Episode5「恐怖の糸」
西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。
だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…
地球圏連合国首都メトロポリスにあるロックフェルド財団本部、そこを訪れた地球圏連合国最高評議会副議長デスター・ホワイトが本部の最上階で財団の会長と会談を行っていた。
「例の少年、随分なご活躍ですな。デーモンビースト暴走事件の解決に加え、特務隊の入隊が決定される等、子供とは思えない程の成長ぶり、流石、あなたの娘さんが見込んだだけのことはありますな。ロックフェルド財団会長ハリー・ロックフェルド。ん? どうなされました。」
「むしろ、厄介事が増えただけですよ。あのじゃじゃ娘、面倒な小僧を拾いやがって…」
「どういうことですか?」
「どうもこうも、あの例のデーモンビースト暴走事件のことですよ! しかも、その暴走したデーモンビーストの制御チップを埋め込んだのはブラッディ特務少佐なのですよ!
そもそも、あの制御チップに問題は無かったんじゃないんですか!? それに第一、あのアームだって遠隔操作無しでは動かないはずでは…」
「ミスをしない人間等、1人もいない、出来る奴がいるとするなら、それこそ、人間以上のもの…ただ、それだけですよ。」
「誤魔化さないでください! そもそも、ブラッディ特務少佐はあなたと議長が推薦した技師長ですよ! その男がデーモンビーストの暴走を許すというミスをしでかしたというなら、反財団派の者が黙っていない…」
「フーバー・マクマリー議員のことでしょうか?」
「次期議長の最有力候補の1人にして反財団派の中心人物でもあるあの男です。 あの男が議長選で勝利すれば、間違いなく我が財団と財団出身の者たちの権力を剥奪するに違いません。 それに厄介なことにあの事件を収めたのはあの小僧以外にも例の小僧もいると聞きますし…」
「地球圏連合国軍統制連合艦隊司令、ハワード・ブリュースター中将のせがれ、グリス・ブリュースターですな。」
「あの男は軍の中でも、我が財団を丸で目の敵にしているかのように嫌っている筋金入りの反財団派の男ですからね。」
「例の5年前の事件を我々のせいだとほざいているあの男か…議長閣下もあの男にはかなり手を焼いていて、そしてその息子までもまた面倒を起こすとは…」
「しかも、軍で独自のASの開発も進めていると聞きます。もしそれが成功したら、財団がASを開発する必要性も無くなり、余計存続が危うくなります。」
「アスモゲルデ…でしたな。 軍が独自に開発した新型ASのプロトタイプ…」
「そうです! もし、それの性能がアルケーダ以上でしたら…」
「心配は要りません。我が財団と比べ、それほどの技術者も部品もない軍が開発したAS等、たかが知れてます。せいぜい、作れても量産機と同等レベルのスペックでミカエル等のエース機までは作れません。
その証拠にブラッディ特務少佐がセラヴィムという機体のデータを元に新型のASを開発し、実践テストでも期待の成果を挙げています。ですから、何も気にすることはございません。」
「だが、いいのか? 次期議長がまだ成人すらもしてない小娘に…」
「会長は随分、娘さんを信用してませんな。そのためにあれだけの英才教育をさせたのです。ましてや、彼女が議長選に勝利すれば、それこそ我が連合国始まっての史上初の快挙となり、益々我が財団を支持する者も増えますから一石二鳥でしょ?」
「しかし…」
「まあ、次の議長選で結果を出せば、それでいいのですから、今は気長に待ちましょう。では…」
そういって部屋を退出し、財団本部から評議会ビルに車で移動し、議長室に入ると部屋が暗く、誰か特定は出来ないが、ある人物がいた。その人物はホワイト副議長に問い、
「随分、手こずってたようだな。」
「知ってましたか…」
「通信用の盗聴機をお互いに持っているから、知らないわけがないだろ?」
「その方がやりやすいですからね。 相変わらず頑固でしたよ! あの会長は…」
「ま、無理もない。次期議長の有力候補を年端もないガキに委ねているのだからな。」
「ですが、これで少しは情報が掴めました。」
「ほぅ、」
「反財団派のマクマリー議員とそれを支持する統制連合艦隊があの事件以降、活発に動き始めたそうです。」
「そうか…」
「あの事件は想定内だったのですか?」
「想像はそちらに任せる。だが、反財団派が動いたとなら、こちらとして好都合。そうでなきゃ、張り合いがないからな!」
その翌日、評議会ビルの演説場で、その反財団派フーバー・マクマリー議員が演説を行っていた。
「建国当初、我が連合国は、ジオフロントと名付けた地下都市を首都に置き、現在より遥かに小さな小国でした。 しかし、ASの開発により、デーモンビーストに対抗出来る力を手に入れ、地上に進出することが出来、現在のメトロポリスに首都を移動し、今や全世界の6割を制圧した軍事大国にまで成長を遂げました。
もちろん、我が連合国軍の主力であるASを開発したロックフェルド財団の功績あってのことであり、それが事実であることを否定はしませんが、それを機に財団は軍や政治の中枢にまで手を伸ばし、評議会の議員の大半が財団出身を占め、連合国の政治的実権まで握る程の権力まで有し、更にそれによって貧困層が地下都市ジオフロントに移動させられ、現在では、そのジオフロントはゾーンと呼ばれることが多く、地下と地上の間で貧富の差が生じる問題まで発生し、対立まで起こりました。
しかし、本来、我が地球圏連合国は誰もが平等で生き、デーモンビーストから地球を取り戻し、人類を統一する目的で建国された国です。これ以上、財団の権力が強まれば、それは達成されません。
私は後に行われる議長選で勝利し、議長に就任したその暁に財団の権力を弱め、誰もが人として等しく生きていられる世界を実現したいと思います!」
その演説を聞いて、評議会の議員は一部の議員を除いて拍手喝采をした。演説を終えた後、マクマリー議員は入口で待機していた車に乗り、移動中にパソコンを開き、ある人物と通信を開いた。
「マクマリー議員が私に何の用ですか?」
「なに、演説が終わったから、君とゆっくり話したいと思っているだけだ。統制連合艦隊司令ハワード・ブリュースター中将。」
