一章:少女の朝Ⅱ
「早くしないと遅刻するわよ~」
はっと時計を見ると6時45分を指している。
急いで着替えて部屋を飛び出すと母が、
「今日は、学校早いでしょ?帰りに牛乳買ってきてちょうだい」
「え~・・・忙しいのに・・・」
「帰り道なんだからいいでしょ!どうせ家に帰ってきてもゲームばっかりなんだから」
そのゲームで忙しいんだっての・・・
「ハイハイ・・・」
「分ればよろしい!早く行きなさい遅刻するわよ」
そっちが引き止めたくせに・・・
そう思いながら家をでる。
・・・あ~、朝からテンション下がるなぁ・・・
そう思いながら歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「かおりっち~」
振り返ると、黒いツンツン頭の少年がこっちに向かって手を振っているのが見える。
彼は、卓也。私と比べて少し大きい。でも男子の中では小さい方である。
「かおりっちおはよう!」
元気な声で恥ずかしい呼び方をしてくれる・・・
「その呼び方やめてよ!」
ついつい怒鳴ってしまう。
「ご、ごめん・・・」
ちょっと下を見ていたかと思うとまた話しかけてくる。
「昨日、かおりっちが落ちてからなんだけどさぁ~」
聞きたくもない・・・
学校にも一緒にゲームをやっている友達がいるけれど、皆、私が落ちてからの話ばかり。
「ずるい・・・」
「え?」
言葉にしてしまった・・・
「なんでもない」
友達とゲームの話をするのは楽しいけれど、私が眠っている間の話をされると嫌な気分になる。
「・・・え、ねぇってば!」
ぼーっとしていた。
「?」
「このままだと遅刻しちゃうよ!!」
携帯に目を向けると7時30分という表示が見えた。
慌てて走り出す私と卓也・・・今日もギリギリだ。