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4 離宮

読んでいただきありがとうございます

 リリアの離宮は王宮から馬車で三十分ほどの所にあった。

真っ白な宮殿は内装も白と金色で雅やかに彩られていた。


馬車が着くと屋敷の私用人達がずらっと並んで出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、お妃様。侯爵家御一同様よくおいでくださいました」

「まだその呼び方は慣れないわ」

リリアは目眩を覚えた。

応接室で家族でお茶を飲んで一息ついた後、屋敷を案内するという侍従長について行った。


「陛下のご指示でお妃様には一番陽当たりの良い広い部屋を用意するようにとのことでしたので眺めの良いこちらにさせていただきました」


窓の外は色とりどりの花を咲かせている花壇が綺麗に見える場所だった。

「まあ、景色が良いのね」

「腕のいい庭師がいますので一年中お楽しみいただけるかと思います」

「一年中ねえ。あなた陛下から何かお聞きになっていて?」

「いえ、特には何もお聞きしていませんが、妃教育は三日後から始まるそうでございます。陛下を教えられた一流の先生方だと伺っております」


応接室で待っていた心配そうな家族の元へ帰ると、兄が防音魔法を張ってくれた。

「綺麗なお部屋だったわ。でもここに来る必要があったのかしらって思うの。妃教育は通っても出来るのよ。全員侯爵家の使用人で固めたいくらい」

「ああ、王妃様が他の離宮に移られてからでも良かったとは思うが、王命では逆らえない。上手くやっておくれ」

「わかりましたわ、お父様。こうなったら離宮の人間を懐柔してみせますわ」

「それでこそリリアだ。けれど用心にこしたことはないから気を付けるんだよ。密かに動く者も付けておくから何かあったら合図を送りなさい。ただ声をかけるだけで目の前に降りてくる。戦いの腕も確かだ」


「気が抜けないわね、貴方」

「こんなことならさっさと婚約者を決めておけば良かった。恋愛相手に学院で出会うかもしれないとのんびりし過ぎた。カーチスも早目に決めたほうが良いのかもしれない。誰かいるのか?」

「いませんよ、政略でいいです。妹が意に沿わぬ結婚をするんです。私だけ幸せになりたくありません」

「お兄様だけでも幸せになっていただきたいわ、お願いよ」

「取り敢えずまだする気はないから心配しなくていい。私達はリリアの味方だ。なにがあってもね」

「ありがとう、頼もしいわ」

「マリーやクラウド達がいるんだ。一人ではないし会うことも出来る」

「リリアこれはあなたのお祖母様からいただいたエメラルドの指輪よ。これから陛下にいただくかもしれないけどそれまでは着けていて」

「お母様にいただいたのですから大切にしますわ。純度がとても高いですわね、輝きが違います。髪の色と合っていてとても素敵ですわ」



「リリア、兄様は通信魔具を造ろうと思う。ピアス型で会話ができるようなものを目指そうと思うんだ。それに水晶で録画ができるようなものも造りたいと思っている」

「素敵ですわ、どんなことがあっても希望を失わずにいれそうです」


リリアは胸がじんわり温かくなるのを感じて涙が零れそうだった。こんなに愛されているのだから私は私のやり方で家族を守ろうと決意した。



国王陛下の訪れはそれから一週間後だった。マリーが

「やっと陛下が夕食をご一緒にと言ってこられました」

「聞かれたら不敬になるわよ。お忙しいのでしょう。わかりましたとお返事して」

「大量のドレスと靴にパリュールも一緒でございます」

「そこから選んでちょうだい、任せるわ」

マリーとエリーがドレス選びをしている間に宮挺から派遣された侍女がリリアをお風呂に入れて頭の先から爪先まで磨き上げた。


薄いブルーのドレスを着せられブルーダイヤとおそろいのイヤリングを着けられたリリアは、薄く化粧をされ食堂に案内された。


陛下が輝くばかりの存在感を放って座っていた。

「お待たせいたしました」

「待ってはいないよ。水の妖精のようで美しいな、ドレスが良く似合っている」

「沢山のドレスと宝石をありがとうございます」

「妃を着飾させるるのがこんなに楽しいと思わなかった。私のために色々着飾って欲しい」

「陛下のご要望とあれば」

「硬いな、二度目だから仕方がないか。ヨハネスだ。正式にはヨハネス・アイル・メッサニアだ。覚えていて欲しい」

「かしこまりました」

「もう書類にはサインが終わっているから貴女もリリア・エリザベス・メッセニアだな。食事が終わったらお茶を飲みながら少し話をしよう」



 エスコートされて戻ってきたリリアの部屋でヨハネスはソファーにゆったりと腰を降ろした。

リリアも真向かい席に座ったがヨハネスに隣に来るように言われてしまった。

すぐに侍女が香りのいい紅茶を淹れて部屋を出ていった。マリーとエリーが部屋の隅に立っていた。クラウドとスタンリーは扉の外に立っている。


リリアのピンク色の髪を弄びながら

「少しは慣れたかな?マナーも語学も問題がないと教師から聞いている。ダンスは踊れるだろうし、王家の歴史についてくらいかな」

「あ、あの、陛下のことは何も知らないのでお聞きしたいのですが。好きな料理ですとかお酒は何が好みですとか花は何が好きだとか女性のタイプは・・・」

「可愛いな。料理は好き嫌いはないよ。お酒も付き合いがあるから何でも飲むけどあまり好きではないんだ。嗜む程度だ。女性は貴女のような人が好きだよ。自分より家族のことを考えているだろう。私もその中に入れて欲しいと思っている」

「善処します。あっ、もちろんでございます」

「ははは、正直でいいよ。今夜はここで泊まっていこう。いろいろな意味で牽制になる」

(初夜なの?これから?急すぎない。心の準備がというか何をするのかわからない、母様どうしたら良いの)

「今日は抱かないから安心して。偽装はするけどね」



生まれて初めて男性と同衾することになったリリアは固まってしまった。

マリーが身体を温めるハーブティーを二人の前に置いて出て行った。



緊張して眠れないと思っていたのに陛下の声は落ち着き、身体が暖かったのを覚えていた。意識があったのはそこまでだった。

気がついたのは翌朝で陛下は既にいなかった。

証拠となるシーツを替えてにこにこしているマリーがカーテンを開けに来ていた。


「陛下は?」

「お忙しいそうで名残惜しそうに帰っていかれました。湯浴みが先がよろしいですね。出られたらお食事をお持ちしますね」

「ええ、お願い。予定通りにいったのかしら」

「勿論でございます、お嬢様」


リリアは満足そうに笑った。



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