「正確には私は副司令で、総司令はデイビス・テイラー大将です。」
「そのテイラー大将は今、何処に?」
「もしや、そのことを聞きに…?」
「例の事件以来、財団に対する国民の信頼が徐々に落ちてきており、それまでかなりの人気を得ていた財団の令嬢の優位性も絶対的なものではなく、次の議長選で彼女が圧勝する可能性も僅かながら低くなってきている。」
「大体は察しました。財団が議長選を有利に進めるよう、自らの令嬢を各国へ訪問させる計画を進めているということですね。」
「流石だ、そこまでわかれば、話は早い。」
「で、私にどうしろと? まさか、それを妨害するなどということをすれば、国家反逆罪になりますよ…」
「まさか、私はクーデターを起こしてまで選挙に勝ちたいとは思ってないよ。あくまで正々堂々、正式な選挙で勝つつもりだ。」
「では、何を?」
その1時間後、ニューヨークにある統制連合艦隊司令部からロサンゼルス基地に向かうための軍事物資を運搬した列車が走り、その周囲を10体のアルケーダが護衛として付いていった。 外部からの妨害もなく、問題なく進路に進み、ロッキー山脈を抜けようとしていた。操縦席には機関士と護衛の隊長が話していた。
「もうすぐでロッキー山脈を抜けるな。」
「ここまでは問題ない。だが、気は抜けないな。」
「ですが、ここは地球圏連合国の占領地域、デーモンビーストも粗方駆除されてますから、大丈夫ですよ!」
「だといいがな…」
その時、護衛の一体のアルケーダが何かに引きずり込まれるように森の中に隠れてしまった。その内一体がいなくなったのに気付き、
「ん?」
「どうした?」
「1人いないのだが、何処いった?」
「え…そういえば…」
1人の兵士がいなくなった報告は機関士室にいる隊長に届いた。
「何!? いなくなった! それで何処に?」
「探しているのですが、通信が繋がらない上に機体の反応もないのです。」
「列車を止めろ! 全機、警戒体制に入れ。」
隊長の命令により、列車が止まり、護衛のアルケーダは列車を取り囲むように警戒した。しかし、突然、森の中から巨大な糸のようなものが現れ、一体のアルケーダを引きずり込み、他のアルケーダが発泡するが、姿が見えないため、当たっているのかわからなかった。
そのため、護衛の兵士は闇雲に撃ち込むしかなかった。だが、姿の見えない敵は再び巨大な糸を出し、一体ずつ森の中に引きずり込んでいった。
「くそっ、敵は何処だ? 何処なんだ!?」
最後のアルケーダが四方八方に撃ち込むが、歯応えが一切なく、遂に最後の一体も引きずり込まれてしまった。
「どうした? 応答しろ!」
隊長が何度も呼び掛けるが、応答はなかった。護衛のアルケーダが全滅し、辺りは静まり返っていた。隊長は拳銃を取り出し、周囲を警戒する中、機関士は何かに気付いて怯えていた。
「あっ…あっ…ああっ…」
「どうした?」
怯える機関士に隊長が気付くと、巨大な足音がゆっくり列車に近付いていった。足音は前の方に聞こえていき、その音に乗じ、列車が揺れていった。機関士が震えながら前をライトで照らすと、そこには巨大な細長い足を8本持った存在が現れ、列車に襲い掛かってきた。
「うっ…ウワァ~!!」
同時期、ホワイト副議長がヘレナの各国訪問のための安全ルートを確保するよう命じられた特務隊は偵察部隊を派遣し、アラスカを経由するルートに向かい、ヒマラヤ山脈周辺を偵察していった。
しかし、列車の護衛部隊と同じく、森の中から現れた巨大な糸に捕らわれ、次々と機体が消え、更に上空を飛んでいる機体は周囲を警戒するが、突然、森の中から現れた幾つもの足を持った巨大な影に襲われてしまった。
ニューヨークにある統制連合艦隊司令部からロサンゼルス支部に移ったテイラー大将の代理として司令部に移ったハワード・ブリュースター中将のいる司令室に1人の将校が入った。
「スカル・デナム大尉、只今、到着しました!」
「急に呼び出して済まない。」
「いえ、中将のことですから、これぐらいは大したことはありませんよ。で、一体、何の御用で?」
「ヘレナ・ロックフェルド嬢…財団会長の娘の護衛部隊の指揮を君に任せたいのだ。」
「俺が? 冗談はよしてくださいよ。あの嬢ちゃんは確かに可愛いけど、俺たちにとっては…」
「そうだ…反財団派が多い我々統制連合艦隊が支援しているマクマリー議員の政敵に等しい存在だ。だが、政敵とはいえ、彼女は年端もない子供だ。
いくら、英才教育を受けているからといって、現実の過酷さをその身で体現したことがないため、社会の経験は我々大人と比べて非常に乏しく、精神力も高いわけではない。
例のアモンボア暴走事件の影響で、財団と現議長に対する国民の信頼は落ちてきてはいるが、彼女の人気と支持率はそこまでではない。だが、もしこのまま議長選に勝利すれば、財団の傀儡にされるのは明白だ。そうなると、益々、財団の権力が強くなり、独裁政権になっていくだろう。 そうならないためにも、スカル・デナム大尉。君に…」
「彼女を財団の飼い猫にされないように、護衛中にしっかり我々で教育しろってことですよね?」
「そうだ…それには君が適任と思っている。」
「確かに、女の扱いに自信はありますが、最終的に決断するのは彼女自身です。それにもし、彼女が既に財団の英才教育で洗脳されていたら…」
「気休めにもならない可能性はあるが、少なくとも、私の見立てでは、彼女はそこまで馬鹿ではないだろう。それに私は君を信用している。」
「私は彼の代わりにはなれませんよ。司令の大事な部下のようには…」
「私は許せないだけだ。5年前のあの事件の真相を揉み消し、私の大切な部下を見殺しにさせた財団と現議長を…」
「私だって許せませんよ。あの事件を境に地球圏連合国の占領地域の拡大と共に財団の権力は更に強くなりましたからね。」
「だからこそ、変えなければならない。腐るようになった祖国を我々が内部から…」
その時、1人の兵士が司令室に入り、
「ブリュースター中将、ロサンゼルスにいるテイラー大将から通信が入りました。」
「総司令から? 繋げ。」
それに応じ、ブリュースター中将はテイラー大将との通信を開いた。
「テイラー大将、一体、何があったのですか?」
「こちらに向かう軍事物資を輸送している貨物列車がロッキー山脈を抜ける際に、突然、消息を経ったようだ。これを見て欲しい。」
テイラー大将が送った映像では、偵察部隊が何者かに襲撃された列車の跡を撮ったものだった。
