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河川敷とか

 side 紡


「だ、だがそれをすると体の負担が大きく障害を患ってしまうかもしれないんだ」

 お父さんが何を言ったのか理解した瞬間、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくて、気づけば昔、隆哉よく遊んでいた河川敷の橋の下にいた。

 地面に座り込み、どれくらい時間がたったかは分からないが落ち着いて、今更ながら自分の服装の大胆さに気が付く。

 下着は履いておらず、服はTシャツに昔はいていたジーパンにベルトをしっかりとしたものだ。下着は履いてもずり落ちて意味がないから。

 重要なのは汗で服が体に張り付いていて自分で言うのは何だが、妙に色っぽさを出していた。

 正直、体が冷えていた。

 冷たい。

 昨日と同じくらいの気温のはずなのに少し寒く感じた。

 家帰って落ち着いて父さんと話をしよう。

 それで隆哉に慰めてもらおう。

 ―――あれ?なんで隆哉が出てくるんだろう。

 別に、隆哉は大切な家族で弟だし、相談にのってくれたりもする。

 小学校の時から俺よりよっぽど兄みたいだった。高校受験、とは名ばかりだけどあの学校から遠くに行きたかった俺を暖かく接してくれた。

 隆哉と一緒にいると落ち着くから、周囲にブラコンと称されるほど隆哉に甘えてたと思う。

 小学校の時位と比べてすごいポッチャリになちゃってるけど、あれが痩せたら格好いいんだろうな……

 学校では『デブでなければ普通に彼女が出来るほどの気の利いて、色々なスペックの高い男子。いや、たぶんこのまんまでも彼女できる』って言われるほどいい性格もしてるし。

 って、なんで隆哉のことばっかり考えてんの!?

 えと―――

「かーのじょ♪そんなにエッチな格好でどうしたの?」

 くすんだ失敗したような金髪にチャラチャラとした格好のした、それほど格好の良いわけでもない男2人組が話しかけてきた。

「家に帰る途中です」

「そんなこと言って♪誰かが拾ってくれるの待ってるんしょ。たとえば俺とかぁ?」

「テメェにその心配はねえよww」

「てめぇww」

 気持ちの悪い声を耳が拾う。

 こういう奴らが一番苦手だ。

 別の方向から全力で逃げようとするが裸足だと言うことを忘れていた。

 足が痛い、足の痛みにしゃがむと生きよいよく手を引っ張られて、

「なーに俺たちから逃げようとしちゃってる訳?これからお楽しみタイムなんだからさぁ、楽しまなけりゃ損だよ損」

 端の下のコンクリートの壁に生きよいよく叩きつけられる。

「そんなメしてっと綺麗な顔が台無しだぜぇ」

 頬を舐められる。

 嫌だ、俺は男だ、こんなの間違ってる、嫌だ、俺は女なんかじゃない、嫌だ、もうあんな目に、アイタクナイ―――

「助けて、隆哉!」

 この場にいない、大事な人の名前を呼んだ。

 恐怖で声がかすれた。不思議と隆哉の名前が口から出てたから。

「うっせーんだy「了解した」グハッ」

 その声と共に目の前の男の顔が歪んだ。

 そこには確かに、隆哉の声がした。

 けれどもその声の主はいつものその人ではなく、別人のような見た目をしていた。

「これ、羽織っとけ」

 大きいサイズのカーディガンが投げ渡される。

 隆哉、と思しき人物は男二人の睨み、

「俺の家族に手出したんだ。遠慮はしねえ」

 いつもみたいな淡々とした言い方だが、とても怖かった。

 



 side 隆哉


 紡の声が橋の下からした。

 端の上からなら探しやすいと思ったんだが裏目に出たようだ。

 高さ3mほどの端を飛び降りる。

 近所の武術の道場に通っててよかった。あの師範化け物みたいな人だったからある意味自分の体の頑丈性が確かめられていい機会だったのかもしれない。

 ゆっくりと紡に顔を近づける野郎の顔面を割と本気で殴った。

 親父殴った時の1.5割増しってくらいで。

 呆然としてる紡に持って来たカーディガンを投げる。

 よく見ると足を怪我してる。

 家帰ったら消毒したりしてやんないと、下手したら膿んだりするかもしれない。

 ともかく、俺はキレていた。

 野郎2人ともうちょっと早く来ようとしなかった自分に。

 軽く八つ当たりぐらいいいよな。

「俺の家族に手を出したんだ遠慮はしねえ」

「ひっ、俺らに手だしてタダじゃ済まねえぞ、無限我狼のメンバーが―――」

「昔潰したアレ、まだ残ってたんだ」

「っ!?ま、まさかお前、黒の死神!?」

「そんな風に呼ばれてたこともあったな。今ならおとなしく自首すれば大人しくしといてやる」

「すんませんしたー」

 土下座。誠意がこもってないので肩を蹴る。

 その後はちゃんとした謝罪を述べた。

 さっきの威勢はどこ行った。

 あきらかにチャラい方はまだ伸びてるし。

 二人をジャストな所に来た警察に引き渡し、紡に駆け寄る。

 警察に10分ぐらい捕まったが自分は無実だ発言が聞いた。

「遅くなって悪い、紡」

「……隆哉のバk――きゃっ」

 お姫様抱っこで持ち上げると、驚いたのか可愛い声を出す。

「足怪我してんだろ、家帰ってちゃんと綺麗にしないと」

「お姫様抱っこは辞めりょ!……あっ、」

 顔を赤くしながら抗議の声を上げる。思わず笑ってしまう。

「笑うな!」

 軽く無視。

 そのまま家へ強制連行。

 いったん下しておんぶに変更。

 家に向うにつれ目に涙がたまってきていた。

「やっぱり怒ってるのか?」

「いや、あのバカ親父への正しい対処法だが、足にけがしてんのはちょっと怒るかな。完全に綺麗と言い切れるところじゃないから下手したら危ないからな」

 やけに軽い兄を背負って家に帰った。



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