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ごあいさつ。

 今年も、(のこ)すところ(あと)わずか。

 こうしてみると、一年(いちねん)って、すっごく(はや)い。

 

 今年一年(ことしいちねん)は、ボクにとって、どんな(とし)だったかなーなんて、お(なか)いっぱいになったボクは()(かえ)る。

 

 ボクの一年(いちねん)は……というか、(いま)までのボクは反省(はんせい)することばかりで、四百年以上(いじょう)も生きていたと言うのに、全く成長(せいちょう)していない。

 

 毎年毎年、『こうなりたい』って思うには思うんだよ? だけどそれなのに、そう上手くはいかないんだ。何でだろ?

 

 だけどね、紫子(ゆかりこ)さんが言うんだ。

 

 

 

 ──それでいいのよ。

 

 

 

 って。

 

 もしも毎回満足(まんぞく)しきっていたら、面白(おもしろ)くないでしょ? って。

 

 ああしたかった。こうしたかった。

 こうすれば良かった。


 そういう後悔(こうかい)ってのは、誰もが体験(たいけん)することで、玉垂(たまたる)だけじゃないのよって、笑って(おし)えてくれた。

 

 盛誉(せいよ)を亡くしてしまったボクは、後悔することばかりで、四百年っていう途方(とほう)もない時間(じかん)を生きてきたけれど、ボクの心の中の時間(じかん)は、あの日あの時 ()まったままだったんだなって実感(じっかん)した。

 もっと、建設的(けんせつてき)なことをすれば良かった。

 

 ……気づくのが(おく)れちゃったけれど。

 

 

 

 ──盛誉(せいよ)だって、人間(・・)だったでしょ?

 

 

 

 人間(ぎら)いのボクに、紫子(ゆかりこ)さんはそう言った。

 ずるいと思った。

 

 今まで一人で(こも)っていたことを、全部否定(ひてい)するような、そんな一言(ひとこと)だった。

 

 

 だけど、……(いや)じゃない。

『……』

 

 

 大好きな盛誉(せいよ)

 その盛誉(せいよ)もまた、人間なのだと思い知らされた。

 心の中で、なにかが()けていった。

 

 

 

 ──もう、いいんじゃない?

 

 

 

 紫子(ゆかりこ)さんはそう言った。

 

 

 

 ──いい加減(かげん)前に(すす)んでもいいんじゃないの?

 

 

 

『……』

 

 その(とお)りだと思った。

 でも、……怖かったんだ。盛誉(せいよ)を置いて行ってしまうようで。

 

 冷たいあの雪に()もれてしまった、小さなお寺。

 

 

 忘れたくて、でも忘れたくないもの……。

 ずっとそばに置いて、(なが)めていたい。

 どうしても手放(てばな)せなくて、ずっとしがみついていた記憶。

 

 だけどそれは忘れなくていいんだ。()いて行く必要(ひつよう)もない。

 (まえ)(すす)むってことは、けして全てを忘れ()ることとは違う。

 

 (うれ)しかったことも(たの)しかったことも。

 (くや)しいことも(かな)しいことも。

 

 全部(ぜんぶ)全部()ったままで、いいんだ。

 

 それでその(おも)いが(おも)すぎて(うご)けなくっても、(いそ)がずゆっくり、(ある)いて行けばいい。

 なにも急ぐ必要なんて、なかったんだから……。

 

『……』

 

 ボクは多分(たぶん)、焦り過ぎたんだ。

 

 

 どうにかしよう、盛誉(せいよ)を殺した人間を(うら)もう。仲良くしてはダメだ……なんて、そればかり考えてた。

 盛誉(せいよ)が好きなら一人でいなくっちゃって。


 それが無実の罪で亡くなった盛誉(せいよ)(とむら)う、唯一(ゆいいつ)方法(ほうほう)なんだって、勘違(かんちが)いしてた。

 

 だから苦しくて苦しくて仕方(しかた)なかった。

 だけどそうじゃない。

 

 

 

 ──それでも(わたし)は、玉垂(たまたる)が好き。

 

 

 

 紫子(ゆかりこ)さんのその言葉(ことば)に、ボクは(すく)われた。

 

 だから、思うんだ。

 ボクはボクでいいんだって。

 

 紫子(ゆかりこ)さんだって、紫子(ゆかりこ)さんが紫子(ゆかりこ)さんらしい(・・・)から、だからボクは好きなんだ。

 

 瑠奈(るな)さんだってそうだ。


 瑠奈(るな)さんは瑠奈(るな)さんだから、紫子(ゆかりこ)さんと一緒にいられる。

 

 瑠奈(るな)さんが瑠奈(るな)さんじゃなかったら、きっと変わり者の紫子(ゆかりこ)さんとなんて、一緒(いっしょ)にいられない。

 

 ボクはフフフと笑う。

 そんなボクを見て、紫子(ゆかりこ)さんは静かに微笑んだ。

 

 

 

 だからさ、『(きみ)』だって、

 君が君でいるからこそ、(まわ)りのみんなも(しあわ)せなんだ。

 

 欠点(けってん)のあるボクでいい。

 欠点のある君だからこそ可愛(かわい)いんだ。

 

 欠点のあるボクを、ボク自身(じしん)(ゆる)して、そこから初めて、一歩(いっぽ)前へと進んでゆける。

 

 ……だからボクは、ほんの少しの小さなことから始めよう。

 少しづつ少しづつ、でも確実に。

 

 そんな幸せな明日(あす)

 ボクと、それからあなたに(おとず)れますように……。

 

 

 



     今年一年、大変お世話になりました。

 

   あなたの明日……それから、そこから続く一年が

  より素晴らしいものであることを、お祈り致します。

 

 

       2022年12月31日大晦日。YUQARI

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        この物語を持ちまして、

      今年最後のご挨拶とさせて頂きます。


     今年一年、大変お世話になりました(*^^*)

     また、来年もよろしくお願いいたします♡


        2023年が、皆さまにとって

        良い一年となりますように♡

      /) /)

     (。•ㅅ•。) 2022.12.31.YUQARI

      ̄∪ ̄∪ ̄


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― 新着の感想 ―
[良い点] ずっと寂しい思いをしていたたまたるくん。 これから少しずつ人間との交流も持っていくのかも。
[一言] 素敵な作品を読ませていただきました。 たまたる、一歩前に進めましたね!
2023/01/01 15:38 退会済み
管理
[良い点] 完結、おめでとうございます! なんとなく、YUQARIさんから読者に向けてのメッセージって感じ? こういう方向性もあるんですね。
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