女の子だけの百合世界に転生したぞ!
………………
…………
……
「はっ!」
ふと目が覚めた。ここはどこだっけ……。俺は一体……。
「あっ!目が覚めたみたいよ!」
「本当?」
「こんにちわ~」
「あなたもそうなのねぇ……。よろしくね」
「え?え?」
目を覚ました俺の回りには……、色とりどりの髪の色をした女の子達がいた。まるで俺を囲んで覗き込んでいたみたいだ。
ここはどこだ?どうして俺はこんな所で寝転がっていたんだ?俺は誰だっけ……。確か谷野裕い……。
「さぁ!こんな所にいないで皆と一緒に向こうへ行きましょう?」
「え?あっ!」
差し出された手を取ると引っ張り起こされた俺の視界には何かの学校のような施設が目に映った。そこにはまるで二次元から出て来たかのような可愛い顔をして色とりどりの髪の色をしている少女達が楽しそうに思い思いに過ごしている姿が見える。
「あっ、あの……、女の子ばっかりみたいだけど……、俺が勝手に入っていいのかな?不審者だと思われるんじゃ?」
そう。見渡す限り女の子しかいない。まるで女子校のようだ。そんなところに俺みたいな男が入って行ったら通報されて逮捕されるんじゃないだろうか。
「くすくす、何を言っているの?あなたも可愛い女の子でしょ?」
「……は?」
何?俺は間違いなく男だ。どこからどう見ても男にしか見えない正真正銘男だ。男の娘に見えるとか女装してるとかそんなことは一切ない。
「ほらこれ」
「――ッ!これっ……、がっ……俺?」
緑の髪の美少女が見せてくれた手鏡に映っているのは……、アニメでもないとありえないほど真っ赤な髪をした美少女だった。……これが俺か?顔を触ったり動かしたりしてみても手鏡に映る少女も同じようにしている姿が映るだけだ。これが……俺?
「さぁ!わかったら行きましょう?」
「あっ!ちょっ!」
美少女達に囲まれた俺は両脇をがっちり固められてその施設へと引き摺り込まれていったのだった。
~~~~~~~
無理やり学校のような施設に引き摺り込まれた俺は今ロッカールームのような場所にいる。そして美少女達にベタベタと体を触られている最中だ。
「や~ん!私よりおっきぃ!」
「私よりは小さいわね」
「あら?でもサキより腰も細いわよ」
俺は今美少女達に体中を測られている。何でも俺に合う服や下着を用意してくれるそうだ。そのためには測らなければならない。今は俺の胸を測った所で誰が大きいの小さいのとワイワイ楽しそうにしている。
「それであなたは何てお名前なの?」
「え?俺?俺は谷野ゆうい……」
「はい、スト~ップ!ユイね。これからこの娘はユイよ。皆よろしくね」
「いや、あの……、俺は……」
「わぁ!ユイよろしくね~!私ミカ!」
オレンジ頭で長いツインテールの女の子はミカと名乗った。
「私はサキ」
サキは先ほど手鏡を見せてくれた肩までの緑の髪の子だ。
「私はアン。それじゃ着替えもしましょうね」
青い髪で最初からずっと俺をリードしている子がアンらしい。他にも色とりどりの髪の女の子達がワイワイ寄って来て自己紹介してくるけどそんなに一度に覚え切れない。
測ったサイズに合う服を着せてくれる。俺はブラなんてつけたことがないから付け方も知らないんだけど皆が勝手にやってくれる。何だここは?どうなってるんだ?どうしてこの子達は俺にこんなにしてくれるんだ?
