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2.地属性女子はモフモフが好き

湿布で何とか回復…少し、更新遅れました。

応援、評価、感想貰う度にやる気と元気を貰えます!


ルストヴェルト→ロザヴェルトに修正。


「むむ!? 見てくださいコウ君!!」

「何だ?」


 少女が何かに気づき、コウ君と呼ばれた村人の様な簡素な服を纏った少年の肩を揺すって話しかける。


「誰も死んでません!!」


 どうやら兵士が誰ひとり死んでいない事に気づいて驚いているようだ。

 倒れ伏す兵士たちがその言葉にビクリと震える。


 どう見ても10代中頃から後半位の少年少女の姿をした一挙手一投足が全て災害の全長に思えて仕方がないのだ。


 次の瞬間、地割れが起きるか、先ほどの地面に沈んだ大剣を叩きつけられる地獄絵図が容易に想像できてしまう。


「……殺す気でやったのか?」

「いえ! 人の話を聞かずに無視されてムカっとしましたが我慢しました!!」

「それはいい心がけだな。」

「でも、誰もしゃべりません! 降伏するように呼びかけたのにです。生きてるなら喋れるはずです!! ……死にたいのでしょうか?」

「……言葉が通じないのかもな?」

「ああ! 成程、その可能性を失念していました。時代も変わって言語が変わったのですね?」


 納得したかのようにポンと手を打つ少女

 兵士たちは、少年少女の言葉を理解しているが、恐怖と混乱で言葉を失っているだけだ。

 だが、どうやら殺される事は無いと少しばかり安堵しだした。


「では、仕方ありませんね。 私たちの居ない所で戦争してもらっても困ります。やはり、皆さんには死んでもらいましょう!」


 状況が更に悪化した。

 無邪気に、この場にいる全員を殺すと宣う少女から信じられない程の魔力が立ち上る。


「ま、待て!! 待ってくれ言葉は、分かる我々に抵抗する気は無い!」

「そ、その通りだ、これ以上、戦う気は無い!」


 両軍の代表者、それぞれが動き、痛む体にムチを打って立ち上がり声を張り上げた。


 二人共、災害の化身の様な化物相手に戦う気は無い。

 幸い化物や自然災害と違い、話は通じるのだ。 

 少女の言葉を信じるなら現状、死者は出ていない。


 しかし、少女は話の通じない相手には無慈悲に無邪気に災害を起こそうとしている。

 だが、話が通じるなら取り敢えずは殺しはしない様だ。


「おお、通じました! 言葉を喋ってますよ!!」

「……それぞれ、大将っぽいな。申し訳ないがここまでご足労願えますか?」


 言葉が通じたことで、魔力を霧散させ喜ぶ少女。

 坦々と話を進める為、将軍に此方に来るように呼びかける少年。


 少女は兎も角、少年の方は、話が通じているとわかっていながら少女に話を合わせていたようだ。

 いい性格をしている。


 純真無垢で無邪気で何をするか分からない少女より、いい性格をしていても話が通じるならと一縷の希望が見えた。

 代表者たちは痛む体に顔を顰めながらも災害の震源地(・・・・・・)の方へ自ら歩いていくしか生き残る術は残されていない。


 しかし、その顔は青ざめている。

 死か、災害を人の形に押しとどめたかのような者達。


 それが二人もいる場所に歩いてくのだから当然だ。


 だが、さっき言ったように彼等の攻撃は殺戮の為に放ったものではない。

 地面も短時間での揺れの為、所々地面が隆起したり、地割れも起きているが動きを止める程度に留まっている。


 山のような大剣を創り出した少年もその気なら先の一撃で軍隊を皆殺しにしていただろう。

 絶望の後に、希望が残るように…預かった兵士たちにこれ以上、被害が行かないように、代表者たちは歩き出した。


「ふふふ、やっぱり人とは分かり合えるものです。説得に応じてくれました。」

「いや、物理的に止めたよな? 説得で止めるとか息巻いてたくせに。」

「説得しましたよ? 私は誰かさんみたいに最後まで武器振るいませんでしたし、言葉で静止を呼びかけました!」

「ほう? ならあの地震はなんだ?」

「……偶々、運悪く、説得と地震が重なっただけです。」

「技名、叫んで地面に踏み込んでなかったか?」

「あれは大声で説得する為の気合です。」

「お前は気合を入れるときに技名を叫ぶのか?」

「気合の入れ方は人それぞれです。 今の私は技名を叫ぶのがにゅーうぇーぶなのです!」