「これによると、護衛の機体が全て消え、列車が破壊されている。 これがどういう意味かわかるか?」
「テロリストがやったものにしては不自然…と言いたいのですね?」
「そうだ。テロリストがやったものなら、本来、軍事物資が狙いのはずだ。だが、偵察部隊が送ったこの映像によると、列車は破壊されているが、軍事物資は残ったままかつ機体の残骸が見当たらない。」
「機体の鹵獲が目的ということも有り得ないが、軍事物資が一切荒らされておらず、しかも機体の一部すら残らず綺麗に消えているのは人間が出来るような芸当ではない…ということですね?」
「そうだ。」
「しかし、北米大陸に我が軍が駆除出来ないデーモンビーストはいないはずですが、ブラックリストに載っている厄介な個体の生き残りがいるということですか?」
「正体がまだ不明だが、偵察部隊がその正体を判明した後、直ちに我々でこれを排除す…」
「テイラー大将! て、敵が…!」
その時、テイラー大将が送った偵察部隊からの通信が来た。
「どうした!? 何が起こった?」
テイラー大将が呼び掛けるが、偵察部隊からの通信では応答は出なかった。
「くそっ! こんな時に…だが、我々がデーモンビースト駆除に動いてそれが財団と特務隊の耳にまで届いたら、益々、我々が不利になる。」
「ならは、その役、私にやらせてもらえないでしょうか?」
声を挙げたのはスカル・デナム大尉だった。
「デナム大尉。しかし…」
「我々統制連合艦隊が部隊を動かせば、その隙に乗じて財団と特務隊が我々を利用してデーモンビーストを駆除して我々に恩を持たせ、財団の令嬢の護衛に口を出すのは明白です。そうなれば、ヘレナ嬢は財団と現議長の言いなりになってしまうでしょう。」
「なら、どうするというのだ?」
「討伐に特務隊も動かせるのですよ。」
「何!?」
評議会から少し離れた場所にある特務隊の軍基地の司令室で、オクタヴィス特務大尉が偵察部隊が消息を経った事件の報告をマッカーシー特務大佐に伝えた。
「副議長の命令で、ヘレナ嬢が各国へ訪問するための安全ルートを確保するよう、偵察部隊を派遣させたが、その部隊が突如、消息を経っただと…?」
「それだけではありません。ロサンゼルス基地に軍事物資を運搬していた列車が突然、正体不明のデーモンビーストに襲われ、護衛部隊を失った情報もあるそうです。」
「北米大陸にいたデーモンビーストは粗方駆除したにも関わらず、まだ生き残りがいたとはな。しかも、偵察部隊が消息を経った場所はその列車が襲撃されたロッキー山脈周辺ということは、そこにいるということか…
それにしても、本当に渋いものだ、デーモンビーストというものは。」
「いくら、ASを開発したとはいえ、人間ではやはり太刀打ち出来ない存在ということでしょうか…」
「確かにこれまでも、我々は奴等の正体の何も掴めていない。奴等もまた人智を越えた存在ということか…
面白い。これを議長に報告して許可が下り次第、直ぐに出撃する。」
「ですが、我が特務隊によって派遣された偵察部隊が全滅されたとなれば、特務大佐と私が出てどうにか出来る相手ではないと思います。」
「なら、特務隊全てを出撃させる。」
「では、彼等も出撃させるのですか?」
「当然だ。彼等は私の部隊に所属しているのだからな。」
「確かに彼等の実力は私も知っていますが、入隊して間もない者をいきなり実戦に出すのは無謀過ぎませんか?」
「いや、彼等は既に実戦を経験しているも同然だ。それに彼等の記念すべき初陣にはむしろ持ってこいのではないか?」
「まあ、特務大佐がそこまで言うなら、反対はしませんが…」
「ところで、ブラッディ特務少佐が開発した新型機は? 出せるのかね?」
「実地テストの後、幾つか不備が見付かり、その再調整のため、暫く出撃は出来ないそうです。」
「そうか…あの機体の性能を是非、この目で見たかったのだが…」
「とはいえ、あれはまだ、試作機ですし。流石に実戦に出すのは早いでしょう。」
「ま、機会はいずれ来る。そういえば、その列車が襲撃されたという情報は何処から?」
「統制連合艦隊の者からです。」
「統制連合艦隊から? 誰だ?」
「スカル・デナム大尉という者で、何でも、その正体不明のデーモンビースト駆除に是非、協力して欲しいとのことです。」
「(スカル・デナム大尉といえば、統制連合艦隊副司令ブリュースター中将の腹心である人間だ。その男が我々と協力したいだと…)」
「何でも、これに応じてくれれば、ヘレナ嬢の護衛の協力と支援も行うとのことです。」
「(狙いが掴めないが、だが、我が特務隊嫌いのブリュースター中将と接触する機会も得られるかもしれない) よし、それに応じると伝えろ。」
「はい。」
「マルス・マッカーシー特務大佐、お会い出来て光栄です。」
「統制連合艦隊の者が私に何の用ですか?」
「実は、鉄道の護衛部隊が正体不明のデーモンビーストに襲撃されたという事件がありまして、しかも、敵は神出鬼没で我々だけでは手に追えないので、特務隊と協力したいのですが…」
「敵の正体は判明しているのですか?」
「それまだ、掴めていませんが、戦力は多いことに越したことはないかと…」
「何故、我々に協力を?」
「理由は簡単です。デーモンビーストは人類の脅威、全ての人類が共に倒さなければならないのは当然でしょう。」
「わかりました。その要求に応じます。」
「ありがとうございます。」
オクタヴィス特務大尉から承諾の通信を受け取ったスカル・デナム大尉は通信を切り、
「これで良し。後はお手並み拝見だな。」
教会で謎の異空間に生息する存在に襲われた事件の後、ラルドはマルコと共にノアを連れて、ロックフェルド財団本部のロックフェルド邸に戻り、ノアのことをヘレナに話した。
「そう…そういう事情なら、放っておけないわ。ここに置いていけるかどうかはお父様の許可が出ないとだから、私が何とか説得してみせるけど、もし、駄目だったら、叔父様にも相談してみるわ。」
「うん、わかった。ありがとう。」
ヘレナが父親である会長の元に向かおうと部屋を退出した後、ラルドの隣にいるノアは状況を把握出来ずにいた。
「大丈夫だよ。君を1人にさせないから…(やっぱり、教会にいた時の記憶は無くなっているみたいだ。その時のことを覚えているのは僕だけみたいだけど、その事もヘレナに話すべきだったかな…?
