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★7章から読むための「『精霊の花嫁』の兄は~」各章ダイジェスト

書籍化告知から、初めて当作を見ていただいた方向けのダイジェストとなります。

話数が多いので、一番面白くなる章から読みたい! という人は、とりあえずこちらを見ていただければある程度は把握できるかと……。

これだけ見ておけば7章から読んでもある程度楽しめるはずですが、ダイジェストのためネタバレになっております。

もし気になる章があれば、別途閲覧していただければ幸いです。


なお、第一章は途中までまとめたものがございますので、30.5話を参照してくだされば幸いです。

あらためて、ネタバレとなっております。



【第二章 初日】


翌朝目を覚ましたディアンは、エルドから共に聖国に行くことを提案される。

一番近い村に向かう道中、昨晩洞窟で行われた洗礼について尋ねるが、聖国に着くまでは明かせないとはぐらかされる。


「教える気はあるぞ? だが……あー、よし、なら宣言でもするか?」


宣言とは、己に加護を与えている精霊に対し誓いを立てることを指す。

精霊の目の前で約束を交わしたのだから絶対に守るという、一般的には婚約や結婚、違える事の無い約束に用いられるものだ。

加護無しであるディアンが誓う相手はいないと言えば、俺に誓えばいいとエルドはまた教会者らしかぬことを言う。


「我、エルドはオルレーヌ聖国女王陛下に謁見の後、全ての真実を明かすと誓う」

「……我、ディアンはその言葉を信じると誓う」


その後、村にて身支度を整え、教会の者に引き止められながら夕刻には町に辿り着いた二人と一匹。

宿は確保したものの、道中で狩った兎を調理するために夕食は近くの川辺にて。

ディアンが死んだという偽装工作を行い、ゼニスが立ち去った後。突然、ディアンはエルドに襲われる。

必死の防御。刺さる殺意に、されどなにか意味があるはずだと抵抗していたが、全力を尽くした結果呆気なく首元を捉えられる。

死を自覚し、崩れ落ちるディアンにエルドは、武器を持つなと宣告する。


「ぼく、が、よ、わい、から……です、か? 落ち、こぼれで……っ、出来損ないだから……誰にも勝てない、臆病者だから……! 父さんの望んだ、騎士に、なれなかったからっ……!」


 絶望し、嘆くディアンをエルドは否定する。


「自分を否定するな、ディアン。お前は十分強い。いや、強かったはずだ。この手を見ればわかる。だが、武器を持たせられないのは、お前が弱いからでも、努力が足りないからでもなく、お前を助けるためだ。……お前は、魔術過敏を患っている」


魔術過敏、または魔術過剰。人間が蓄えられる限度量を超えた魔力、または魔術を長期的にわたって注がれることで生じる病である。

ディアンは在学中、教師たちによって負荷魔法をかけられ続けていた。本来なら未成年者にしてはならぬ行為。そのせいで、殺意を向けられた者へ対抗しようとした際に発作がおきるようになってしまったのだ。


