頼まれごと、とか
感想ありがとうございます。
誤字が無いように気を付けたいと思います。
あれからと言うもの、紡は俺によく抱きついてくる。
学校の登校前。帰宅後、風呂上り……etc、正直言って心のタガが外れそうになること数回。
あれ?なんですか、襲っていいんですか?と思春期少年的には考えてしまうことがしばしば。
だが、家族に手を出すわけにはいかないし、紡が男から女になっただけ、と考えれば納得がいくし、どうにか理性を保っている。
あの津永と中学校が同じで変態の影響を受けてしまっている一面もある。なのでわざと当ててるって感じの時がよくある。その証拠に若干口の端が曲がる。
それが綺麗だと思う反面かわいく思えてしまう。やばい、俺は末期かもしれない。
兄弟のスキンシップ。
これだ。
この状況を自分で納得するために導き出された俺の答え。
昔からブラコンの気がある紡ならそのくらいあり得る。
女になってしまってまだ2週間。いろいろ云々あったりしたが多分慣れていないのだろう。兄弟のスキンシップぐらい、昔からの事なのだから納得しよう。
そう思い、今日も学校の登校前にタックルを食らい、頭を撫で、学校へ行く。
「朝桐君、ちょっといいかな?」
「なんでしょうか七斑先輩」
昼休み、昼食を食べ終わり生徒会室に連行され、今に至る。
「お爺様が朝桐君と手合わせをしたいとうずうずしているので今日、うちに来てくれないかな?」
「……もしかしてですけれども門下生の方たちが?」
「情けない話なんですが皆、毎日餌食にあってしまってるんです。さすがにそろそろ限界みたいで」
「わかりました」
「ごめんなさい、私が夕食時にうっかり学校で話をしたなんてい言ってしまったものだから」
「気にしないでください、中学の時もあった事ですから」
七斑会長の祖父、炯雁さんはその筋の人にはかなり有名な人で彼の弟子になろうとする人は少なくない。
俺も成り行きで門下生になったがここ最近は行っていない。
受験やらなんやらで半年ほど行けず、その間の時間が長かったので行くに生きずらかったというのがあり、今に至る。
校則上一応校内での携帯電話の使用は認められているので紡に用事があるから晩飯はいらないとメールで告げておく。
連絡を入れたので鞄に携帯電話をしまおうとしたのだが、電話がかかってくる。
言わずとも発信相手は紡である。
「もしもし」
『今日、隆哉の好きなコーヒーゼリー作ったから9時までには帰ってこい!』
半分キレたような声で自分の要件をさっさと言い電話を切られる。
しかも大声だったので多分七斑先輩にも聞こえていると思う。
「……家族から門限を発動させられたので9時には帰りますが大丈夫でしょうか」
「…分かりました」
何か残念な表情で頷く。
「あの、先輩?」
七斑先輩の家は学校からほんの少し遠く、学校から我が家に行くより時間がかかる。
しかも山の中にあり、道路も整備されてないため、長い石階段を上らなくてはならない。曰く800段。
毎度のことながら通学が大変そうである。
それなのにあの細い足にはまるで無駄な筋肉がなく、すらっとした綺麗な足だ。
先ほどから無言がつらく、何かしら話題を振ってみるのだがすべて「うん」とか「そうですね」「良いのでないでしょうか」と冷たい反応ばかりされる。
このままでは埒が明かないというか、何も話が進まなそうなのである話題を出す。
「現在、休学中の兄、紡の相談を少々よろしいでしょうか」
先輩は階段を上る足を止め、俺の顔を見た。
「私も気になってたんです。あの人気者の朝桐君のお兄さんが休学なのかを」
一歩ずつ、ゆっくりだが階段を上る足を進ませながら話をする。
あの親父のせいで女になってしまったこと。精神が不安定であること。近々学園に転向してくること。セッチャー君のことを知っている会長なのでそこらへんは驚きながら納得してくれた。
「俺は男なんで女性のことはよくわかりません。先輩さえよければですが紡、兄のフォローをしてくれませんか」
自分で言うのもなんだが、なるべく自分のできる範囲には色々なことを手伝ったり自分で進んで行動したりもする。
俺はいろいろ尊いらしい。
唯一とはいっても妙だが高校の生徒の女子の中で一番仲のいいと言っても過言ではない、はず。
女性には女性にしかわからないことがあるのだと思う。
それを会長は快く引き受けてくれた。
それから、少し話が続くようになった。
いつも声のアップダウンがあまりなく、疑問形が仲の良いよく話をする人にしか分からないレベル。ようは言葉に感情を乗せるのが下手。
それなのに内心は非常にテンパってたりする主人公。