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6. スコットマン兄妹

 兄、ウィルバー・スコットマンはレオと、そして、妹、ジャンナ・スコットマンは、私の友人で、いずれもスクールの同級となる。

 スコットマン兄妹と言えば、彼らのスクールではいつも人前で喧嘩ばかりしている事で有名だったのだが、その二人がそろって植物園にやって来て、共に行動しているという事が、私やレオには不思議だった。

 私ら四人は昼食を食べに中央ドームを訪れた。

 ウィルバーはそうでもないのだが、ジャンナはばつの悪そうな顔で、私に苦笑いを向けていた。その為、昼食はどこかギクシャクした会話が飛び交ったものだ。

 食事が終わると、それぞれ友人同士、同性同士に分かれる事となった。

 私とジャンナは公園の木陰のベンチに座り、レオとウィルバーは日だまりの中で公園の中の珍しい植物等を見て歩いていた。

 私は気を使う相手がいなくなったのをいい事に、好き勝手な事をジャンナに吐き出した。

「で? いつもの喧嘩は、つまり、ネタだった訳?」

 ジャンナはストローで吸い込んでいたカフェオレを、咽せたのだろう、勢いよく吹き出して、ゲホゲホと咳を繰り返した。そして、言い訳をした。

「いや、ネタじゃなくて……。ええっと、そう。そうそう、今現在この時がネタなのよ! 仲が良さそうに見えるネタ。来期にネタとして、発表するから……って、誰が発表するもんですか!」

 私はわざとらしく無邪気な笑顔で首を傾げ、返した。

「何言ってるのか、全然分からないんだけど」

「ううーん……今のは私にもよくわかんない」

 開閉式のドームの天井は今、開放されていて、そこから吹き込んでくる風が木々の枝葉を揺らす。葉洩れ日の小さな円形が、友人の顔を揺れ動く。

 私は、何だかいろいろな物事が些末に思えて、ふっと息を吐いた。

 ジャンナも同じような気持ちだったのか、照れの混じった笑顔をこちらに向けた。

 ところが、ジャンナは急に眉根を寄せ、渋さを口許に浮かべて言った。

「あ、ルイ。また夏休みの間に焼けたんじゃないの? 将来シミになるって言ってるじゃないのぉ!」

「えー、今回はあんまり外に出ていないんだけどなぁ」

「ルイは日焼けしやすいんだから、少しでも外に出る時は、UV対策しないと!」

「う、うん」

何故か本人自身よりも、私の体質に詳しい友人Jの猛攻から、何とか逃れようと視線を別の方に移す。

 自然とレオたちの後を追う私の視線。彼らは丁度、ヤマモモのの木の下で、説明の書かれた立て札を真剣な眼差しで読んでいるところだった。

 そこに、友人Jの更なる攻撃が。

「ブラコン。目がハートになってるよ」

「ち、違うよ。レオとは血が繋がってないんだから!」

「否定するの、そこなんだ……」

 私はそれを指摘されて、顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。

 スクールでも、このネタでよく私はジャンナにからかわれている。しかし、実際にその通りなのだから、いつも困っていた。

 恥ずかしいのだが、大真面目に、私はレオの事が好きなのだ。それは、兄妹愛という枠を越えている。

 血の繋がりが無いという事実は、私の想いが報われる為の、一つの可能性だったのだ。

「ちょっとからかっただけなのにさ」

 ジャンナは、呆れ顔でヤレヤレと首を横に振った。

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