いったい、いつまでいるの……!
暑い暑い夏が過ぎて、少しづつ秋の気配を見せた。
庭に植えてある薄黄木犀の木に、小さな花のつぼみがたくさんついて、ボクはソワソワと落ち着かない。
薄黄木犀は、大切な大切な、思い出の花。
小さかったボクを見つけてくれて、それから優しくしてくれたあの盛誉が、大好きだった花。
『モクセイの花は散りやすいから、
切り花には向いていないんだよ』
盛誉はそう言ったけれど、甘く優しいその香りを嗅いでいると、ずっと昔に死んでしまった盛誉が戻って来るようで、ついついボクは手折ってしまうんだ。
だから今年も結局は、その花を手折りに行くんだろうなぁ……。
………………………………。
『……って!! いつまでいる気なの!?』
ボクは思わず叫んだ。
だって、まだいるんだもん。…………あの子が。
毎日毎日午後になると現れる。
飽きもせず、毎回毎回榎の木の下に陣取って、本を読んだりお菓子を食べたり。はたまた昼寝をしたり……。
いったいなんなの……。
確かに場所を貸してやろうとは思ったよ?
だけどこんなに居座るとは、思わなかった。
確かに居心地のいい場所ではあるよ? だからこそボクが住んでいるんだし。
だけど何にもない。他には何もないんだ!
どうせすぐに飽きると思った。
あるのは広い野っ原と、雑木林。
小さな畑には、ナスとピーマンとトマトとオクラがなっているけれど、そんなに珍しいものでもない。
そういえば前に一度だけ、女の子が畑に近づいたことがある。ボクは一瞬、作物を盗られる!? と思って身構えた。
……けれど女の子は、なにも盗らなかった。
盗ったんじゃなくて、何かを植えたんだ!
──『何かを植えた!?』
女の子が帰ってから、ボクは慌てて畑に行ってみた。
畑には、『バジル』っていうシソ科の植物が植えてあった。
──『夏野菜ピザが食べたいな』
『……』
そんな書き置きを残して……。
知るかーーーーっ!! とあの時ボクは、手紙を破り捨てたけど、今ちょうどナスとトマトとそれからピーマン。バジルもフサフサになっている。
思わず収穫して、ピザを焼いた。
バジルをくれたのは、あの子だから、ボクはあの子がいつも来る場所にピクニックシートと小さなテーブル。それからお皿とティーカップを用意して、ピザを置いてみた。
しばらくして女の子がやって来て、とても嬉しそうに、そのピザを頬張った。
ピザはチーズたっぷりでほかほかで、外はパリッと香ばしく、中はふんわりもっちりピザ。すごく美味しくて、ボクは何枚も食べられた。
…………ただ少し、
ちょっぴり寂しいなって、思った。
それがどうして そう思ったのか、全く分からなかったけれど……。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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