10.今はサヨナラ!また会う日まで
今までのおはなし。
主人公深水舞子はアラフィフのオバタンだったが異世界転移のち、獣人エルモの手により若返りを受け、ピチピチに大変身!
諸事情で本人の資質関係なしにモテモテになるが、諸事情により追っ手持ちとなる。僕を兼ねた恋人レイクラスを連れて愛の逃避行中だが、うっかり麗人の団体である商戦シルヴィアナ号の面々と仲良しに。
油断してミュージックビデオ?的なものまで作られてしまった舞子の明日はどっちだ⁉︎
10.
その妖しい微笑みは十代の外見に大年増の中身である舞子ならではのモノ。
誰もが息を飲む中、そっと生贄に寄り添った狐耳のアイドル(笑)は、彼の胸に額をとん、と乗せて腹筋の辺りに『の』の字を書くあざとさで赤茶の髪から覗く綺麗な頸を見せ付ける。
「クロさんなら、あたしの気持ち…分かってくれる、よね?」
存分に溜めた上で下から見上げるその琥珀の色っぽさは壮絶だった。(あくまで獣種視点)
「アレ…恥ずかしいから、消して?」
女の媚態には慣れた筈の美丈夫が片手で自らの鼻を覆った。膝に力が入らずにへたり込めば、彼の膝に乗り上がり、舞子が追撃を始める。
そんな女の細腕に大の男が簡単に押さえ込まれていた。
「ああっ、こ・航海長ッ‼︎なんて羨ま絶対負けちゃ駄目ですよッ(←本音が隠し切れず挟まった)」「何、ウンウン頷こうとしているんですかッ⁉︎しっかりィ〜〜‼︎」「女好き何年やってるんですかッ⁉︎男のプライドは何処に行ったんですかァあんた‼︎」
その遠慮の無い外野の罵声にクロノスのなけなしの意地が息を吹き返した。すかさず両護衛機隊長が慌てて舞子の両腕を取り、彼の上から何とか子猫の様に持ち上げると、
「オマエ等、好き勝手言ってんじゃねぇッ‼︎」
と、瀕死の形相で立ち上がり、辺りを物凄い迫力で威圧した。
そして可愛い…くすん、とか鼻を鳴らす(計算)小娘に、
「す、済まん。だが、幾ら愛しの小鳥ちゃんの頼みでも…それだけはどうしても出来ねぇ」
「…クロさんのばか(『バカ』じゃない所がミソ)。女の子(笑)の困るコト、する様なヒトだと思わなかった。サイテー」
弱り切って頭を下げた黒髪の美丈夫を舞子は(意図的に)涙目で一瞥する。
「ああっ、何あっさりダマされているんですッ航海長‼︎」「馬鹿っ、アンタ本当に馬鹿ですよッ⁉︎」「ほら、よく見てっ!小鳥さん、ニヤッと嘲ってますよ‼︎」
咄嗟にフラフラとコンソールに手を伸ばし掛けた彼に、次々としがみ付き行動を阻む面々。
「ち」
小さく舞子は舌打ちをすると、溜息を一つ漏らして出口へと踵を返した。
「天使ッ⁉︎」「マリ‼︎」
背中に悲鳴の様な呼び掛けが起こり、不貞腐れた表情の娘は腰に手をあてて振り返った。
「取り敢えず『明日』ついていくのは無理だけど。近々絶対ソレ、消しにまた来ますからね?…そっちこそ、忘れないで下さいよ?」
ふわり、ピンクのショールを翻した。
「忘れるものか」
ブランが銀の髪を靡かせ、駆け出すと仁王立ちする舞子を捕まえて、力一杯抱きしめた。
「絶対、来るんだぞ…いいね?何処に居ても迎えに行くから」
藤の花の様な彼女の香りに包まれて、舞子はその秀麗な額に額を合わせた。
「馬鹿ね。あたしが来るわよ。──────約束ね」
約束。
それは強力な護符だった、可能な限り実現するそれを得て、船長は泣きそうに微笑んだ。
大きく手を振る大勢の船員達をこちらも明るく手を振って見送った。
シルヴィアナ号は大きく港町を賑わかせ、その地を出立して行った。
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ああ…こんなに短いのに4月中に間に合わなかった…。_(:3 」∠)_