いや、他の皆は覚えていないのに僕だけ覚えているなんてことを話してもヘレナだって混乱してしまうだろうし、それにあの時のことが起こった証拠だって残ってないから、暫くあの時のことは伏せておこう。)」
部屋を退出したヘレナは父親である財団会長ハリー・ロックフェルドにノアのことを話した。
「もう1人を養いたいって?」
「はい、お父様。」
「全く、次から次へと拾いやがって…こっちも余裕がないんだぞ!」
「ですが! お父様。世界には私のような人間ばっかりではありません。むしろ、親や兄弟のいない子たちが一杯います。
私は何度も、この財団で保護された子たちも見てきました。ですから、あの子も放っておくわけには…」
「お前のお人好しぶりにはホント呆れる。第一、お前は議長選の前に各国へ訪問しなければならないだろ。その場合、そいつらの世話は誰がするのだ?」
「そ、それは…」
「全く、計画性もないとは…よくそれで、議長になろうと思ったな。もし、仮に議長になったとしても失態を犯せば、それこそ、我が財団やロックフェルド家に泥を塗ることになるぞ。」
「うっ…」
その時、使用人が尋ね、
「旦那様、ヨシフ・ブラッディ様がお待ちしておりますが…」
「後にしろ! こっちは取り込み中だ。」
「私を無視するとは、随分、気が立ってますな。」
その時、その会話に割って入るように、ブラッディ特務少佐が部屋に入った。
「ブラッディ特務少佐…」
「少しは娘の言うことも聞いたらどうだ? そんなことじゃ、益々、他国は我が国を拒否することになるぞ。
そうなれば、人類の統一等、夢のまた夢。それを実現するのが彼女なんだよ。」
「しかし、この娘は後先も考えない小娘だぞ!」
「そりゃ、まだ年相応だからでしょ。だからこそ、大人である我々がサポートしなければならないのですよ。」
「じゃあ、彼女が留守の間、財団に預かっている小僧共はどうするのだ?」
「それに関しては問題ない。彼らは行き場のない子供だ。これまで通り、私が彼らの能力を判断してそれに見合った職を就けさせている。それで十分だろ?」
「君が面倒を見るのか?」
「私はあくまで技士長で、前線指揮に出るような人間ではない。少しの暇ぐらいは作れる。」
それを聞いたヘレナは、
「では、叔父様。ノアのことは…」
「ああ、私が許す。ラルド同様に世話をしてやれ。」
ヘレナはそれを聞いて嬉しく思い、
「ありがとうございます!」
「それと、ラルドに伝えておいてやれ。議長が特務隊に次の命令が下った。だから、早く隊のところに来いと、マッカーシー特務大佐からの命令だ。」
ヘレナから話を聞いたラルドは特務隊の基地に向かい、そこで、マッカーシー特務大佐が集まった特務隊の兵士の前で演説を行っていた。
「諸君、議長命令により、我々特務隊に任務が下った! その任務はロサンゼルス基地に向かう軍事物資を乗せた列車を襲撃したデーモンビーストを駆除するとのことだ。
その正体は現在、掴めていないが、この世界に蔓延る悪魔を全て駆逐することが我々の任務だ。そのために我々軍人がいる。
中には入隊して間もない者もいるが、しかし、これは人類の試練でもある。かつて800年前の悪魔の審判のようにデーモンビーストに怯えながら暮らす世界を選ぶか、奴等を倒して地球を取り戻すかのどちらの選択肢しかない。」
演説が終わり、特務隊の兵士はそれぞれの機体に乗り込んでいき、その中、マッカーシー特務大佐に呼ばれたラルドとクトラはその話を受けた。
「オルスター、ブラッディ両二等兵。君たちは実戦の経験は既にあるだろうが、部隊の人間として軍人としての出撃は、これが初陣になる。
つまり、これからは1人で行動することは出来ない。もし、上官である私に従わなかったり、命令に違反した行動に出れば、それは死を意味することだと思え!」
「はいっ!」
「はっ!」
「それとだが、オルスター二等兵。君が返したがっているセラヴィムだが、君の今後の活躍に期待して正式にあれを君の機体としよう。」
「ホントですか!?」
「ああ、その考えは私もブラッディ特務少佐も同じだ。あれは我が軍にとっても重要な戦力だ。そしてあれを乗りこなせるのは君だけだからな。
それと、君の機体はブレードメイスとナイフのみの武装のため、あれでは、更なる戦闘ではかなり厳しくなると踏んで、セラヴィムの整備をしていたマルコに頼んで、セラヴィムにはアルケーダと同型のライフルと肩にミサイルポッドも装備しておいた。これなら、十分、戦えるだろう。」
「ありがとうございます!」
「ただ、ブラッディ二等兵。君の父が開発してくれたルシファロイドは現在、調整中のため、出撃出来ないため、アルケーダで我慢してくれないかな?」
「問題ない…使える機体が無いよりはマシだ。」