何もわからない。だけどこれはこれで良い気がしてきた。可愛い女の子達に囲まれて全て至れり尽くせり。もしかしたら俺は死んでここは死後の世界だろうか。天国というものがあるとしたらもしかしなくてもここがそうなのかもしれない。
そう考えると俺は戸惑うよりもいつ終わるかもわからないこの天国を精一杯楽しもうと思ったのだった。
~~~~~~~
ミカ、サキ、アンに両脇と前を固められた俺は学校のような施設を歩く。本当に学校みたいだ。皆同じ制服のようなものを着ているしそのデザインもまるでアニメの制服のように見える。そう、現実の学校じゃあり得ないだろっていうようななんちゃって制服みたいなやつだ。
俺達が廊下を歩いていると向かいから数人の女の子のグループがこちらに歩いてきていた。そして……。
「あっ!」
先頭を歩いていたアンが足を引っ掛けられて転ばさせられた。どう考えてもわざとだろう。事故で引っかかったわけじゃないのは明白だ。
「ふん!邪魔よ!気持ち悪い!さっさと向こう行きなさいよ!」
うわっ、感じ悪っ……。そして滅茶苦茶怖い。そのグループは全員黒髪で目も茶色や黒系統、顔も至って普通で言うなればどこにでもいる普通の日本の女子学生って感じだ。ただ茶髪とかはいない。自然にあり得る程度の範囲の色の艶はあるけど染めたり脱色している者もいないようだ。
「ちょっ!いくらなんでもこれは……」
「シッ!ユイ!いいの。いきましょう?」
起き上がったアンは俺を制止して歩き出した。俺は納得いかない。何で何もしてないのにいきなり足を引っ掛けられなきゃならないんだ?それもあの態度だ。
「自分達が可愛くないからアン達に嫉妬しているのか?」
「あはっ!ユイは面白いこと言うね!」
何がおかしいのかミカが笑い出した。何か変だっただろうか。あの黒髪の少女達はこれといって可愛くも無いいたって普通の日本人顔だった。まるで漫画やアニメから出て来たかのようなアン達と比べたらまったく可愛くない。
「それよりお腹空かない?ご飯食べよ」
サキが話題を変えるかのようにそう提案した。そう言えば俺はここに来る前から何も食べていない。皆に案内されるまま学食のような場所にやってきた。
「あっ……、俺、じゃなくて、私はお金とか持ってないけど……」
そうだ。よくよく考えたら俺は無一文だ。前の姿のままだったらポケットに財布が入っていたはずだけど姿ごと服装も変わってたから何も持っていなかった。この制服のような服も返さなきゃならないのにクリーニングに出すお金もないや……。
「いいのいいの。タダだから遠慮しない。さっ、好きな物食べて」
サキは何だかサバサバした性格のようだ。ミカは明るくて可愛らしい感じがする。アンはお淑やかでイメージの女の子らしいというのを体現したかのようだろうか。
「本当にいいのか?……じゃあ、Aランチを……」
本当に良いのかどうか迷う所だけど空腹には勝てない。どれが良いかもわからないからとりあえずセットメニューにしておく。
「じゃあ私はBランチ~!」
「私はオムライスを」
「ん~……、私は焼肉セット」
ミカはBランチ、アンはオムライス、そしてサキは焼肉セットらしい……。サキは女の子なのに昼からがっつり食うタイプなんだな……。別に良いけどサンプルの焼肉セットはかなりボリュームがありそうだぞ。
席を確保しながら出来上がるのを待っていると呼ばれたので取りに行く。この辺りは学食というかフードコートみたいだな。そういう学食もあるのかもしれないけど俺が通ってた学校の学食ならその場で並んで待ってたからシステムが違う。
「「「「いただきます」」」」
皆で揃って食べ始める。うん、おいしい。学食やフードコートなんてチープかと思ったけど全然そんなことはない。Aランチのメインは豚カツだけどBランチのメインはコロッケのようだ。ミカがおいしそうにコロッケを食べている。
「ん?なに~?コロッケ欲しい?しょ~がないにゃ~。はい、あ~ん」
「え?あの?」
俺がミカのコロッケを見ていると俺が催促していると勘違いしたのかミカが自分の箸でコロッケを切り分けてあ~んしてきた。これは良いのか?今さっきまでミカが使ってた箸だぞ?こんな可愛い子と、かっ、かっ、間接キスになるんじゃ……。
