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旋風のルスト・2次創作コラボ外伝ストーリー集  作者: 美風慶伍
夜見ベルノさんの場合:本編
33/50

1:夜見ベルノと夜見の書架

 そこに一人の人物が居た。

 長身でスリムなシルエット。髪は黒髪で長く、着ているものはタキシードスーツ。ただ、スーツはキラキラと光り輝いているのみならず衣装の各部が青の蛍光色に発光している。

 銀縁のフレームのメガネをつけているその男性は左手に常に文庫サイズの書籍を手にしていた。


 そして彼専用の空間にて様々な物語を取り上げて、ネットの世界から世界中へと発信しているのだ。


「それでは皆様、次回も夜見の書架でお会いしましょう」


 そして彼は挨拶代わりに自らの名を名乗った。


「夜見べルノでした」


 手にしている本を閉じ、右手を軽く振りながら番組プログラムの終わりを告げる。

 放送が終了すると、彼は放送用の定位置から離れて歩き出した。


「ふぅ、お疲れ様」


 そう一人呟きながら別の部屋へと向かう。

 彼が佇んでいたのは放送用の空間、いわば〝スタジオ〟だったのだ。


 彼の名は〝夜見べルノ〟

 ネットの空間の世界に住し、アバターと言うネット空間専用の肉体を用いて活動している。


 放送用の空間から、移動用の回廊を経て、別空間へと移動する。彼自身が普段くつろぎ、仲間たちと語り合うための場所だ。


 そこは〝サーバー〟と呼ばれていた。

 サーバー空間の一つ〝雑談〟と書かれた場所へとべルノは足を踏み入れた。するとその場所にはすでに複数の人物がくつろいでいる。

 べルノが管理している夜見の書架の常連たちだ。


 その数は6人、何もべルノに負けず劣らずの個性的な人々だ。

 まずは女性が3人、

 三つ揃えのスーツ姿の麗人を皮切りに、

 時代がかったシュミーズドレスにフレンチジャケット姿の美姫、

 スカートジャケットにレザーハーフコートと腰に拳銃を下げたウエスタン風のウサ耳少女、

 さらにその傍らにはタキシード姿のなぜかジャイアントゴリラ、

 さらにその隣に身長1メートルほどのなぜか皇帝ペンギン、

 そして最後を締めるかのように黒い背広姿の男性、ただし頭はアイコンのような画像パネルが頭部の位置に浮遊している。

 以上6名、一見すると異様ではあるが、ここがネット上の空間であり彼らもまたアバターであることを認識すればそう驚くべきものではない。

 

 大きな丸いテーブル。お茶会をするようなラウンドテーブルの周りに集まりながら彼らは談笑をしていた。

 そんな時だ、一仕事終えたべルノが現れたのだ。


「みなさん、お疲れ様です」


 べルノがそう声をかければ返事が返ってくる。

 まず最初に声を返したのはシュミーズドレス姿の美しい女性だった。鈴の音が鳴るような美しい声だ。


「お疲れ様です」


 その傍らのスーツ姿の麗人も声をかけてきた。ややハスキーな憂いのある声だ。


「お疲れ様です。今日はちょっと危なかったですね」


 そしてその隣のウエスタンガールが言う。


「開始時間が押してしまいましたね」


 それを言われてべルノは苦笑する。


「いやぁ、面目ない。システムトラブルが起きないように日頃から管理はしているんですけどね」


 それに問いかけたのは皇帝ペンギンの彼だ。成人男性の声で意見を述べた。


「仕方ありませんよ。トラブルを完璧に出さないことなんてまず無理です。その都度対処していくしかないでしょう」


 話をまとめるように告げるのは、頭が空間に浮遊するアイコン画像の異形頭の彼だ。アイコン画像には『クリスタルの鍵』と表示されていた。


「べルノさんでしたら、間違いはありませんよ。それは我々のみならず彼の発信力に世話になっている多くの〝作家(クリエイター)〟たちがよく分かっていますよ」


 そしてそこに相槌を打ったのはタキシード姿のゴリラだ。その声は意外にも可愛らしい少女のものだった。


「それは本当によくわかります」


 その少女ゴリラの手にはコーヒーカップが携えられている。


「どうぞ」

「ありがとう」


 べルノもラウンドテーブルの片隅の席に腰を下ろしコーヒーカップを手にする。コーヒーを傾けながらべルノは言う。


「それにしても最近またムーブメントが変わり始めましたねぇ」


 ウエスタンガールが問う。


「例えば?」

「原点回帰というのかな。異世界転生だけではなく、ハイファンタジーが少しずつ増えてるような気がする」


 その言葉に補足するように言ったのは異形頭の彼だ。


「原点回帰というより、新しいものを模索する上で、原点回帰と新規開拓が同時に起きたのでしょう」


 それに頷いたのは皇帝ペンギンだ。


「あぁ、それは確かにあるかもしれませんね」


 それはまさに往年の文学サロンのような盛り上がりだった。今日もまた彼らの会話は盛り上がろうとしていた。


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