そう言うと、クトラはその場を離れ、出撃準備に取り掛かった。
「相変わらず、無愛想だな。」
出撃した特務隊はスカル・デナム大尉が指揮する部隊のいるロッキー山脈周辺のところに向かい、そこで、マッカーシー特務大佐とオクタヴィス特務大尉はデナム大尉に挨拶した。
「特務隊のマルス・マッカーシー特務大佐とアウダ・オクタヴィス特務大尉です。」
「統制連合艦隊所属、スカル・デナム大尉です。よく来てくれました。」
「早速ですが、例の正体不明のデーモンビーストの生息場所は把握してますか?」
「確証は無いですが、消息を絶った鉄道の護衛部隊がいなくなった位置を見るにヒマラヤ山脈周辺だと思われます。もちろん、その鉄道付近を調べなければ、何とも言えませんが…」
「了解した。では、我が特務隊はスカル・デナム大尉の部隊と共にそこに向かいましょう。」
承諾したマッカーシー特務大佐の指示に従った特務隊はスカル・デナム大尉の部隊と共に事件の起こった鉄道付近に到着し、その周辺を調査し回った。付近には怪しい影らしきものは見当たらず、捜索は難を極めるかに見えたその時、1人の兵士が倒れた木々を見付け、そこに立ち寄ると、何かの巨大生物が歩いたような足跡を見付けた。それを見付けた兵士はこのことをマッカーシー特務大佐に伝えた。
「そうか、では、各隊はそれぞれの場所に向かって捜索を開始し、発見次第、私に報告しろ。」
「了解しました!」
マッカーシー特務大佐の命令を受けて特務隊は2、3人くらいによる組に分けて各地を捜索した。
ラルドとクトラは別の組に分かれ、クトラの組はラルドのいる場所から離れた場所で周囲の捜索をしていた。クトラの乗るアルケーダは同じ部隊の兵士とは逆の方向を警戒し、問題がないと判断し、方向を変えようとしたその時、突然、森の中から糸状のものが飛び出し、それを察知したクトラはライフルでそれを撃ち落とした。それに気付いた兵士は、
「どうした?」
「敵がいる。」
「何!?」
その時、森の中から幾つもの糸状のものが現れ、一緒にいる兵士もそれを撃ち落とすが、全てを撃ち落とすことが出来ず、撃ち落とせなかった糸状のものに手足が絡みとり、手足の自由を失った。
「くそっ!」
しかし、そんな状態でも、クトラはそれが何処から現れるのか把握しているかのようにそれら全てを的確に回避し、撃ち落としていった。
そして、糸状のものがしばらく現れなくなり、クトラはライフルを構えて森の中に狙いを定めると、1発の糸状のものが襲い掛かり、クトラはそれを微かに避け、位置を把握したかのようにライフルを2、3発放ち、森の中は再び静まり返った。
「仕留めた。」
クトラの言葉を聞いて兵士は首を傾げた。
「仕留めた? 敵の姿が見えないあの状態で倒したのか?」
「ならば、確かめてみろ。」
それを聞いた兵士は恐る恐る森の中に入っていくと、そこに頭部が撃ち込まれた巨大なクモのような生物が倒れていた。
ラルド方は山脈近くの周辺を捜索して回り、こちらは問題なさそうに思えたその時、突然、森の中から呻き声のような声がし、それに気付いたラルドは新たに装備されたアルケーダのと同じライフルを取り出し、周囲を警戒した。その様子を同じ部隊の隊長が気が付き、
「どうした?」
「森の中に中に何かいる…」
「何?」
そして再び呻き声がし、隊長や他の兵士もそれに気付いた。
「聞こえる…それも普通の生物の声じゃなそうだ。」
「それにそう遠くもなさそうだ。」
「マッカーシー特務大佐に通信で知らせるか?」
「いや、もう少し、正体を調べてからでも遅くはない。」
「しかし…」
「ラルド、今の声から位置は特定出来るか?」
「正確な位置までは特定出来ませんが、大方の距離は把握出来ます。」
ラルド以外の最後の1人の兵士が乗るアルケーダが突然、巨大な糸に足を捕らえられ、それに引っ張られてしまう。
「う、ウワァッ~!!」
それに気付いたラルドはそれを追い、走りながらアルケーダの足にくっついている糸を狙って攻撃した。セラヴィムのライフルの弾丸が糸を直撃し、その兵士がそこから脱することが出来た。
「ありがとう、助かったよ。」
「どうってことないよ。」
しかし、助かって少し安心したその時、突然、巨大な存在が森の中から飛び出してきて味方のアルケーダを捕らえ、セラヴィムはその衝撃で飛ばされた。
現れたのは40m以上のサイズを誇り、2本の前足にはカマキリのような巨大な鎌を持った巨大クモ型のデーモンビーストだった。
「こいつが正体か。」
巨大クモ型怪獣は口から粘着性の糸を吐き、アルケーダを絡めとり、動きを封じた。巨大クモ型のデーモンビーストは巨大な牙を向けてコクピットに近付け、兵士は怯えた。
「うっ、ウワァッ~!!」
ドン、ドン、ドン!
