10. プラン5
照明が消えました。
その時点で、わたしとゲイリーは所定の位置に着いていたので、計画は少々の遅れを加味しても順調と言えました。
「いよいよだな」
ゲイリーの呟きが聞こえます。
わたしは声を出さずに頷くと、銃を手に持ちました。
数分後、照明が再び輝き始め、それと同時に、機械的な声が天井から響いてきます。
「セキュリティ設定が一旦リセットされました」
「行きますよ」
「ああ」
わたしは手動で扉を横に引きました。再びセキュリティの設定が完了するには、およそ三分と見積もっていました。特A級のセキュリティ・ロックが手動で開けるようになるのは、その三分間だけなのです。
このフロアは全体が艦橋、つまりブリッジになっており、他の階のような廊下なるものは存在していません。入ったら、いきなりそこがブリッジという一つの部屋になっています。
無言でブリッジに入ったわたしとゲイリーは、すたすたと奥へ歩み進む。
ブリッジ内に、思いもよらない闖入者があり、堂々と歩いている。その姿は、その場で働くほとんどの人に、彼らが危害を及ぼす存在であるようには見えなかったようです。
わたし達はブリッジの奥で、船長と思しき風体の男に、それぞれ銃を突き突き付けました。
「動くと首から上がなくなるぜ」
ゲイリーが軽い口調で脅しを掛けました。
「船長は誰ですか?」
わたしは念の為の意を込めて、銃を突きつけ動けなくしている精悍な顔の男に尋ねました。
「私だが」
感は当たっていたようです。
「お前らは一体誰だ」
さすがに、これだけの巨大船の船長を任されている程の方ですね。その様子に怯えている節は少しも垣間見えません。
しかし、それはそれ。わたしはそれに応える事もせず、要求だけを伝えました。
「あなたたちに対する要求は一つだけです。ほんの少しの間、動かないでいただきます。人質は、この船の中にいらっしゃる全ての一般客ですから」




