7.地属性な使い魔
お久しぶり! 今日からちょくちょく更新します!!
更新再開!
中立地帯、紛争地帯、無法地帯、魔物の領域、実験場 などなど…
そんな土地に突如、現れたのは二人の地属性を操る少年、少女。
農業か土木作業位にしか役に立たないというのが、この世界の常識であった。
そして、その常識はつい先日、文字通り覆された。
地属性を用いた魔術と武術で軍隊は蹴散らされ、
国境線に沿って巨大な壁と堀を出現させるという人間離れを超えて神域に足を踏み入れた所業を行い。
かと思えば、悪魔の所業ともいえる『恐怖の魔物展示会』だ。
ロサヴェルト王国の将軍ウェルナーは勝機は薄いと早期に悟り和睦の道を探っていた。
一応、始末する手段も考えていたが味方に引き込んだ場合のメリットが大きかったのである。
しかし、国でも扱いに困り、見識を広めるという名目で国から遠ざけていたローズ王女が突如帰国し、自分が率いる部隊に『猟犬』が紛れ込み、魔物としてユーストマの城壁に磔にされたのだ。
ウェルナー将軍はその事実を知った時、彼らの戦闘力より、猟犬を全滅させるに至ったその索敵能力ないし、追跡能力を恐れた。
猟犬部隊は戦闘能力と、獲物を確実に仕留めるための索敵能力に長けるつまり鼻の効く部隊でもあった。
彼等は中立地帯の住人を新技術の披見体として捕獲と実験を行う部隊だ。
部隊の性質上、戦闘力、追跡能力以上に、隠蔽能力が長けた存在すら怪しまれる部隊だったのだ。
つまり、あの地属性使いには、ロサヴェルトの誰もが逃げも隠れも出来ないという事も立証されたのだ。
戦えば、死
逃げても隠れても死
和睦しようにも猟犬部隊が戦争の引き金を引いてしまった。
公には新種の魔物の襲撃という形で収めているが、そんな言は通じない。
先の読めない腐敗貴族や有権者にユーストマの地属性使いの危険性を唱え、好戦的な王女に早まった真似をさせない様、情報収集と対策を整えるようにした。
連日会議に明け暮れ、疲弊しきった彼に追い討ちを掛ける報告が彼に届く。
「報告します!! 雷王様が従者を連れて姿を消されました!!」
その報告がウェルナーの脳内を反響し、反芻し終わり、そして彼は口を開き、
「………もうどうにでもなーれ」
「ウェルナー将軍!?」
……倒れた。 止めだった。
卒倒し、薄れ行く意識の中、ウェルナー将軍は思った。
普通の王室関係者なら脅威を前に血を残すため、再起を図るために逃亡するだろう。
普通なら……
しかし、雷王の称号を持ち、唯の王族では無い彼女は当然、普通の王女では無かった。
◆◆◆◆◆◆
ユーストマ国境
巨大な壁と切り立った崖に囲まれ、東西南北にかかる巨大な石橋がかかる国。
そして、ウェルナーが意識を手放した頃
件の王女は件の地属性使いが掛けたであろう石橋の上を従者を引き連れて渡っていた。
一人は、エプロンドレスを身に纏い皮のブーツを履きこなすメイドの少女
容姿はそこそこ整っており、青い髪をポニーテイルに垂らし、背中にバックパックを担いでいる。
「姫様が何時かこの地を踏む事は確信していましたが、まさか、自ら来るとは……失恋でもしました?」
自分の主が遠い未来に処刑ないし、追放されるだろうと確信していたと皮肉をいうメイドにあるまじき発言。
間違っても王女、それもロサヴェルトの最大戦力に向かって放つ言葉では無い。
「あの国を私が見限る事はあっても追われる事は無いぞ? あとシャル?わらわの事は姫様ではなく、ローズと呼ぶのじゃ。」
対して黄金の少女、ローズ王女は親友の皮肉を皮肉で返しながら、
振り返り自身の親友にして少女に呼び方を訂正させる。
その言葉に当たりを見回す。
先ほどまで国境付近にいた偵察兵や、上空を回っていた竜騎兵は居ない。
目ざわりとばかりに先ほど、目の前で膨れている少女が『雷光』と『姫命令』を発して追い払ったからだ。
少し頬を膨らませ、ジト目で少女を睨むローズを見て、シャルロッテは苦笑する。
これが、各国に名を轟かせる『雷王』とは誰も思うまい。
膨れた頬をツンツン突きながら従者は王女をからかい始める。
