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12 デート

 元通りの体調を取り戻したクラウドは、指環を買うためにリアを街の宝飾店に誘った。

都市は勢いがあり海外から移転してきた商会も軒を並べていた。

「新しい建物が直ぐに増えてあっという間に街が変わっていくわね」

「そうですね、色々な国から様々な店が出店してますね。商人はチャンスを見逃しませんね。さあそこが目的の店です」


重厚な造りの宝飾店はクラウドにが予約を入れてあったのだろう、奥の特別室に案内された。

ビロードの箱に並べられていたのはエメラルド、ペリドット、グリーントルマリンが形や大きさを変えて並べてあった。


「この中から選ぶのね、そうねクラウドの瞳の色にそっくりなこのエメラルドにするわ。でもお値段が凄そうよ」

「大丈夫です、今までの給金は使っていませんのでこれを買っても余ります」

「それなら私もクラウドの物を選びたいわ。ゴールドの指輪はどうかしら」

「嬉しいです」

普段表情の動かないクラウドが口元を手で隠していた。それを見たリアはキュンとしてしまった。(クラウドって可愛いのね、知らなかった)



出来上がったら連絡をして貰うように頼んで二人は店を出ようとした。

ちょうど入ってくる客と入れ違いに向こうが声をかけてきた。


「以前船で会ったお嬢さんじゃないですか、こんにちは」

「人違いではありませんか」

「忘れられたんですね、残念です。でも隣にいる護衛君は覚えているようだ」

「彼は婚約者です。失礼ですわ」

「それはお許しください、人をみる目はあるはずなのですが。ここには珍しい宝石を降ろしていましてね、またお会いするかもしれませんね。私はリチャードと申します」

「クラウドとリアですわ。ではごきげんよう」


クラウドが腰を抱き店の外へでた。急な接近にリアは胸がどきどきしてしまった。


「髪の色も長さも違うのに覚えているなんて嫌だわ」

「商人は人を見るのが仕事ですから仕方がないかもしれませんが、リア様を見せたくなかった」

「えっ」

「減ります。あの時船で殺っておけば良かった」

「発想が危なくなっているわよ。さあ次は何処へ連れて行ってくれるの」

「美味しいレストランがあるそうなのでそこへ行きましょう。お手をどうぞ、

お嬢様」

「もうお嬢様はやめて、リアと呼んで。婚約者なのだから」

「リア様、私にとってはこうして隣に立てることが夢のような出来ごとなのです」

「ありがとう、私は大切に思ってくれる人が沢山いて幸せね」

「これから貴女を一番大切に想っているのは私だと知っていただきます。リア様の為なら命も惜しくありません。覚悟してくださいね」

「クラウドの気持ちは分かっているつもりだわ」

「たぶん分かってはいないかと。出会ってから十三年です。想いに差があるのは仕方がありません。徐々に分かっていただきます」

「お手柔らかにね」


食事を終え薔薇で有名な公園に散歩に来た。赤やピンク、白に黄色と色とりどり

の薔薇が蔓に絡ませてあったりアーチになっていたりした。木のように大きくなり支えをしてあるものもあった。香りのいい品種からほのかに漂ってくる芳香は二人を幸せな気持ちにさせてくれた。



花売り場でクラウドは真っ赤な薔薇の花束を買いリアに捧げた。

「ありがとう、嬉しいわ」

「よくお似合いです。リア様には負けそうですが」

「そんな言い方何処で覚えたの」

「心から思っているからです。もっと甘いセリフが言えるように頑張りますね」


リアは顔面偏差値の高い自分の婚約者にクラッときてしまいそうになった。

「私以外に囁かないでね」

「リア様以外は目に入りません。女性はリア様かそれ以外でしかありえません」


指の先に口づけを落とされてリアの胸はドクンとしてしまった。

婚約してからクラウドの態度が甘くなった。その度に翻弄されているリアだった。



結婚式は一年後となった。リア以外は今度こそ盛大なものにしようと考えていた。贅を尽くした真っ白なウエディングドレスを着せて祝わってやりたい、それが家族の総意だった。

祖国での屈辱を忘れたことはなかった。















 リチャードは総合商会の代表だった。今はまだ少人数で活動しているがいずれ大きな組織にしようと夢を持っていた。その一つとしてバロン家の優秀な薬を世界中で売りたいと考えていたのだ。

リア達が飛ぶ鳥を落とす勢いの製薬商会のお嬢様と婚約者だと気がついた時に何としても知り合いになりたいと考えたがガードがとても固かった。

身分を隠すのは面倒事に巻き込まれないようにするためだろうとも思ったが、まさか滅亡した国の亡くなったはずのお妃様だとは想像もつかなかった。





そこでバロン家当主のアルフレッドに商談を持ちかけることにした。

「お会いできて光栄です、バロン様。私は世界中を回って素晴らしい物を集め売るという総合商会の代表のリチャード・サボンと申します」

「アルフレッド・バロンです。さてどの様な用件でいらっしゃったのでしょうか」

「バロン家の薬はとても優秀です。今までいろいろな国を回りましたがここまで品質の良いものはありませんでした。値段も良心的です。是非我が商会と取引していただけないでしょうか?」

「今のままでも十分な利益を出しているのです、これ以上儲けようとは思いませんね」

「この国でもそうですが薬が買えない低所得の人々がいるのです。どうかその人々にも薬が買えるようにお力添えを願えませんでしょうか?」

「薄利多売をせよと言われるのですか?それでは品質が落ちます」

「値段によって効果が違っても良いと思われませんか?高い薬に手が出せない人は安い薬でも効くかもしれません。なにせ薬を飲んだ事もない人はまだ多いのですから。それに粗悪品が出ればそれで命を落とす人も出るかもしれないのです」

「面白い考え方をされますな。暫く考えさせてください」

「良い答えをお待ちしています、では失礼致します」


一見穏やかそうな青年は礼儀正しく去っていった。

アルフレッドはクリフに命じリチャードを徹底的に調査することを命じた。





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