5. プラン1
「おい、ゲイリーからの合図はまだなのか」
俺は腕を組んで、小刻みに右足でパタパタと地面を打ち鳴らしながら、イライラを表現していた。
その問い掛けに、背の高い銀髪の男は腕時計を見ながら答えた。
「約束の時間にはまだ三分ほどあります」
「約束の十分前には集合しておくのが常識だろう!」
怒声を飛ばす。
「今回のケースでは、集合ではなくあくまでも合図です。それに、約束の十分も前に連絡が入ってしまえば、この計画は台無しになってしまいますよ」
このように冷々淡々とした銀髪の返しに慣れきっていた俺は、それに対して何も言わなかったが、代わりに足の動きを一六ビートで刻み始めた。
すると、銀髪の男はふーっと溜息を吐いて、俺の右足を自身の左足で踏み付け、右足の動きを無理矢理止めた。
「何しや……もご!」
すかさず、俺の口を大きな手で塞ぎ、言った。
「シー。お静かに。少し、深呼吸でもしてはいかがですか?」
踏まれた足と口を塞いだ手を振り払い、声量をほんの僅か落として答えてやった。
「余計なお世話だよ!」
「そうですか……おや?」
「どうした」
「深呼吸をしたら教えて差し上げますよ」
「ん、そうか? すーーーーはーーーー。で?」
「エディ、合図が来たようです」
「そういう事はすぐ言え、ギリアム!」
「こういう時こそ冷静にならなくてはなりませんから」
俺は舌打ちをして、ゲイリーからの合図を確認した。