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13  溺愛

 調査したところリチャードの商会は大陸に本拠地を置く小さなものだったがちゃんとしていた。貴族や裕福な平民が経営する商店に品物を降ろし、その貴重さで信用を得ていたのだ。


薬は人の手で丁寧に作っていた。これを値段別にするとなると更に人手がいる。

設備も増やさなくてはならない。アルフレッド、カーチス、リアとクラウド、クリス、スタンリーの六人で話し合ったところ、まずは高い薬を国外の富裕層に売るところから始めることになった。


そこで利益を上げ名を広めながら、なかなか薬の買えない人たちにも買えるような値段の薬を作っていこうということに決まった。


こうしてリチャードの商会との取引は成立し、二つの商会は後に大きな飛躍を遂げることになった。




ーーーーーーーーーー





 春のよく晴れた日にリアとクラウドの結婚式が執り行われた。贅を尽くした真っ白なウエディングドレスの花嫁は幸せに輝いていた。クラウドから贈られたエメラルドのネックレス、イヤリングと指輪も花嫁を彩っていた。


クラウドは真っ白なタキシードにリアの髪の色の金色の糸で刺繍が襟と袖口に刺してあり、凛々しさが際立っていた。




夢が叶った新郎はガチガチになっていたが、知り合いばかりの式で漸く実感が伴ってきたのか、真っ赤になりながら花嫁を見つめていた。


「とても綺麗です。女神が舞い降りてきたようです」

「クラウドもとても素敵よ。こんな結婚式が挙げられるなんて思ってもいなかったわ」


教会の中はあらゆるところに花が飾られ、厳かな誓いのあと両親や兄、使用人達が皆笑顔で祝福してくれた。


その後のパーティーではシェフ達が腕を振るいご馳走とお菓子をこれでもかというほどテーブルに並べ、お祝いの酒も用意された。

以前の出来事を知っている家族は勿論、使用人も涙を浮かべながら飲んだり食べたりしてリア達の幸せを祈った。


夜更まで祝宴は続いた。

途中で抜け出したリアはマリーとエリーに身体を磨かれ薄い夜着を着せられた。


「こちらの国に来てから良いことばかりですね」

「皆に守られてばかりだわ、ありがとう」

「何を仰るのですか、守っていただいているのは私共でございます。どれだけ感謝してもしきれません」

「ノブレス・オブリージュよ、当然のことだわ。貴族ではなくなっても上に立つ者としてするべきことだわ」

「他のお屋敷では使用人など、人として扱っていただけない所もあると聞いております。話しすぎました。さあそろそろクラウド様が来られます。失礼致しますね」


一人寝室に残されたリアはこれからのことを考えていた。誰より大切に想ってくれる人が旦那様になるのね、驕ることなくクラウドを大切にして寄り添いたい。


扉をノックしてクラウドが入って来た。急いでシャワーを浴びたらしく髪が半乾きだった。シルクの白の夜着も急いだらしくボタンが二つほど留まっていなかった。


「こっちに来て、そんなに急がなくても良かったのに。髪がまだ濡れているわ。ボタンも留まってないし。あわてんぼさんね。乾かしてあげるからソファーに座って」


「早くリアの顔が見たくて焦ってしまった。まだ夢の中にいるようなんだ」

リアは風魔法を使いクラウドの髪をふわっと乾かした。

「いつも思うけど凄いな、ありがとう気持ちがいいよ。愛してる」


クラウドの瞳が熱を持ちリアは逞しい腕に抱きしめられた。軽々とお姫様抱っこでベッドに運ばれた。

柔らかな物がリアの唇に重なった。最初は遠慮がちに重なったキスは角度を変え何度も繰り返されて、次第に深くなっていった。

「触れても良い?」

恥ずかしくて声を出せないリアはコクンと頷いた。クラウドの剣ダコだらけの手のひらがゆっくりとリアの全身を撫でていった。

「とても綺麗だ、すべすべしてる。リアってこんなに甘いんだね。可愛い」

全身に羽のようなキスをしながらクラウドが囁いた。

「愛してるよ」

「私もよ・・・」

二人の初めての夜はこうして更けていった。






結婚後は同じ敷地に新しく建てた屋敷に二人で暮らすことになっていた。

マリーはそのまま付いてきてくれ、ロブの弟子になったマイクがシェフとして腕を振るってくれることになった。

こちらの国で雇った使用人も含めれば二十人ほどが働くことになった。



結婚してから更に甘くなったクラウドは毎日頬や額にキスをするようになった。

階段を降りるときや食堂に行く時までエスコートを欠かさないのだ。


庭でお茶をしている時の幸せそうな奥様の顔と、それを見ている旦那様の蕩けるような目が何ともいえず周りに甘いムードを撒き散らしていた。多分御本人たちは気付いていないだろうなと使用人達は生暖かい目で見ていた。もちろん存在を消しながら。


ぼろぼろで拾われてきたときから色々苦労をして、リア様のお側に立った若者の出世に、古くからいる者は涙を堪えながら、良くやったと心から拍手を送っていたのだった。



この後二人には男の子と女の子が一人ずつ生まれ、バロン家はさらに賑やかになっていった。


二人の人生はまだ始まったばかりだ。

これからも色々な困難が待ち受けているのかもしれない。けれどそれを乗り越える愛情があるとリアもクラウドも信じていた。

読んでいただき有難うございました。

リチャードには国に難病の妹がいて、その為に世界中を薬を探して回っていました。バロン家にその薬を作って貰うように頼んでいます。珍しいものを集めて売るというのはその為のお金を稼ぐためでした。

リアがチームで頑張って発明する日も近いと思います。

それでは皆様またお会いできますことを願っています。

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