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対話
これは、ある青年の、闇の中にしまいこんだ記憶を作者の私が書き記したものである。
椅子が二脚あるだけの、ほかは何も無い部屋。
まるで警察署の取調室のような部屋である。
「聞かせてもらえるかな、君の記憶を本にしたい」
私は、目の前の青年に向かって、話した。
青年は、口を開こうとしない。
だが、私はただ黙って待った。
静寂はいつまで続いただろうか。
体感で五分ほど経った頃、青年は耐えきれなくなったのか、少しずつ口を開く。
「……あ」
これから話し始めるぞ、という合図のような青年の一言目。
青年は俯き、私の目を見ていない。
そして自らの闇を吐き出していく。
私は静かに、青年の話を聞いた。