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この胸の奥に。

作者: 黒なな

見に来てくれて、ありがとうございます。

どうぞこれからも、よろしくお願いします。


桜が満開の春。

俺は桜場中学校に入学した。

この学校に入学する事を、どれだけ待ち望んだ事か。

桂木かつらぎよう

俺の初恋の相手だ。

まぁ、今もすげぇ好きなんだけどな。

陽が二年間過ごした校舎。

あと一年しか、陽はこの学校に居られない。

なんたって陽は、俺より二歳も年上だからだ。


「大地ーーー!入学おめでとっ」


愛らしい笑顔で駆け寄ってくる陽に俺は自分の感情を押さえつける事が精一杯だ。


「おう!さんきゅー。」

「てか、もう大地も中学生かぁー」


ちょっと膨れて俺を見つめる陽に、俺は言った。


「俺が中学生だと不服かよ?」

「別に、そんなんじゃないけどー。大地のランドセル姿がもう一回見たいなー」

「いつまでも、あんな物しょってられねーよ」


「冗談だよ」って無邪気に笑う陽の姿はきっと・・・

みんな惚れんだろうな。


「そうだ。ここからコンビニ近いし、アイス奢ったげようか?」

「マジ!?やーりぃっ!!」


コンビニでアイスを買って、食べながら家に帰った。


「じゃ、またね」

「・・・・・陽。」

「ん?」

「あのさ、一緒に登校しねえ?」

「・・・・いいよ!」

「さんきゅ。またな」

「ん。またね」








それから五ヶ月後









「あちぃーーー」

九月。

夏の暑さが名残でていて、ジリジリと俺達に嫌がらせをしているみたいだ。

隣を歩く陽は、「ほんと、暑いね」と笑っていた。

長いサラサラの黒髪を後ろで結び、暑さのせいか、陽の頬は紅く火照っていた。

そんな陽を俺は色っぽく見えた。

遠くでチャイムの音がする。

「ぅわ!!遅刻!!」

「じゃぁ、学校まで競争ねッ!!」

「ぜってー負けねーかんな!!」

「望む所!」

俺は別に足は遅くない。

むしろ小学校の時は学年一番だった。

だけど、俺は陽を抜かせない。

別に手加減してる訳じゃねぇけど・・・

もうすぐ学校だ。








そして俺はあってなく・・・

負けた。










俺と陽は息を切らしながらもお互い顔をあわせて笑った。

陽は片手でピースをした。

「元陸上部だからね」

「馬ー鹿。次は負けねぇよ」

「言ってくれるじゃん」

この時知らなかった。

これから先、何が起こるか。








陽の態度がおかしくなり始めてから一週間。

陽は何故かよそよそしくなっていた。

前までは仲良く笑いあってたのに。

なんでだ?



そして俺はみてしまったんだ。

陽が放課後、男とキスしてるところ。


いつも陽は放課後俺を教室に迎えに来てくれてた。

可愛い笑顔とともに。

だけど今日はいつまで待っても陽は来なくて。

俺は陽を迎えにいったんだ。

そしたら・・・


俺にとって最悪の瞬間だった。

目の前は真っ暗だった。

世界の終わりを感じた。

おおげさかも知れないが、あの時の俺にはそれくらい重みがあったんだ。


空が紅くそまりだした夕方。

俺は一人、通学路をモタモタと歩いていた。

俺の気持ちはもう。

陽には伝えれない。

幼稚園の時からずっと好きだった。

この気持ちをすぐに忘れれる訳がねぇんだ。

あんなにも・・・

こんなにも好きなんだから。









時は早く流れ、もう時期クリスマス・イブだ。

俺はさみしく一人でクリスマスを送るんだ。

もうそれしか・・・

ないんだから。








クリスマス当日









「メリー・クリスマース!!」

俺は唖然とした。

なんでここに居るんだ?

陽。

「何ボ~っとしてんの!寒いんだから早く家いれてよー」

悪戯っぽく笑う陽を家に招いた。

「・・・・・彼氏と・・・」

「ん?何かいったー??」

「・・・・・・彼氏と過ごすんじゃ・・・ねぇのかよ?」

一瞬、いつも耐えなかった陽の笑顔が消えた。

「なんだ。大地、しってたんだ?」

そしてまた笑う陽。

だけど俺にはわかった。

苦笑いしてる事に。

「いーのいーの。ほら、大地。ケーキ食べよっ」

「・・・・・うん」


楽しい時間はあっと言う間に過ぎた。

「楽しかったねー。」

「そうだな。」

「・・・・じゃぁね?」

・・・・・・なんだよ。その顔。

なんでそんな寂しい顔してんだ?

なんかもう、二度と会えないみたいな。

悲しい笑顔。

「・・・・また、絶対遊びにこいよ。絶対だからな。」

陽は眉をひそめ、涙目で無理に笑っているように見えた。

「約束!!・・・指きりしようぜ?」

「・・・・・・・・・・・・・約束・・・・・・・・・ね」

陽の声はいつもの元気をなくしていた。

弱気で小さな声。

俺はそんな陽が家に入ってから俺も家に入った。












冬休みが終わった。











ピンポーン。

俺は陽を呼びに、陽の家のインタンフォンを鳴らした。

何回鳴らしても、陽の母親さえ返事をしない。

俺は陽の家の前でしゃがみこんだ。

「・・・・・・・学校遅刻するじゃねぇかよ」

そんな俺を見た、陽の母親と仲良かったおばさんが俺に話しかけてきた。

「そんな所でなにしてるの?」

「・・・・・陽を待ってるんです」

「・・・・・・・あなた、もしかして知らないの?」

「え?」










俺は走っていた。

行き先は・・・・空港。








“陽ちゃんね、高校のお受験、東京にしたらしいの。大阪からだいぶ距離あるから、今日の朝方に空港に向かったわよ?今ならまだ間に合うかもしれないわね”









「・・・・・・・・・・・くそっ!!・・・・」

なんで陽は

そんな大事な事言ってくれなかったんだよ!

俺達、ずっと仲良かったじゃねぇか!

なんでなんだよ!!

なんで東京に受験しにいくんだよ!

なんで別れもなく引っ越すんだよ!

俺だけだったのかよ。

一緒に遊んだあの頃から・・・

俺にとって陽はもう

傍にいないといけない存在なのによ!!

「・・・・・・・・陽・・・・・」

まだ俺達・・・・

競争してねぇぞ。

次はゼッテー勝つって俺・・・・

言ったじゃねぇかよ。

競争・・・してくれんじゃなかったのかよ。

クリスマスの時した約束だって守れてねぇじゃんかよ。

また俺ん家来るって約束しただろ?

なんで。

俺から離れていくんだ。

なんで・・・・・・




その瞬間

大地の上を飛行機は飛んでいった。







それから約一年。

俺は中学三年。

まだこの学校には、陽が居た頃の思い出が“忘れないで”っていってるかのように残ってる。

もちろん、俺は絶対陽との思い出を忘れない。

俺は今年受験だ。

高校生になったら、ひとり暮らしをしようと思ってる。

場所は・・・・・





東京









俺は東京に行って、陽に会ったら

いままでいえなかった気持ちをちゃんと伝える。






あの時伝えそこねて後悔した分も。




だからそれまで、この胸の奥に。






どうでしたか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 男性視点がとても爽やかで、まさに青春でした。 異性を書くのは難しいですが、綺麗に纏まっていて、素敵です。 [一言] 早速お邪魔致しました。 爽やかなお話、ありがとうございます。 連載の…
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