくよく()ている。


 キンモクセイよりも少し(やわ)らかい、清々しい甘い香り。

 けれど庭の薄黄木犀(うすぎもくせい)は、いつから生えているのか、結構(けっこう)大木(たいぼく)で、たった一本しか生えていないというのに、とても良い香りを(あた)りに()りまいた。

 

 

 

 ──盛誉(せいよ)玖月善女(くげつぜんにょ)さま。

 

 

 

 ボクはあの日(・・・)の事を思い出す。

 

 ボクの目の前で()られてしまった盛誉(せいよ)

 ……ボクは、なにも出来なかった。


 それから息子(むすこ)を無実の罪で()くし、失意(しつい)のうちに(みずか)ら命を()ってしまった あの、優しかった玖月善女(くげつぜんにょ)さま。

 

 二人(ふたり)笑顔(えがお)薄黄木犀(うすぎもくせい)の香りと(かさ)なって、優しくボクを(つつ)み込む。

 

『……』

 四百年たった今でも(わす)れられない。

 

 どうして死んでしまったの?

 どうしてボクを置いていくの?

 ボクは何故(なぜ)、まだ二人のところへは()けないの?

 

 ……そんな思いが(あふ)れて止まらない。

 

 

『……』

 

 

 

 薄黄木犀(うすぎもくせい)は、そんな二人の大好きだった花。

 だからその香りを()ぐと思い出してしまう。

 

 悲しい記憶(きおく)

 だけど とても大切な、大好きな二人。

 

 忘れたい悲しい記憶。

 だけど二人のことはどうしても忘れたくなくって、この小さな丘にある お屋敷の庭に、薄黄木犀(うすぎもくせい)の木があるのを見つけて、ボクは浮かれた。

 懐かしいあの優しい香りを嗅いで、ここから離れられなくなってしまったんだ。

 

 

 ……薄黄木犀(うすぎもくせい)は、そんなに(おお)くはない。

 

 キンモクセイや、ギンモクセイは(うみ)から来た木なんだけれど、この薄黄木犀(うすぎもくせい)日本(にほん)にもともとあった木なのだと言われている。本当(ほんとう)だろうか?

 

 キンモクセイとギンモクセイの(あいだ)のような、薄黄木犀(うすぎもくせい)

 

 (あわ)い色の可愛(かわい)いその花はとても(はかな)くて、

 それからとても、

 

 

 

 ──(いと)おしい。

 

 

 

 

『……』

 ボクは悲しくなって、どうしようもなくなって、ふと……(そと)を見た。

 

 

『!?!?!?』

 

 

 

 

 ──今日もいやがった……っ!

 

 

 

 感傷(かんしょう)(ひた)りながら(のぞ)き見た庭の(えのき)根元(ねもと)に、やっぱり例の女の子。

 もう(すご)(さむ)くなったからなのか、モコモコたくさん服を着て、まるでボールのように木の根元に(ころ)がっている。その姿(すがた)滑稽(こっけい)だ。

 

 

なにやってんの(にゃごにゃごにゃご)……っ!?』

 

 

 思わず(うな)る。

 唸った途端(とたん)、ものすごい(かぜ)が吹き()れた!

 

 

 

 

 ──ごおぉぉおぉぉ……。

 

 

 

 ガタガタガタ……

 

 

 

 窓ガラスが()った。

 屋敷は(ふる)い。

 (つよ)い風が吹くと、こうやって窓を()らす。

 

 ボクはギュッと目をつぶり、それからゆっくり(まぶた)()けた。

 

 室内(しつない)にいるボクが驚くほどの風。

 あの子は平気(へいき)だったろうか……?

 

 (うす)く目を開けると、()()()っていた。

 風は(えのき)(えだ)という枝を()らしていき、(ゆき)のように葉っぱを()いあがらせた!

 

 

 パラパラ、ぱらぱら……。

 

 パラパラパラパラ──

 

 

 

『あっ……』

 

 

 雪のように降る木の葉が、まんまるボールを()めていく。

 ボクは(あせ)った。

 

 あのままいたら、きっと風邪(かぜ)を引いてしまう……!

 

 

 

 だからボクは決心(けっしん)する。

 

 

 そうだ! カカシを(つく)ろう!

 

 

 カカシは、小鳥たちが(いや)がって()げていくヤツだ。

 すこぶる(こわ)いヤツを作って、あの木の根元に置いていたら、きっとあの子は来なくなるに(ちが)いない!

 

 

よしっ(ぶにゃっ)!』

 

 ボクはそう意気込(いきご)んで、【カカシ作戦(さくせん)】を決行(けっこう)することに()めたんだ──!

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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