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プロローグ
━━━━見つけた
君を見かけた時そう思ったんだ。
俺の理想を叶えてくれる人。
俺のカメラが訴えていたんだ。
思わず駆け寄ってしまった、俺と君はまったく赤の他人なのにな。
案の定君はキョトンとしていた。
「君を撮らせて欲しい!」
どうしてコミュ障の俺がこんなことを言えたのか分からないが、この時の俺の顔は凄まじく緊張していたと思う。そういえば、そう言った時君はどんな表情をしていたっけな。
辺りには桜が舞っていて。
それを包み込むように君は笑っていたっけ?
それとも困っていたっけ?
どちらにせよ、もうデータを壊してしまったから君がどんな髪の色でどんな目の色をしていて、どんな表情をしていたかなんて覚えてない。
もちろん君の名前なんて教えて貰っていない。
ほんの数枚だけ撮らしてもらっただけだ。
そう……それだけの関係だった。
君が俺と出会ってそれだけでは済まなかったことを知らないまま。
後に俺達は知ることになる。
あの時の美しい君はとんだ盗撮魔になり
あの時の冴えない俺はカメラを手放した事を。