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3つの言葉

3つの言葉「葛藤と決断」@もり

作者: もり
掲載日:2011/08/31


「本気ですか!?」


「ああ」


「しかし……今、この場でそんな物を使用したら罪のない者達の命まで奪ってしまいます!!」


 団長の決断に、副団長の赤井は異議を唱えた。

 机上で握り締めるその手は震えている。

 だが、団長はあくまでも冷静な態度を崩すことなく赤井を諭すように続けた。


「やつらを掃討するには最早あれしか手段は残っていないのだ。あの子達には出来る限り被害が及ばないように処置を施して……耐えてもらうしかないだろう」


「時間を……時間を下さい!! あの子達を避難させます!!」


「……いつまで待てば良い?」


「六時間下さい。それだけあれば――」


「駄目!!」


 団で紅一点の原田が悲鳴じみた声を上げて、勢いよく立ち上がった。


「あと二時間もすれば日没です!! やつらは夜にこそ行動するんですから、身を潜めている今こそ一網打尽にするチャンスですよ!? その機会を逃すんですか!?」


「たった二時間で避難させるなんて無理だ!! 俺にはあの子達を見殺しにする事など出来ない!!」


「ひょっとしたら被害が及ぶ事にはならないかも知れないじゃないですか!? 団長のおっしゃる通り、出来る限りの応急処置を――」


「そんな不確かな物にあの子達の命を賭けられるか!!」


「でも!! 奴らがやって来るのはあの子達のせいでもあるんですから!!」


「何を――!?」


「二人とも落ち着け!!」


 団長の一喝に、二人はすぐに口を閉ざした。

 そんな二人を団長は交互に見て、自身も落ち付けるようにゆっくりと息を吐き出す。


「今は一刻の猶予もないのだ。ここで論じ合うよりも行動に移すべきだろう? 我々が全力でかかれば出来ない事はないはずだ。わかったな?」


「……はい」


「原田もそれでいいな?」


「もちろんです。私だって本当はあの子達を守りたいんです」


 力強く断固とした団長の言葉に赤井も原田も素直に頷いた。


「よし! じゃあ、決まりだ。今からあの子達を避難させるために行動を開始する。赤井、お前が陣頭指揮を取れ!」


「了解しました」


 そこから頭を切り替えた赤井の行動は早かった。

 そして普段から副団長というポジションをこなしているだけあって、的確な判断と指示で団員達を動かし、信じられない事になんとか日没までに全てを避難させる事ができたのだった。




「赤井さん、先ほどは生意気な事を言って申し訳ありませんでした」


 そう言って頭を下げた原田に赤井は苦笑する。


「いや、頭を下げる必要はない。こうやってやれば出来る事を端から諦めていた俺だって間違っていたんだ。その事に気付かせてくれた団長はやっぱりすごいよ」


「ええ」


 二人は他の団員と話している団長へと尊敬の眼差しを向けた。

 そこにガヤガヤと他の一団が現れた。


「おお~、応援団。どうしたんだ? 大量の水槽だな~、こりゃ。」


「ああ、ラグビー部の……。いや、部室で飼い出したら次から次へと増えてな……すまないが部屋の換気が完全に出来るまで二日程廊下(ここ)にこいつら置かせてくれ。」


「そりゃ、別にかまわんがどうした?」


「今、部室でバル○ン焚いてんだよ」


「なんだ、また出たのか? このクラブハウスも古いからなあ、いくら頑張っても無駄だろうに。俺らはあいつらと仲良く付き合ってるぜ? 原田ちゃんもいい加減に諦めたら?」


「嫌です!!」


「一室だけ追い出しても意味ないのに……」


「私は絶対に諦めません!! 最後まで戦いますから!!」


 笑いながら去って行くラグビー部の部長に向かって原田は叫んだ。

 それを笑いながら見ていた団長が、その肩を宥めるように叩く。


「まあ、しょうがないな。俺達はお前に付き合うよ。――じゃあ、後の指揮はお前が取ってくれ」


「はい!!」


 嬉しそうに返事をした原田は団員達に向き直った。


「じゃあ、私と赤井さんはこれからホームセンターに買い出しに行ってくるので、皆さんは練習に戻って下さい。明日、私が朝早めに来て換気しておきますから、本格的な掃除は昼から開始します。午後からの講義がない人達は出来るだけ参加して下さい。今日は以上です。」


「わかった」


 頷いた団長は他の団員達といつもの練習場所へと向かった。

 それを見送った赤井が預かった部費の入った封筒をポケットへとねじ込みながら原田に訊く。


「ホームセンターで何買うんだ?」


「ええっと……ホウ酸団子と細々とした掃除用具と密閉容器です」


「密閉容器?」


「ええ、グッピーのエサを入れる超強力な密閉容器です。奴らはどんなに掃除してもグッピーのエサ目当てに現れるんですから! 赤井さんもエサをやる時にこぼしたりしないで下さいね!」


「あ、ああ……」


 原田の咎めるようなきつい口調に思わず後ずさりながら答えた赤井だった。

 元はと言えば、自宅で繁殖しすぎたグッピーを応援団の部室に持ち込んだのは赤井だったので仕方がない。

 それから二人は夕陽が眩しく照らし出すグラウンドを背に、近所のホームセンターへと向かった。

 こうして、妄想大学・応援団部のG掃討作戦は明日へと続くのであった。




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