「も~!ユイ早く!手が疲れる~!」
「うっ、うん……」
頬をぷく~っと膨らませたミカに促されて食べる。駄目だ。箸に意識がいって味なんてわからない。
「おいしい?」
「うっ、うん……」
何かさっきから同じようなことしか言えない。だけどそれも仕方ないだろう。急にこんなわけのわからない所に連れてこられて自分は女になってて可愛い女の子達に囲まれてこうして至れり尽くせりだ。わけがわからないけど幸せだと思ってしまう。こんな世界ならずっと居たいくらいだ。
キーンコーンカーンコーン
「あっ!しまった!次は体育だよ!急がなきゃ!」
「え?」
皆バタバタと動き始めた。俺もつられて移動したのだった。
~~~~~~~
ここが学校なのか何なのかよくわからないけど、よくよく考えたら俺って別にここの生徒でもないし体操服も持ってない。皆につられて更衣室に来たけどついてきてどうしようっていうんだ?
「ほら!ユイも早く着替えないと遅れちゃうよ!」
そう言いながらミカが何の遠慮もなく服を脱いでいく。やばい……。皆下着丸出しなのに何も気にせず脱いでいる。俺は今見た目女の子なのかもしれないけど心は男なんですけど~!?やばい!見ちゃいけないと思いつつついつい女の子達の肢体を見てしまう。
「ユイ、これを使ってね」
「アン……」
ちょっとアンさん?!何でブラまで取ってるの!?上丸出しなんですけど!そしてそのまま俺に近づいて体操服を渡すのやめてもらえませんか!?目のやり場に困るというかおっぱいに釘付けなんですけど!
その後俺はどうやって着替えたのかあまり覚えていなかった。確かあまりに俺が着替えるのが遅いからまたミカやサキに脱がされて着せ替えさせられたような気がする。
そんなこんなで俺は何故か体育の授業みたいなものを受けているけど先生らしき人は何も言わない。明らかに異質な俺が増えているのに声もかけてこない。俺に気付いているのは間違いない。チラチラ俺を見ている。
先生はやや茶髪だけど根元の方は黒くなっているし色を抜いているか染めているんだろう。日本でもよくいた普通の女性だ。年の頃は三十代そこそこだろうか。女性の先生にしては珍しく若い方な気がする。俺の経験上若い女性の先生なんてほとんど覚えがないからな……。
俺の回りには色とりどりの髪をした美少女達が固まっている。先生は俺達の方に簡単な指示を出すと黒髪の生徒が集まっている方へ行ってしまった。どうやらここではこの髪色は大きな意味があるようだ。
「さぁ、先生に言われた通りまずは準備体操と柔軟をしましょう」
アンが俺の前に立ってそう言ってくる。皆それぞれペアになって準備体操と柔軟をしているようだ。
「いたたっ!痛い痛い!」
「まだまだ」
「うぐぅっ!」
開脚して体を前に倒すとアンが背中を押してくる。そのたびに胸が背中に触れてポヨンポヨンしているのが感じられる。
アンは普通のブラからスポーツブラ?とかいうのっぽいのに着替えていた。それでも後ろから密着されたらその膨らみが感じられて意識してしまう。それも先ほどモロにそれを見た所だ。どうしても頭にはさっき見た二つの膨らみが思い浮かぶ。
「さっきのお返しだ!」
「や~ん!痛い~!」
今度は入れ替わって俺がアンの背中を押す。だけどただ押すだけじゃなくてどさくさに紛れて体を密着させたり匂いを嗅いだり段々俺は大胆になってきていた。
「ふふっ!それじゃ次はまた交代ね!覚悟してねユイ!」
「ひぇ~!」
その後もアンと二人で戯れながらの準備体操と柔軟を繰り返してようやく終えた。準備体操が終わると今日は縄跳びらしい。
……何で縄跳び?小学生くらいなら縄跳びをしていた記憶もあるけどそれ以上になったら縄跳びの授業なんてないだろう……。運動会とかスポーツ大会とかクラスで大縄跳びをするのならあり得るかもしれないけど今やっているのはただの一人用の普通の縄跳びだ。
バルンバルンバルンバルン ポヨンポヨンポヨンポヨン
揺れ動く風船に目が釘付けになって一緒に俺の目と首も跳ねる。何だここは?何てパラダイスだ?