ラルドはそうはさせじと、セラヴィムに新たに装備されたアルケーダと同タイプのライフルで、その巨大クモ型のデーモンビーストに撃ち込んだ。
それに気付いたデーモンビーストは前足の鎌を振りかざしてセラヴィムに向かってジャンプして襲い掛かってきた。セラヴィムは踏む潰される寸前で回避し、回り込んでデーモンビーストの足に撃ち込んだが、デーモンビーストは少し怯んだだけで大したダメージは受けなかった。
銃は効かないと判断したラルドはライフルを捨て、武器をブレードメイスに変え、攻撃を続行した。しかし、デーモンビーストはそれを前足の鎌で受け止め、ものともしなかった。
セラヴィムはそれを押し返すようにパワーを上げるが、デーモンビーストの力もかなり強く、容易に押し返すことは出来なかった。互いに譲らない状況の中、デーモンビーストはセラヴィムに向かって糸状のものを吐き出し、それを見たラルドはギリギリながら回避し、糸は木に当たって粘ついた。糸を見たラルドは、
「やっぱりクモ型だから、相手を捕らえる糸は持っているみたいだ。とすると、軍のASが消えた犯人はこいつか。」
デーモンビーストが鎌を振りかざして再びセラヴィムに襲い掛かったその時、
ズドン!
ラルドが助けた同じ部隊の兵士が援護するようにデーモンビーストに向かって砲撃を仕掛けた。それを見たデーモンビーストはアルケーダを攻撃しようとするが、その隙をついてセラヴィムがブレードメイスでデーモンビーストの背中に突き刺した。
グオォ~!!
セラヴィムのブレードメイスがデーモンビーストの背中に貫通し、デーモンビーストは悲鳴を上げてそれを振りほどこうと暴れた。
セラヴィムはそこから離れないように耐えるが、徐々に貫通したブレードメイスが離れていき、セラヴィムは振りほどかれた。
デーモンビーストは再び、セラヴィムに攻撃するが、アルケーダは貫通した背中を集中砲撃し、デーモンビーストはさっき以上のダメージを受けて徐々に動きが鈍くなっていた。
「よし、止めだ!」
その時、森の中からもう一体の同一個体がアルケーダに向かって襲い掛かり、取り抑えると口から吐き出した糸でアルケーダの動きを封じ、がんじがらめにしていった。
「クソッ、動けん!」
糸によって機体が完全に動きを封じられ、ライフルもブレードもナイフも使えなくなり、機体が使い物にならなくなったのは明白になり、パイロットは直ぐ様、操縦を解除し、機体から脱しようとしたが、いくら開けようとしても、びくともしなかった。
「おい! 何で開かねぇんだ!!」
ラルドがそれに気付くと、もう一体の個体はアルケーダのコクピットにも糸を吐き、機体からの脱出も阻止していたのだった。
ラルドのセラヴィムはさっきまで戦ったデーモンビーストと交戦していたが、さっきのダメージで万全の状態ではなくなったため、先に同じ部隊の兵士が搭乗するアルケーダを捕らえようとしている個体を狙い、攻撃を仕掛けようとしたその時、さっきまでセラヴィムと交戦していたデーモンビーストはそれを逃すまいと口から吐き出した糸でセラヴィムの足を捕らえ、セラヴィムはそこから動くことが出来なくなった。
「しまった!」
セラヴィムが動けないのを見たもう一体の個体は糸で巻き付いたアルケーダを背負って直ぐにその場から立ち去っていった。
そして、残った個体はセラヴィムに止めを刺そうとしたその時、セラヴィムは身体を反転してブレードメイスを取り出し、襲い掛かってきたデーモンビーストの口を貫き、貫かれた頭部から緑色の血液が飛び散り、その血が飛び散った箇所が酸に当たったように溶解していき、同時にセラヴィムの足を絡めとった糸が緑色の血に掛かると、同様に溶解し、セラヴィムはそこから脱し、デーモンビーストは絶命した。
「さっきの奴が行った方向はあっちか。」
ラルドはもう一体の個体が逃げた方向を便りにその後を追い、その場から立ち去っていった。
同時期、特務隊とスカル・デナム大尉率いる部隊が駐留している基地でクトラの倒したデーモンビーストの死体が回収され、調査隊によってその死体を調査していた。
「間違いありません。こいつはデーモンビースト第5号バルガです。」
「バルガ…あのクモ型のデーモンビーストか。しかし、こいつは4年前に全て駆除したはずだが?」
「もしかすると、駆除の際に卵が残ったんじゃないでしょうか。 この手のタイプは繁殖率が非常に高いですから、一個でも残れば、また繁殖される恐れがありますから。」
「そういえば、そのバルガには雄、雌がいたはずだが、そいつはどっちだ?」
「このサイズと形状、そして解剖によると雄です。」
「雄だと!?」
「このデーモンビーストはセアカゴケグモやクロゴケグモの特性を持っていますから、色とサイズを見ればわかりますよ。」
「ちょっと待て。雄ってことは雌もいるってことか?」
「当然です。雄は雌の餌を与えるために活動する謂わば、下僕のようなものです。獲物を追うように活動しているなら、確実です。」
「とすると、こいつが列車襲撃事件でASを消息不明にしたのは…」
その時、デナム大尉がマッカーシー特務大佐の問いに答えるように、
「考えられるのは1つです。機体を強奪し、そこからパイロットを引きずり出して雌の餌として献上するということでしょう。」
「もし、そうなら、パイロットの命は…」
「いえ、雌がまだ食べる時期ではないなら、生存している可能性はあります。」
「となれば、巣を見付け出し、雌個体を駆除するのが先決ですな。もし、これ以上繁殖を許したら、手が付けられなくなるでしょう。」
「だが、その巣は一体、何処にあるというのだ?」
マッカーシー特務大佐の問いに答えるように調査員は、
「クモタイプであれば、恐らく、洞窟内部かと考えられます。」
「とすれば、ヒマラヤ山脈内部かもしれないな。」
「よし、では、我が特務隊はデナム大尉の部隊と共にヒマラヤ山脈を中心に巣の捜索に向かう。各自、出撃の準備に取り掛かれ!」
「はっ!!」
「(それにしても、報告によると、森の中に隠れてて正確な位置が把握できない状態でピンポイントで頭部を撃ち込んだようだが、一体、ブラッディ特務少佐はあの少年にどんな訓練を…) ところで、ラルドの姿が見えないようだが、どうした?」
その問いに答えるように兵士は、
「それなんですが、いくら通信を開いても、応答がないんですよ。」
「何だと!? まさか、既にそいつに…」
「いえ、どうも電波障害を受けているようでして…」
「何!?」
セラヴィムはもう一体のバルガを追いかけて森の中を突き進むと、全ての木に巨大なクモの糸で覆われた森へと入っていった。ラルドは通信を開いてこの事を伝えようとするが、通信障害によって開けなかった。