「――が、んばって、きた、のに」


その事実を知らされたディアンは、とうとうエルドにしがみつき、泣き叫ぶ。これまでの十数年、絶えず努力し続けてきた結果が……全て、無意味であったことに。


「わかっている。……わかっている。お前は十分がんばったよ。ディアン」


そんなディアンを、エルドはその腕の中に抱きしめ続けたのだ。


【作者推し話→ 52.魔術疾患】





【幕間 一週間後の彼ら】

一方、ディアンがいなくなった後の王都にて。

学園内にてディアンが姿を見せなくなったと騒ぐ王女サリアナ、ディアンを憎みそれを咎めるラインハルト。

そんな二人が問い詰めたのは、教会の司祭グラナートの息子であるペルデ。

サリアナの魔術により、ディアンが教会に訪れていたことを吐露させられ、また成績が偽装されたものであることも話させられる。

くだらないと否定するラインハルト。真偽を確かめるためにペルデと共に教会へ向かうサリアナ。

話してはならないと理解しているのに、己の意思では止められず。なぜいなくなったディアンにまだ振り回されなければならないのかと憎悪を募らせるペルデ。

父であるグラナートとの距離が広がる中、ディアンがかつて住んでいた家へとやってきたサリアナ、ペルデ、グラナート。


「悪いのはお兄様よ! お兄様が私にひどい事を言って謝らないから!」


監禁されている容疑を突きつければ、答えたのは『精霊の花嫁』であるメリアであった。

故に一週間もの間、文字通り一滴の水も飲まさずに部屋に閉じ込め続けていたと。

強行し入った部屋の中、当然そこにディアンの姿は無く。それを確かめたペルデは、解放された喜びに涙を流した。

ディアンの捜索隊を組もうとするサリアナに対し、国王ダヴィードはそれを制しサリアナを謹慎、また虐待の容疑でディアンの父、ヴァンを地下へと監禁するよう命じる。

ディアンへ妨害魔法をかけていたことはヴァンも知らぬところ、そしてそれを命じたとされる国王も事を知ったのはここまで悪化してから。

誰かが偽りの伝令を流した疑いこそあれ、ヴァンがディアンを殺そうとした事実は変わらず。失意に暮れるヴァンにサリアナが握らせたのは、ギルドにディアンの捜索を命じるための依頼文であった。


【作者推し話→ 62.救済はそこにあり】




【第三章 一週間】

ディアンとエルドの旅が始まって、約一週間。

彼らはエヴァドマと呼ばれる山岳へと向かっていた。

古代語で一週間。文字通り、昔は山を越えるのにそれだけの期間を要したと言われる山だ。

その山頂にある町に用があると言うエルドに先導された登山口にて、荒々しい風貌の者たちに行く手を阻まれる。

この山は今魔物がはびこり、護衛がなければ命に関わる。そう言って金をせしめようとする男たちを拒否し、進む先でも道案内が変えられていたり、魔物避けの魔法具が壊されていたりと、不穏な空気が流れる。

夕方になり、ようやくたどり着いた二人と一匹は、護衛料でもめる一行に出くわす。

アイティトス・ダガンとなのるA旧ギルド……古代語にて最強のダガン、と痛々しい名前で名乗る彼らの口から、エルドの目的地である食事処が今はないということを知らされる。