「ユイさっきからおっぱいばっかり見てる~!エッチぃ~!」
「え?いや、俺、じゃなくて私は……」
縄跳びをやめて俺の方に近づいてきたミカに図星を指されて俺はしどろもどろになった。まさにガン見していたんだから言い訳のしようもない。
「ミカより大きいのつけてるくせに~!えいっ!このっ!」
「やっ!ちょっ!」
ミカが俺に後ろから抱き付いてきて胸を揉んでくる。俺には元々おっぱいなんてついてなかったはずなのに触られている感覚がはっきりと伝わってくる。これは偽物でも何でもなく紛れもなく俺の体にくっついている俺の体の一部だ。
「あ~!何二人で楽しそうなことしているの!私も入れて!」
「いや!待って!」
「私も~!」
「こっちも~!」
「ひぇ~!」
女の子達がワラワラと寄ってくる。うれし恥ずかしで良いんだけど……、良いんだけど何ていうかこう……。照れ臭い。でも良い匂いがする女の子達に囲まれて組んず解れつキャッキャウフフで楽しくなってきた。
そんな時間もあっという間に終わって体育は終わり更衣室で着替えると今度は教室で授業を受けた。だけど授業内容は何だかいい加減でフワフワしたもので本当に学校で授業を受けているのかどうかわからないようなものだった。
~~~~~~~
全ての授業が終わると皆一斉に帰りだす。俺はどうしたらいいんだろうか……。
「何してんのユイ?早く帰ろ?」
「サキ……」
サキが俺の手を取って歩き出す。どこへ帰るというのか。俺には帰る場所なんてない。それなのにサキに続いてミカが、そしてアンがやってきて三人に囲まれた俺はどこかへ向かって歩かさせられる。そして着いたのは寮のような建物だった。いや、寮がどんな建物だって言われても説明出来ないけどイメージして思い浮かぶようなまさに寮って感じだ。
「さっ、おかえりなさいユイ」
「……え?」
おかえり?アンの言葉の意味がわからない。
「今日からここがユイの家だよ~」
「止まってないで早く入って」
ミカとサキも俺の腕を引っ張って建物に入って行く。俺もここに住んで良いってことか?どうして見ず知らずの俺にここまで?
理由はわからないけど今夜寝る場所のあてもない俺は断ることは出来ない。三人に連れられて建物に入る。この寮には色とりどりの髪色をした美少女達がラフな格好で歩き回っていた。ここが天国か!
「私達の部屋、本当は四人部屋だけど今は三人なんだ~。ユイも今日から一緒だね」
うっ、ミカ……。可愛い上になんて良い子なんだ……。俺が泊まる場所もないとわかっているから気を使ってくれているんだろう。
「……ありがとう」
「いいのいいの。気にしない気にしない」
サキは男前な性格なのかそう言ってパタパタと手を振る。
「今日からここがユイの部屋なんだから遠慮しないでね」
落ち着いた雰囲気のアンが優しく微笑む。素晴らしい。何て良い所なんだ。俺はもう一生ここで過ごす!