「通信障害が起きている…まさか、この糸が通信を妨害しているのか? かといって今更、引き返すわけにもいかないし…ん?」
その時、目の前にクモの糸で絡め取られた廃れた研究所が現れた。セラヴィムはゆっくり研究所の方を歩き、その目の前で膝を下ろし、ラルドは銃とライトを持ってコクピットから出、研究所に入ろうとした。
ドアも糸によって絡み付いていたが、カギは既に壊れていたため、容易に開くことが出来、ライトを照らしてゆっくり入っていった。中は何者かによって荒らされた跡になり、足元には破壊された何かの研究材料や書類等があちこちに散らばっていて、壁は何百年も経っていることを物語るように錆び付いていた。
「ここはもう、随分使われていないようだけど、一体、何の研究を…」
暫く先を進んでいくと、ラルドの足が何かを砕いた音をし、ラルドはライトを足元を照らすと、それは生物の屍の骨であり、それが部屋のあちこちにあり、更には腐った死体を入れたカプセルも何個かあった。
そのおぞましい光景を目の当たりにしたラルドは思わず、口の鼻を塞ぎ、目も半開きにしてゆっくりと部屋から出ようとしたその時、ラルドの背中が机に当たり、何かが机から落ちた。
それに気付いたラルドが落ちたものを拾うと、それはその研究所での実験やその結果をまとめた本だった。ラルドがその本を開いてみると、そこには何体か実験体にされた生物やその記録や内容も書かれていてその内容を見たラルドは驚愕していた。
ページは所々焼かれていて、全ては把握出来なかったが、それは生物兵器か、何かをを開発するようなものだった。そしてその研究の責任者の名前も書かれていて、その名を読もうとしたその時、
「カール…」
突然、バルガの雄個体が研究所の天井を突き破って現れ、ラルドに襲い掛かってきた。いきなりの瞬間のため、ラルドはその本を落とし、銃で牽制しながらセラヴィムの方に戻ろうと後退していった。
襲い掛かってきたバルガの雄個体はセラヴィムがあることは気付いていない様子だったが、徐々に距離を詰めていった。
「これは不味い。このままセラヴィムのところに行って乗り込もうとすれば、その時に捕まってしまう。どうすれば…」
その時、ラルドの足元に研究員の誰かが持っていたと思われるライターがあり、更に向こう側の部屋には幾つかの石油タンクがあり、直ぐ様、その部屋にある石油タンクを開けて部屋中にばら撒き、バルガが更に距離を縮めると、その部屋から出、火を付けたライターをその部屋に目掛けて投げ込み、一目散になって入口に向かって走っていった。ラルドが入口に到達した直前に部屋は爆発し、ラルドはその衝撃で吹っ飛ばされ、バルガはその爆発で火に包まれた。
その周辺にラルドとバルガの巣を探していたスカル・デナム大尉率いる部隊がその音と炎上する火に気付いた。
「あれは…」
爆発の衝撃で一時、気を失ったが、直ぐに目を覚ましたラルドはそのままセラヴィムに乗り込み、起動させた。炎に包まれたバルガは体制を整えるが、その直後にセラヴィムが飛び掛かり、背中に張り付き、ライフルを撃ち込んだ。
バルガは必死に抵抗し、振り払おうとするが、セラヴィムは決して離れず、頭部にもライフルを撃ち込んだ後、ブレードメイスで頭部を突き刺し、バルガは絶命してそのまま倒れた。しかし、その直後、森の中からもう一体の雄個体飛び掛かり、セラヴィムを崖に叩き付けた。
「ぐっ!」
セラヴィムからそこから脱しようとするが、もう一体の雄個体は4本の足で崖を突き刺し、残りの足で押さえつけたため、セラヴィムはそこから脱することが出来ず、もう一体の雄個体はセラヴィムを何度も叩き付け、ラルドは気絶し、セラヴィムはブレードメイスを離し、そのまま崖から落ちていった。降りた雄個体はコクピットに糸を吐き、そのままセラヴィムを持って何処かへ行ってしまった。
その後、音と炎を便りにデナム大尉率いる部隊は炎上した研究所に着いた。周囲を見渡すと、スカル・デナム大尉の乗る機体の足元に一部が燃えていた本があり、機体から降りたデナム大尉はその本を拾い、火を払ってその中身を見た。
「これは…」
「大尉!」
兵士の言葉に気付いたデナム大尉は本をしまい、叫んだ兵士の方に向かった。
「どうした?」
「これを!」
「ん?」
兵士が指差すと、それはセラヴィムを拐っていったバルガの足跡だった。
「この足跡、間違いなくバルガのものです。」
「とすると、これはその戦闘の後か…ん?」
デナム大尉が何かに気付くと、向こうに刺さったセラヴィムのブレードメイスがあった。それを見たデナム大尉は、
「なるほど、そういうことか。」
「どうなさいました?」
「マルス・マッカーシー特務大佐とその部隊をここに集結させるよう、伝えろ。私はこの辺りを捜索する。」
「しかし、大尉だけでは…」
「問題ない。巣の位置は粗方わかった。特務隊が来たら、私の合図と共に動き、巣を攻撃するようにも伝えろ。」
「しかし…」
「命令だ!」
「わ、わかりました。」
「それと、あの兵器も手配してくれ。」
「あの兵器とは?」
「超低温ミサイルランチャーだ。」
「しかし、あれは…」
「あれの繁殖を許したら、かなり面倒だ。それを防ぐためという名目なら、上も文句は言わんだろう。」
「しかし、直ぐに用意出来るでしょうか?」
「だったら、このことをマッカーシー特務大佐に伝えて手配しろ。特務隊なら直ぐにでも用意出来るだろう。」
「わかりました。」
しばらくすると、ラルドは目を覚まし、辺りを見渡すとそこは洞窟の中だった。ラルドは機体を起こそうとするが、セラヴィムは一向に動かなかった。
「どうなっているんだ? 機体は何処も異常がないのに…」
調べてみると、セラヴィムの手足はバルガの糸によって絡まっていたため、動くことが出来ず、更にコクピットも同様に糸で防がれていたため、何度も開けようとするが、開かず、機体から出ることも出来なかった。
「くそっ、動かない。それに一体、ここは何処なんだ?」
ラルドが気付くと、目の前には消息不明になったアルケーダが山積みとなっていて、雄個体が1機ずつ機体を持った糸で防いだコクピットを剥ぎ取り、中に向かって糸を吐き、そこからがんじがらめになったパイロットを喰わえて何人かがんじがらめになったパイロットが纏められた糸の塊のようなものに向かって投げ込み、そのパイロットはその塊にくっつき、雄個体は塊を持って同様に同じ塊を持った他の雄個体と共に洞窟の奥深くまで運び、雄たちは1ヶ所にその塊を置いていった。
「ウワァッ~!!」
「助けてくれ! ここから出してくれ!!」
塊の中の兵士が何かに怯えて叫んだその時、
フオォ~!!