 なんとかその場を収め、向かった先。そこは彼らギルドの拠点へと変わり果てていた。

 勝手に入り込んだ詫びを見せろと、腕相撲をすることになったエルド。

勝てば帳消し、負ければ有り金全てを払う。だが、勝負を申し込んだ男ダガンは、豪腕の加護を賜った男。

宣言まで交わし勝負に乗ろうとするエルドを止めるディアン。


『……大丈夫だ』


そんなディアンに対し、エルドは彼にのみ伝わるように古代語でそう囁き、微笑む。

気が変わったらしいダガンに荷物ではなくディアンを求められ、結果圧勝するエルド。

人間離れした力にほとんどが沈黙する中、わめくダガンを黙らせた、次に向かった教会では大量の怪我人と治療魔法の酷使により力尽きようとしていたシスターたちの姿が。

数ヶ月前にやってきたアイティトス・ダガンにより街は征服され、辺境の地故に国の助けも求められない状況。

さらには、ギルドの通達によりディアンが指名手配犯にされたことで再び襲われるディアン。

なんとかその場を納め、ダガンたちの企みも阻止したディアンたちの元に、女王陛下直属部隊トゥメラ隊が現れる。

彼女たちはディアンを『候補者』と呼び、エルドを人間と精霊の均衡を保つ者……『中立者』と呼んだ。

女王陛下の命により、ディアンだけでも聖国に連れて行こうとする彼女たちと、拒絶を抑え同行しようとするディアン。


「悔いの無い人生を全うすると誓ったのは嘘か」

「――違うっ! っ……あなた、が、僕のせいで罰せられる、のは。……いや、だ」

「なら、罰せられなければいいんだな?」

まだエルドと共にいたい。されど、このわがままでエルドが罰せられることを望んでいない。

だからこその選択を、エルドは『中立者』ではないと宣言することで彼女たちを制する。


山を降り、野宿することになった三人。


「僕が家を出たあの夜、あの場にいたのは……僕に用があったからなんですね」

「言っただろ、野暮用だって。その理由だって散々――」

「否定はしないんですね」


 確信を持った瞳がエルドを貫き、ディアンは言葉を続ける。


「話をしましょう。……煮えるまで、まだ時間がありますから」


【作者推し話→ 74.最強の男……? 98.命令~104.くだらない話】




【第四章 たき火を囲んで】


夕食が煮えるまでの間、彼らは様々なことを話した。

トゥメラ隊が人と精霊の間に産まれた、本来の意味で用いられる愛し子であるということ。

エルドが人ではないこと。だが、それは愛し子ではないと否定されたこと。

ディアンに会うために王都に赴いていたこと、だが、それは『候補者』の保護を目的としたものではなく個人的な理由であったこと。

二度目の洗礼を受けた後、結果がどうであれディアンはグラナート司祭によって保護されるはずだったこと。

魔術疾患にかかっているものが精霊門を通れば、身体に負荷がかかり最悪は命を落としかねないこと。

己の父がおかした罪。国の協定違反。『精霊の花嫁』の本来の役割、今のメリアが置かれている異様さ。

精霊が人を伴侶とする理由。サリアナがディアンを、己の騎士へと命じようとしたその切っ掛け。

……そして、ディアンがすべきこと。


「全てが終わった後、僕はどうなるんですか」

「……お前がお前自身に誓った通り、その生を全うすることだ」

「聖国に着けば、教えてくださるんですよね」

「……宣誓は破棄していないからな」


【作者推し話→ すいません、この章全部です。選べませんでした。】




【幕間 崩れる日常】

一方、一人エヴァンズ邸に残された『精霊の花嫁』ことメリアは、トゥメラ隊によって監視されていた。

腕には加護を制御する、本来ならば犯罪者に装着される枷をつけられ、そうだと知らされぬまま。

メリアがそんな状況に置かれていると知ったラインハルトは教会に、そしてディアンに恨みを募らせる。

この一連の騒動の黒幕、その証拠を掴むよう命じられていたグラナートの調査は思わしくなく、また気の緩みからその会話をペルデに聞かれてしまう。


「――俺だって、何も知りたくなかった……っ……!」


初めて反抗するペルデ。己の失態に気付いても、どうしようもできず。溝が深まる中、ペルデもまたディアンやサリアナたちへ恨みを募らせる。

ようやく終わると思った地獄。解放されると思ったバケモノ。それなのに、なぜ。

だが、そんなペルデの元に容赦なく悪魔は訪れる。


「ねぇ、教えて? ペルデ。――ディアンは、今どこにいるの?」


グラナートからの追放を宣言され、絶望するペルデ。だが次に目覚めたとき、彼にもたらされたのは救いでは無く更なる地獄だった。

 地下に監禁されたペルデに対し、ラインハルトはわらう。


「試してみようじゃないか。お前の父親の、忠誠心とやらを」


【作者推し話→ 125.悪魔が来たりて】




【第五章 一ヶ月】


旅が始まり、一ヶ月。

いよいよ疲れも相まって幻覚を見始めたと疑うディアンに、それは妖精であるとエルドが話す。