「じゃあまずは何して遊ぶ~?」
「その前に少しユイにお化粧したりお着替えさせたりしてみましょうか」
「お?いいねそれ」
「え?ちょっ!」
その後俺は散々三人に着替えさせられて化粧をされた。自分で見ても自分の顔に未だに慣れない。まるでアニメやゲームのような二次元から出て来たのかと思うほどの真っ赤な髪の美少女だ。これが俺だと誰が思うだろうか。
「さ~!それじゃそろそろお風呂だ~!」
「お風呂……?」
ミカの言葉に呆ける。おふろ?俺が?この体で?
「そうね。そろそろ時間だし行こうか」
「ユイのタオルと着替えはこれね」
サキとアンも何も言わずにテキパキと俺のお風呂の準備をしている。皆もお風呂セットを持ってだ。もしかしてもしかしなくても大風呂で一緒なのか?期待しちゃいますよ?
~~~~~~~
大風呂でした!皆裸です!他の娘達も皆でワイワイと大きなお風呂に入っています!いくら大風呂とは言っても入れる人数には限りがあるので寮の生徒全員が揃ってるわけじゃないけどあっちもこっちも美少女達の裸だらけです!
もし俺が鼻血を吹ける体だったなら出血多量になるまで鼻血を噴き出していたことでしょう!これが天国か!
「や~ん!やっぱりユイの方がおっきぃ~!」
「ちょっ!くすぐったい!」
しかもミカが泡立てた手で俺の胸を揉んでくる。
「お返しだ!」
「きゃ~!」
だから俺もお返しにもみ返してやる。だけどミカはキャッキャ言うだけで嫌がる素振りもなく二人で揉み合いをしている。女の子同士って素敵だ!
「ほら二人とも、あまり遊んでると時間なくなるよ。交代制なんだから」
サキに怒られた。大風呂とは言っても一度に入れる人数には限りがあるし寮の生徒も多いので時間と順番が決まっているらしい。あまりのんびり入っていると時間切れでペナルティがあるそうだからそろそろ真面目に洗おう。
「ぶ~!サキは自分が一番おっきいからって!」
そうだな……。サキはおっぱいが大きい。俺も自分で言うのも何だけど結構大きいと思うんだけどサキはそれ以上だ。まさに手に余るほどの巨乳というやつだろうか。
「ほらほら!早く出ないとペナルティよ!」
アンにまで怒られた。どうやらそのペナルティとやらは相当いやなことらしい。内容は教えてくれていないけど俺も来て早々ペナルティなんてもらいたくないので急いでお風呂からあがったのだった。
~~~~~~~
寮の夕食を食べてから皆で部屋で寛ぐ。お風呂上りのせいか皆ラフな格好すぎて目のやり場に困るくらいだ。ミカは短パンなのに股を開いて座ってるから隙間から下着がチラチラ見えてる。サキは巨乳なのにノーブラタンクトップで胸がパッツンパッツンでやばい。アンにいたってはスッケスケのネグリジェ?ってやつだ。色々と見えてはいけない場所が見えそうになっている。
健全な男である俺がこんな環境で落ち着けるわけない!それなのにミカは不用意にベタベタ触ってくるしサキは胸をテーブルに乗せて休んでる。これはあれだ。伝説の乳休めってやつに違いない。そしてアンは何故か俺の横にぴったりくっついて妖艶にこちらを見ている。
「……」
「ふふっ」
……目を合わせないように横を向いているのにこっちを見ている視線をはっきり感じる。この娘は何がしたいんだ!?俺の理性が切れたら襲い掛かってしまいそうだ。
「さぁ……、今日はもう休みましょう」
「は~い」
アンの言葉で皆それぞれベッドに入る。四人部屋って話だったのにベッドは二つしかない。そしてミカとサキは同じベッドに入った。つまりこれは……。
「さぁユイ。早く寝ましょう?」
「うっ!」
寝そべりながら妖艶に俺を誘うアンにルパンダイブしそうになるけど我慢だ。深呼吸して自分を落ち着ける。落ち着け俺。落ち着け俺!よし!大丈夫。
「オジャマシマス……」
「ふふっ」
うぅっ……。俺は真っ直ぐ棒のように両手両足を伸ばして寝てるというのに何故かアンは俺の方に向いて上に片手片足を乗せてくっついてくる。
こんなの眠れるかぁ~~~~~~!!!
