福島悟とお詫び
読みやすくするために行間を空けてみました。
読みにくいようでしたらお教えください。
土曜の朝、いつものように体にかかる重さで目を覚ますと、そ
こにはいつものように俺の上にまたがり目覚ましの代わりに俺を
起こす陽菜の姿があった。
「おはよう悟」
いつものように笑顔で俺に挨拶をする陽菜がいて、いつものよ
うに一階からのリビングからは朝食のトーストのいいにおいが漂
ってきて陽菜の香りと混ざり合う。
「今週一週間は大変だったね。みんなが悟が加奈をフッタって
騒ぎ立てて」
そうだ、俺は先週の土曜日に伊藤加奈からの告白を断った。
月曜に学校へ行くと俺が告白を断ったという話で教室は持ちき
りだった。
騒ぐクラスメイトを陽菜と直樹が抑えて、騒ぐ奴がいなくなっ
たのは木曜だった。
「昨日は悟も疲れて帰ってすぐ寝てたもんね」
「悪い、お詫びに今日はどっか連れて行ってやるよ。どこに行
きたい?」
「聞いといてなんだけど温泉旅行はないだろ」
俺たちは今、片道二時間くらいの距離にある温泉旅館に来てい
る。
「ねぇ悟なんでこの旅館にしたと思う?」
この旅館は結構有名な旅館で、夜景がきれいとか露天風呂が広
いとかいろいろとあるみたいだが・・・
「理由は・・・混浴があるからでしたー」
そうだ、この旅館には混浴の風呂がある。
「じゃあ先に部屋に行ってみようよー」
部屋は和室で結構な広さもあり、窓からの景色もとてもきれい
だ。
移動の間寄り道をしたりして結構時間がかかって今は午後三時
過ぎ。
「じゃあ私は汗かいたから先に一回お風呂入ってくるけど、悟
はどうするの?」
確かにいくらバイクに乗って涼しい風が当たっても今の気温で
は汗はかいてしまうものだ。俺も少し汗をかいている。しかし、
気にならない程度だ。
「俺はそこら辺を歩いてくるよ」
旅館の周りには夏の始まりを感じさせる蒸し暑い風とセミのな
く騒音が響いていた。
「陽菜もかわったな・・・」
昔の陽菜ならこんなとこに行こうなんて言ってこなかった。
一緒に過ごすことに慣れてきた証拠だ。
旅館の玄関付近には俺のバイクが止まっている。
このバイクは親父が死ぬ前に乗り回していたバイクで親父の形
見である。走行距離も慣らしが終わったくらいでまだまだきれい
なままだ。
そういえば・・・俺はこの場所にきたことがある気がする。
「おーい、悟?どうかしたの?」
「なんでもないよ」
「そー言えば今日この近くで花火大会あるんだって。行こっ」
花火大会なんていつぶりだろう・・・