架空の存在と思っていたが、エルドが言うには近くに精霊門があるために見えているということ。

本来精霊門は、この地に残る精霊や妖精のために設置されたもの。


「お前がしたことは全部、無駄だった」


奇跡のような出会いに、エルドと自分の関係を重ね、一抹の寂しさを感じるディアンに、その夜エルドが語った内容はあまりにもひどいものだった。

なにをしても父親はディアンを認めなかったと。そう突きつけるエルドから離れ、目を背け続けてきた事実に向き合うディアン。

意味も無くエルドがそう突きつけてくるはずがない。そして、本当に傷ついたのは父に認められないという事実ではなく、彼からそう伝えられたこと。

妖精の囁きによりエルドへの愛を自覚したディアン。だが、ゼニスと残ったエルドはディアンを娶ることはないと意思を固める。

翌朝、辿り着いたラミーニアの街にて、精霊門を使用し聖国に向かうことを告げられる。

旅が終わってしまう。彼と離れてしまう。だが、それは仕方のないことだと受け入れようとしたディアンに、妖精が助けを求める。

導かれた先、出会ったのは妹の幼い頃に酷似した少女ララーシュの姿。

共に捕らえられ、誘拐したのが唯一精霊の加護を授かることのない国、アンティルダの者であると知る。

こんな加護など欲しくなかったと嘆くララーシュ。そんな強力な加護を授かった愛し子を誘拐している者。

ただ単に巻き込まれただけと認識していたが、ディアンが騎士へと命じられたことを知っていたのを伝えられ、ディアン本人も狙われていたことを知る。

愛し子故の苦悩。偽装魔法で変わっていたはずの己の目が、既にその色になっていたこと。自身が愛し子となっている可能性。

エルドとゼニスに救出され、他に捕らえられていた愛し子も無事に助け出した一行。

だが、港に着いたその時、隠れていた犯人が精霊門を展開し、ディアンを連れ去ろうとする。

間一髪未然に防げたが、意識を失ったディアンはその夜、ようやくエルドと言葉を交わす。


「……それでも、僕はあなたを不安にさせてしまった。ごめんなさい」

「……違う、謝るのは俺の方だ。お前が別れを惜しまないように。俺を憎むことで悔やまないよう突き放したのも、それを押しつけたのも全部。……離れさせようとしたのは、俺の方だ」


 謝罪しながらも、まだ全てを明かすことができないと。そう懺悔するエルドにディアンは告げる。


「あなたは僕に約束してくれました。聖国につけば、全てを明かすと。そして、僕はそれを信じると。その誓約がある限り、僕は……あなたを信じます」

「その時までは、あなたを……っ……『エルド』と、呼んでも……いいですか……?」


【作者推し話→ 137.自覚/153.安堵と怒り~154.インビエルノ/162.真実はまだ遠く】




【第六章 聖国までの数日】


翌朝、ララーシュの両親によって馬車を借り、精霊門を通るために教会へ向かおうとした一行。

だが港は他国への渡来が制限されたせいで暴動がおこり、教会もその対応に負われていた。

それがアンティルダ……そして、サリアナの狙いであると懸念したディアンに、ララーシュが提案したのはディアン自身が花嫁に扮して巡礼者を装うこと。

巡礼とは、かつて精霊に見初められた者が聖地にて迎えられるまでの道程をなぞり、その加護にあやかるという習慣。今は廃れているが、教会の関係者が言えば信じるであろうと。

難色を示していたエルドだが他に選択肢はなく、兵士を騙すことはできたが、その内の一人にディアンが執着される。

なんとか振り切った後、船は突然の嵐に見舞われる。

船酔いとは違う不快感の中、目覚めたディアンは傍に知らないはずなのに馴染みのある男を捉える。

エルドの知り合い、と名乗る男はゼニスに良く似た声で話す。


「私ができることも、あなたに伝えられることも限られている。そのうえで言えることは……あなたはもう少し、我が儘になるべきだ」


悔いなく生きるのだろうと、そう尋ねる声に返す言葉はなく。再び眠りについたディアンを呼び起こしたのは、エルドを裏切り者と詰る声であった。

疲労したエルドに抱きしめられながら かつてこの海が伴侶となる愛し子を失った精霊の悲しみにより作られたと知る。

そこまでして精霊が人を愛そうと、それが人のためになるとは限らない。

それを理解できぬからこそ精霊は人を求め、加護を与える。そして、人はきっと加護がなくとも生きてける。今までのディアンのようにと。

エルドは再び洗礼の誓いを求め、ディアンはそれに応じる。


「……悔いのない、生を。誰かに強いられるのではなく、自らの意思で選ぶ生を、全うすること」

「――ああ、それでいい。……それで、十分だ」


うちに秘めた願いは言えぬまま、互いに抱きしめあう彼らは、そうして聖国たどり着く。

その先で彼らを待っていたのは――。


【作者推し話→ 175.嵐の後に/177.加護の始まり】

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