~~~~~~~
俺がこの世界に来てから今日で十五日目だ。その間に色々なことがあった。まるで俺を誘っているかのようなアンの誘惑に始まり、無防備なミカの肉体同士によるスキンシップ、サバサバしたサキは自分の体を隠すということがないからしょっちゅうアレやコレが見えてしまう。もう俺の理性は崩壊寸前だ。
毎日が楽しい。三人だけじゃない。学校に来れば色とりどりの髪色をした美少女達が親しげに俺にスキンシップをとってくる。相変わらず黒髪軍団は俺達を敵視しているかのようだけどそんなことなど気にならないような夢のような時間だ。
だけどこの世界が何だかおかしいということには薄々気付いている。まずこの世界には男が存在しない。この学校のような施設が山奥の隔離された全寮制の女子校だったとしても教師にも用務員にも男が一人もいないというのはどう考えてもおかしい。
それからテレビだ。俺はこの世界に来てからテレビを観たことがあるけどニュースやバラエティ番組は存在しない。アニメや子供向け番組のようなものばかりで緊急ニュース速報が入ったことすらない。こんなことが普通の世界であり得るか?
この世界がおかしいということは何となくわかっている。だけどそれが何だ?別にいいじゃないかそんなこと。ここには可愛い女の子達がいっぱいいて皆で楽しくキャッキャウフフしている。それが全てだ。それだけで良い。ここは女の子しかいない理想の世界だ。
そんな浮かれた気分のまま俺は寮へと帰ってお風呂とご飯を済ませてベッドに入ったのだった。
~~~~~~~
あれ?今日はいつものアンの誘惑がこないな。俺の我慢もそろそろ限界だから次に来たら逆に襲い掛かってやろうかと思っていたのに肩透かしだ。
「うぅっ……」
「え?アン?大丈夫?」
そう思っていたけどうめくような声が聞こえて慌てて起き上がった。とても苦しそうだ。
「だいじょうぶ……」
「ちょっ!本当に大丈夫?」
全然大丈夫そうじゃない。苦しそうな野太い声でアンが言葉を返してくる。何とかしなきゃ……。
「ミカ!サキ!アンが!アンの様子がおかしい……、え?」
起き上がって隣のベッドへ応援を呼びに行った俺の目に飛び込んできたのはモコモコに膨れ上がった布団だった。いつも小さいミカと大きいサキが眠っていてもこんなにモコモコにはなっていない。まるで中に大きい人が二人いるような……。
「だいじょうぶだから……」
「アンっ!え?何これ?顔に黒い点々が?」
俺の服を掴んだアンの方を振り向くと顔に段々と黒いぷつぷつのようなものが出てきていた。何かの病気か?どうしたらいいんだ?
「あは~!今日は満月だからだよ!」
「ミカ?」
しゃべり方はいつものミカだ。だけどその声は異常に野太い。今まで聞いたこともないような声だ。
「満月の日だけは本来の姿に戻るんだよ。ここではそれがルール」
「……サキ?」
サキの声も聞いたこともないような声だ。何だよ……。何だよこれは!