「じゃ、俺の真後ろから聞こえたでかい「足音」はなんだ?」

「む! さっきからコウ君がいじわるです。 やはり私の事が好きなのですか?」

「………さっき、皆殺しにするとか言ってたよな?」

「無視されました!?  …きっと私の事が気になるコウ君のエッチな頭が聞かせた幻聴では無いでしょうか?」

「……確かにお前の事を気にかけているな、頭が痛いという意味で……っと来たぞ?」



 代表者が来るまでの間、雑談をする若者達。

 こうして見ると本当に先ほどの災害を引き起こした者たちとは思えない。


 しかし、彼らは今、確かにこの場を完全に支配しているのだ。


「こんにちは」


 ようやく、代表者たちが彼らの元に近づいた時、ペコリと少女は元気よく挨拶をする。

 一方、少年の方は会釈をする程度だ。


「最初に言いましたが戦争は止めてください。」


 戦争をやめろと言われても、これ以上出来るわけがない。

 死者は出ていないが、兵士は傷つき、戦意は砕かれている。


 代表者はこれから、如何に損害なく…彼らから逃れるかしか頭に無い。


「おや? 反応が鈍いですね? 先程まで貴方たちは殺し合い、戦争をしようとしていた。

 そして、其方の獣族の方々と、此方の人族の方たちは、それぞれ別の国の軍人ですよね?」


「あ、ああ、我らヒースワルドは青の外套と其方のロザヴェルトは白の外套で見分けれる。」 


 獣族の代表者…ヒースワルドの将軍が言われたまま、素直に少女の疑問に素直に答える。

 もはや、あれこれ策を弄する考えは無い。

 下手に嘘を付くことも、少女に斬りかかることもできない…

 それに、獣族の血が…本能が、若者達、特に少女から本能的な危機感を感じる。


 ここから逃げろと本能と全細胞が叫んでいる。


 

「ふむ……見たところ、モフモフ…もとい、獣族の方の国のようですね…ではヒースワルドに…」

「ではロザヴェルトにしよう……ヒースワルドの人らは帰っていいですよ、これ以上の攻撃もしません。」


 少女の声を遮り、少年がヒースワルドの代表者を帰らせるよう、促す。

 その言葉に、少女が慌てて少年に食ってかかる。


「な、なぜですか! 行くならモフ天…もとい、別にヒースワルドに行っても代わりは無いでしょう!?」

「ちゃんと考えがあるから…少し黙ってろ。」


 少女を片手であしらい、ヒースワルドの将軍に話しかける少年。

 少女の言葉の箸から、一瞬、邪念じみた本性を感じたが、大剣を創りだす少年はまだ理知的な様だ。


「わ、我らを後ろから攻撃したりは……」

「そんな事はしません! ロザヴェルトの方は兎も角、モフモ…コウ君と違って私は獣族の方を殺す気はありませんから!!」


 少女が心外とばかりに口をだす。


 …確かに、少年は兎も角、少女はロザヴェルトの方に向かって大地を揺らし為、ヒースワルドの方の被害は余波程度だ。

 皆殺し宣言もルストヴェルトの方を向いてしたもので、殺気は向けていない。


 ヒースワルドの方を睨んでいたのは少年の方だが、彼は少女の暴挙を止めるように理知的に話を勧めているし、先程、

 少女はヒースワルドに来ようとしていた。


 なら、矛先が此方に向かわないうちに撤退するに限る。


 そうして、ヒースワルドの軍はっ撤収していった。

 終始、少女が残念そうに名残惜しそうにヒースワルド軍の方を見ていた為、生きた心地はしなかったが約束通り、攻撃されずに撤退出来た。



 ━━━━ズン━━━━ズン━━━━ズン!!


「モフモフが~~……」


 ヒースワルド軍が去った方角を恨めしそうに見ながら、名残惜しそうに見送ったあとも少女は呟く。


 そして、次第に地面を苛立ちの様に蹴り続ける少女。

 その度に軽く地面が揺れ、兵士達が恐怖に青ざめるが、少年は止めない。


 やっている動作は可愛らしいが、言動の規模のアンバランス差に愛おしさは一切感じられない。


 


 少女の(カルマ)が目に見えて溜まっていく。



「さて…、貴方たちには未だ、話があります。彼女の怒りの捌け口になりたくなければ、素直に聞くことを薦めます。」


 その少年の黒い笑みを見て、今、ロザヴェルト軍の心が一つになったと将軍は確信した。


 

 ━━━━本当にコイツはいい性格をしているな!!





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