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第1章「静かな兆し」第6話~兆しの報告~

皓塔の奥。

報告のために集められた四人の姿があった。

塔に差し込む光の中、

アウラは静かにミコルを見つめている。

 

「……根の奥はどうだった。」

 

ミコルは軽く一礼し、

淡々と口を開いた。

「予想していた以上に、

 硬化の範囲は広がっていました。

 このままでは巡りが弱まり、

 根の奥の流れが滞る可能性があります。

 観察は、引き続き必要です。」

 

アウラの視線がわずかに揺れる。

「……原因は?」

 

ミコルは息をひとつ置いた。

「“フォルミナ”と名乗る存在に出会いました。」

 

空気がぴんと張る。

ジルヴァが横で目を細めた。

「何者だ。」

 

ミコルは首を振った。

「わかりません。

 問いかけには曖昧な答えしか返さず、

 形も定かではなかった。」

 

シアの声が低く落ちる。

「……根の硬化はそいつの仕業か。」

 

「おそらく。」

ミコルはゆるく肩をすくめた後、

リュミエールへ視線を向けた。

「ただ、これについては

 リュミエールが何かを感じ取ったようです。

 報告を。」

 

リュミエールは一歩前に出ると、

少しだけ息を整えた。

 

「……根の奥で……

 コアセルに異常が起きている気がしました。」

 

静寂の中、アウラの瞳が小さく見開かれる。

「……コアセルに……異常?」

 

周囲の空気がわずかに重く沈んだ。

 

「それは……王国の危機なのでは……。」

シアが低くつぶやく。

 

アウラはそっと目を閉じた。

「……様子を見ましょう。

 巡りの観察は怠らぬように。

 ……ご苦労であった。」

 

塔を出ると、空気は少しだけ暖かかった。

リュミエールは息を吐いて肩を落とす。

「……あんた、案外やるじゃん。特別な能力…待ってたんだね。」

隣でトウカが、

何気なく背中を小突く。

 

「特別だなんて……

 能力というほどのものでもないよ。

 なんとなくそうかなって思っただけだし……。」

 

「それで十分だって。胸張っときな。」

トウカは笑って、

リュミエールの肩をぽんと叩いた。


芽生えかけた小さな光が、

彼の胸の奥で、

ゆらりと揺れていた。


第1章完了です!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

小さな命の揺らぎの中に、何かひとつでも感じるものがあれば、とても嬉しいです。


ご感想やご意見、そしてブックマークなどで応援していただけると、

今後の執筆の大きな励みになります。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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