「ユイだって元の姿に戻るんだよ。谷野裕一君?かな?」
「ひっ!」
隣のベッドから起き上がってきたのは髭面のデブのおっさんだった。だけどその話し方はこの二週間以上毎日聞いていた話し方で……。
「ミカ……、なのか?」
「あはっ!御門翔太で~す!」
「うわぁっ!」
ぶりっこみたいな動きをしたデブのおっさんは、見たこともない知らない人のはずなのに知っているあの子の姿とオーバーラップする。
「田中政樹……」
「ひっ!サキ?」
ミカと一緒に寝ていたはずのもう一人の人物、サキが立ち上がると190cmはあるんじゃないかと思うほど大きいムキムキのマッチョな男だった。
「ふふっ、安藤龍平です」
「アンっ!?」
俺が、俺達が寝ていたベッドから起き上がってきたのは顔中に青々と髭のあとがあるチビで眼鏡のいかにもオタクという感じの男だった。
「へぇ……、谷野裕一君は男でもまだマシな姿じゃないか」
サキ、田中政樹がぞっとするようなことを言ってきた。そしてふと窓ガラスに映った自分の姿がぼんやり見えた。それは、それは紛れもなくこの世界に来る前まで俺だった男の俺の姿だ。真っ赤な髪じゃなくアニメの美少女のような姿でもない。
「おっ、俺?」
「ふふふっ、ユイ……、この世界がおかしいってわかってたでしょう?どこを見ても男なんて存在しない。この世界は黒髪の女の子。残りの半分は色とりどりの髪を持ち人間ではありえない容姿の女の子。わかる?私達色とりどりの髪を持ち人間ではありえないような美少女達はね……」
「あっ、あぁっ……、ああぁっ!!」
いやだ!聞きたくない!もう俺はわかってしまった!この十五日間の思い出が全て……。俺とキャッキャウフフしていた娘達は全て……。
「この世界は都合の良い世界。女の子しかいない世界。だから残り半分の私達は女の子になった元男。そう、黒髪の子達が私達を気持ち悪いというのはそういうことよ。うふふ、うふふふっ!」
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁァッぁぁァァぁぁああああああああああ~~~~~~っ!!!」
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学校の前に倒れている紫の髪をした美少女を色とりどりの髪の色をした美少女達が覗き込んでいる。
「うっ……、あ?俺……?」
「あっ!みんな~!目が覚めたわよ」
「あはっ!本当だぁ」
「あなたもそうなのね」
紫の髪の美少女に他の美少女達がワラワラと集まってくる。紫の髪の美少女は少し驚いてオドオドと回りを見渡す。
「大丈夫よ。さぁ、こんな所にいないで皆と一緒にあっちへ行きましょう?」
「あっ、はい……」
手を取られて起こされた紫髪の女の子はほんのり頬を赤く染めて自分を引っ張ってくれている美少女を見詰める。
「あの……、ここは?」
「いいから。あなたは何も心配することはないのよ」
柔らかく微笑まれて紫髪の女の子はますますしどろもどろになる。何か言わなくちゃと思って頑張って話題を探してようやく口を開いた。
「あっ、あの……、綺麗な髪ですね。真っ赤で……、アニメやゲームから出て来た美少女みたいです……」
「あら、ありがとう。私はユイ。あなたは?」
「うふふ」
「あははは」
「うふふふふ」
ある方に別作品にて感想をいただき、その方が言うには百合と書いてあるなら恋愛感情もない男でも出てきたら竿役だ!とのことでありその方の希望通り徹底的に男は排除いたしました。
またキャラ掘り下げのために百合が出てこない話しが続くと徹頭徹尾、最初から終わりまで脈絡も話も関係なくずっと百合でなければならないそうなので最初から最後までキャッキャウフフさせました。
ですがそれだけでは物語ではなく自分の好みの設定をつらつら書いているだけになるので物語と成立させるために設定の必然性を頑張って考えてみました。
きっとその方にとってはこれは素晴らしい作品ではないでしょうか。私はこのような世界は御免なのでホラーとキーワードをつけておきますが……。
最近は新しい案も中々思い浮かばなかった中で感想を見てインスピレーションが湧き思いつきましたので、やっぱり人との交流は大事なことだなと思い返す次第です。
ありきたりな展開なのでどこかに似たような話があるかもしれませんが急造なのでご容赦ください。