第3章 「揺らぐ共生」第4話~絆 土に眠る~
暗く湿った地中を抜け、地表の明るさがじわりと感じられてきた。
ミコル、リュミエール、トウカの三人は、帰路につく道すがら、土の柔らかさと菌根菌との繋がりを確かめるように歩いていた。
「……でもさ、結局、王国が得られるのはリンだけなんでしょ?」
トウカがぽつりと口を開く。
「私たちが必死に作り上げた備蓄を譲って、代わりに得るのがそれだけって、ちょっと不公平じゃない?」
「そう思うのも無理はないですね」
ミコルが立ち止まり、静かに振り返る。
「けれど、彼らの本当の価値は、目に見える交換物だけじゃないんです」
「目に見えない?」
リュミエールが首をかしげると、ミコルは土の上にしゃがみ込み、手でゆっくりと地面をなぞった。
その姿はどこか教師を彷彿とさせる。
「菌根菌たちはね、土壌の中で王国同士を繋ぐネットワークを作っているんです。まるで、土の中に張り巡らされた見えない道のように。ある王国で得た情報や資源が、別の王国へと伝えられる。その網の目こそが『菌根ネットワーク』。通称“ウッドワイドウェブ”と呼ばれるものです」
「王国同士を、土の下で……?」
トウカが目を見開く。
「例えば、乾燥の気配が迫っているとき。遠く離れた友好国がすでにその被害を受けていれば、菌根菌を通じてその情報が事前に伝えられます。だからこそ、いざというとき、対策の初動が違う。連携して抗う準備ができる」
ミコルの声には確かな熱があった。
「それに、菌根菌が繋ぐネットワークには優先順位もあるんです。最も信頼を寄せ、絆を結んだ王国……そうした王国には、最初に情報が届く。これは、ただの情報伝達手段ではなく、信頼に根ざしたネットワークなんです」
リュミエールはその話に、まっすぐな瞳で頷いた。
「すごい……複数の王国たちが土の下で手を取り合い、まるで一つの大きな王国を形成しているみたいですね」
トウカは鼻を鳴らしながらも、どこか納得したように微笑んだ。
「じゃあ、単純な損得で語っちゃだめってことか。むしろ、彼らの存在が、王国を守る盾にもなるわけね」
「ええ。王国の未来のために、彼らとの関係は、今以上に大切になってくるはずです」
ミコルの言葉に、三人の足取りが自然と揃った。
王国同士をつなぐ見えない絆。
その存在の重さを、彼らは確かに心に刻んでいた。
森は一つの生命体。これは結構伝えたい内容でした。すごいぞ菌根菌!となってくれれば幸いです。
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