「あらあらローズは可愛いわね~ 何?失恋のショックで私に惚れた?」
「失恋はせんが……というか、恋すらしておらんが?」
「え~? だって件のユーストマ王だっけ? 彼に恋焦がれて情報収集してたよね? 恋敵の女の子をやっちゃいに来たんだよね?」
「どこの悪女じゃ!? 怖いわ!!」
「………え?」
「なんじゃ? その意外そうな表情は!?」
驚愕し、憤慨しつつも雷王ローズは内心喜んでいた。
何時もどおりシャルロッテは公の場以外ではメイドの仮面を脱ぎ捨て
恋話をしたり、人を腹黒い悪女に仕立て上げようとしたり、対等の親友の様に振舞ってくれる。
「……ハァ、今日は戦争はせん、ウェルナー辺りは勘違いしておるかも知れんがのぅ」
「え゛ぇ~~~高笑いしながら戦わないの~」
心底がっかりだという態度で、肩を落とす親友。
「じゃから、わらわに何を期待しておるのじゃ?」
「ツンデレ王女兼、御伽噺お姫様かな?」
「……わらわ達、親友じゃよな?」
「当たり前ジャン!!」
そんな他愛の無い何時もどおりの掛け合いをしながら巨大な石橋の上をわたり崖を超え、とうとう件の壁と『標本』が見えてくる。
壁の周りには所々、水晶のケースで展示物が陳列していた。
苦悶の表情の石像
壁に串刺しにされたオブジェ
透き通った水晶のケースに収められた剥製
その全てが、ロサヴェルトの鎧を着た兵士、国の暗部『猟犬部隊』だったモノの成れの果てだ。
雷王と呼ばれる程、苛烈なローズでさえこの所業には眉根を少々寄せた。
「石像と化した遺体……話に聞いてた以上じゃな。 バジリスクか高位の悪魔と契約しておるのか?」
「うん……それに剥製の方の遺体の切れ味……相手は唯の料理人じゃないね?」
「……いや、相手の料理の腕とかどうでも言いのじゃが……剣術か魔術かの? 膂力や魔力だけでなく技術も高そうじゃの。」
それぞれ、飾られた遺体と、その横に書かれた注意書きを見て息を呑む二人。
そして、報告にあったヒトモドキの注意書きと標本以外の光景に目が行く。
先ず始めに目が行くのは門だ。
橋があるのだ、人の往来を想定しているのだから当然、門もある。
ここだけ作りが違い木製だ。
粘土か石材か、いかなる金属か分からない壁だが、門だけははっきりと材質が分かる。
本来、最も頑丈にするべき門の材質に木材を使う理由。
単に閉開する際の利便性を優先したが故だろうか?
疑問に思いつつも辺りを注意深く見渡す。
ロサヴェルトの様に、関所の様なものは無い。
そして、門の横に石版が様々な言語で注意書きが書かれている。
『この門を潜りし者、一切の望みを捨てよ 管理人』
管理人? この場には不釣合いな単語に首を傾げつつ、続きを見る。
『でも、モフモフちゃんはフリーパスだよ~ 但し女狐お前はダメだ!! byユーストマ王妃』
『勝手に書き足すな!!↑』
「………ユーストマ王は苦労性か?」
「どうするローズちゃん? コレは挑戦だよ? 恋敵はやる気満々だよ?」
後ろで『シュッシュッ』とシャドーボクシングを始める好戦的なメイド
ローズは若干、気を削がれながらも注意書きを無視して門に手を掛ける。
その瞬間、ローズは手を止め、シャルロッテを抱えて後方に飛び退る。
「―――ッ!!」
「え!? ローズちゃん!?」
上空と地面、それぞれから人型が現れたのだ。
壁の上から水晶の仮面を被った女性が降り立ち、
地面からは水晶の鎧を纏った大男が現れていた。
「左門のサキ、参上」
「同じく右門のユウキ参上」
「門番……いや、それより貴様等は……」
「ロ、ローズちゃん、これは流石に私も予想外かな」
突如現れた門番、報告には無かった存在。
注意書きからその存在は予想できていた。
現れる直前まで気配を消す手並みからも相当な実力者だと分かる。
しかし、それよりもローズとシャルロッテが驚いたのは彼等の額、頭にあった。
彼らの頭部には仮面や兜では隠しきれない、立派な角が二人には生えていた。
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