昔むかし。
なぜ、そんな事をするのかって?
むかーし昔……そう四百年よりもずっとずっと前のこと。玉垂は、小さな小さな猫でした。
親猫からはぐれて、ひとりぼっちだった玉垂は、とある小さなお寺の住職さんに拾われたのです。
その人はとても優しくて、玉垂を大事にしてくれました。
玉垂はそこで楽しく過ごすことが出来たのです。
けれど時は、戦国時代。
玉垂を拾ってくれた住職さんも、本当は、それなりの武家の家の子どもで、家を継ぐ争いを避けるために、小さな頃から寺に預けられていた人でした。
名前を『盛誉』と言います。
盛誉はとても優しくて、村人からも信頼されるような、そんな住職さんでした。
玉垂と盛誉は、そこで穏やかに過ごします。
ところが状況が一変しました。
『謀反』が起こったのです。
……ところで謀反って、知ってます?
家の主を臣下が襲って、その地位を奪うことです。
その当時この土地を治めていたのは相良忠房さまと言う人でした。
忠房さまはまだ幼くて、年はちょうど十一歳。
今で言う小学校五~六年生くらい? まだまだ子どもだったのです。
当然、土地を治める……なんてこと、できっこありませんから、家臣たちみんなで、支え合っていたのです。
そこへ来て、この謀反。
謀反を起こしたのは、彼の叔父さんである相良頼貞さま。
叔父さんであっても、家を継ぐことが出来なかったので、甥の忠房さまの家臣となってしまいます。
けれど、それがどうしても許せなくって、頼貞さまは『幼い甥に任せておけるものか!』とばかりに兵を挙げたのでした……。
結局のところ、叔父の頼貞さまは、負けてしまったのだけれど、この事件は、これだけでは済まなかったの。
この頼貞さまと親しく話をしていた……という理由だけで、玉垂のご主人さまであるこの盛誉が、謀反に参加していたと思われたのです!
実際のところ、それは全くの無実。
だって盛誉は、お坊さんなんだもん。
頼貞さまのお兄さん……つまり、忠房さまのお父さんが亡くなった時、盛誉は当然、お悔やみに行ったのね。
そしてそこで、この頼貞さまとお話していただけなのだから。
けれど盛誉は殺された。
無実の罪をきせられて、あっけなく あの世に旅立ったの。
その時の悲しさが、今も玉垂に染みついている。
だから誰とも会いたくなかった。
一人静かに過ごしていたかった。
人は怖い。
何をするか分からない。
だから、見つからないようにって、隠れていたのです……。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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