第六幕:人心の中に住む悪魔
君は心の中に悪魔を住まわせる恐ろしさを知らない。
バカな考えを吹き込むそれを、
幼い君の前に現れたらーー君は抵抗できるのか?
やあ、君。心の中に悪魔を持った時、それを身近な人は感じられるのだろうか?言葉の中身すら違和感があるかもしれない。
知らないうちに、
君も変わっているのでは?
第五幕では、ジキル博士は、心の中に完全な悪の存在「ハイド」を作り出した。その存在はーー
まだ、想像の中のものだったがーー
医学部の学生のソフィアは、ジキル博士の研究室のある建物の中に入ってきた時、違う場所に来たのかと、ためらった。
彼女は帰ろうとしたが、
外は通り雨に見舞われていた。
彼女は研究室へと歩いた。
違和感は大きくなった。
部屋の扉の前で、彼女は帰りたいと思ってた。何度もドアノブを触らずに、見つめていた。
だけど、物語は先へ進むんだ。
「ーージキル博士?」
彼女は、部屋の奥で書物をしているジキル博士を心配そうに声をかけた。
返事はない。
「ジキル......博士?」
再び彼女は声をかけた。
得体の知れない恐怖を彼女は感じた。
筆を動かしていた彼の腕が突然止まった。
「君かい、ソフィ。今、考えごとをしてたんだ。ーー何かな?」と彼は振り返らずに言った。
「ーーその、あの、お邪魔でしたか?
すみません、帰ります!」と彼女は部屋の外へ出ようとした。
「帰るな!」と冷たい命令が飛んだ。
彼女はビクッと身体を反応させた。
「君にーー、新しい研究テーマを見せようと思ってねーーこっちに来るんだ」と彼女に命令を続けた。
彼女は諦めたように、
ジキル博士の側によった。
彼の横に来て、彼女は後悔した。
優しいハンサムな顔が別ものに、彼女には見えたんだ。
「さあ、見てくれ」と、ジキル博士は彼女をとなりに座らせて、
腰に無遠慮に手を当てた。
彼女の体は強張り、尊敬していた博士を見た。
彼女は下唇を噛むと、言われた通りに紙を見た。
そこには通常の人体に変化を与える薬物のリストが書き込まれていた。
“人体の強制的な変異”
彼女はそれに目を通して、彼の胸を突き飛ばした。ジキル博士はよろけた。
「博士!これは、ーーばかげてる!こんなの、まともな人がやるものじゃない!」そして、彼女はリストを指さした。
「バケモノを作るつもりですか
ーーこれは、これは神を軽んじてる」
彼女の拒絶に、ジキル博士は唸った。
「なぜ?これは人類貢献に欠かせない研究だ。人助けだーー君は誤解しているーー犯罪者を使って試すんだーー」彼の声は震えていた。
「人体の強制的な変異がですか?
このテーマを取り上げた時点で、
私はあなたの正気を疑ってますーー」
ジキル博士は怒鳴った。
「どんなに頭が良くても、女は女だ!ボクがバカだった!消えろ!うせろ!」
これが彼の破滅だ。
彼女は、彼を愛していた。
少なくともボクには、そう見えた。
彼女は、ジキル博士の変化がわかったんだ。
だけど、彼女は彼を変えようとは思わなかった。
そのまま、走り去った。
ーー愛は失われた。
(こうして、第六幕は愛の終わりにより幕を閉じる)
愛を失ったジキル博士。
この事が彼を破滅の道へと突き動かす。