突然、巨大な鳴き声がし、洞窟の奥深くからバルガ雄をも越える巨大な足がゆっくり現れ、それはバルガ雄より毒々しい色をし、雄の倍以上のサイズを誇るバルガだった。
「う、ウワァッ~!! それ以上近付くな~!!」
巨大なバルガは選別するよう、気に入りそうな塊だけ自分に近付け、他は避けるようにし、近付けた塊を巨大な口で喰わえ、そのままバリバリ食べていった。その様子に何体かの雄個体が後退していくが、一体だけは巨大バルガに近付き、アピールするような仕草をした。
それを見た巨大バルガはそれに応えるように近付き、雄は回り込んで巨大バルガの背中に張り付いた。その姿は交尾のようなものだったが、その後、突然、巨大バルガは雄を振り払うかのような行動を取り、振り落とされた雄は巨大バルガの巨大な前足に捕らえられ、雄はジタバタしながら、そこから脱しようとするが、その力に抗えず、そのまま雄は巨大バルガによって頭から順番に食べられ、身体の一部も残さず、食い尽くされてしまった。
雄を喰らった巨大バルガは背中から無数の卵を周囲に産み付け、残った他の塊も補食していった。その様子を見たラルドは恐怖で動けなくなった。
残りの雄はセラヴィムの方に向き、ゆっくり近付いていった。ラルドは必死にセラヴィムを動かそうとするが、全く動かず、雄は徐々に近付いていった。
「駄目だ! これじゃ動けない。ブレードメイスやライフルだってないこの状況、どうすれば…はっ!」
その時、ラルドは出撃前にセラヴィムにミサイルポッドが装備されている説明をされたことを思い出した。
「そうだ、今、この状況使える武器は肩のミサイルポッドだけだ。さっきまではライフルとブレードメイスだけで戦ったため、1度も使ってないが、こんな状態で当てるのはかなり厳しい。下手したら無駄撃ちに終わる可能性も…」
悩む中、ラルドは頭上を見ると、何か思い付いた。
「よし、これしかない!」
雄たちはどんどん近付き、ラルドは待つようにミサイルの発射ボタンをいつでも押せる状態にしていた。
「もう少し…あいつらがミサイルの射程距離に入ったその時に…今だ!」
バルガ雄がセラヴィムの一歩手前に行くと、ラルドはミサイルポッドからミサイルを発射し、直撃した天井がその衝撃で幾つもの瓦礫が落ち、雄たちはその瓦礫の山に埋められてしまった。
ラルドが一旦落ち着いたその時、突然、瓦礫の山から巨大な足が現れ、セラヴィムを一振で吹っ飛ばし、セラヴィムは洞窟の中の壁に激突した。
「グハァッ!」
巨大な足の正体は巨大バルガで、瓦礫の山から現れた。セラヴィムは肩のミサイルポッドからミサイル数発を巨大バルガに向かって発射するが、巨大バルガは無傷で、前足を口で洗うような仕草をして余裕を見せた。
「これじゃ、決定打を与えられないのか!」
巨大バルガは再び前足で攻撃し、セラヴィムをそれを避けるが、避けたところで別の足で攻撃し、セラヴィムはまた吹っ飛ばされてしまう。
ラルドは一か八か再度、ミサイルを発射するが、巨大バルガはそれをものともせず、襲い掛かり、前足でセラヴィムを捕らえて壁に叩き付けてしまう。セラヴィムは力付くで脱しようとするが、巨大バルガの力に勝てず、脱け出せなかった。
「くそっ、ライフルやブレードメイスもないこの状態じゃ、あいつには敵わない。」
巨大バルガが口を開いてセラヴィムごとラルドを喰らおうとしたその時、巨大バルガの顔が銃撃を受け、それに気付いた巨大バルガが振り向くと、そこにいたのは巨大な角を持ち、重装甲のような逞しい体躯をしたASで、片手にはセラヴィムのブレードメイスを持ち、それに搭乗していたのはデナム大尉だった。
「ここにいたか。あの色、サイズ、間違いない。雌個体だ。」
フオォ~!!
バルガ雌がデナム大尉機に咆哮を上げると、デナム大尉機は手から2本のワイヤーブレードを出し、バルガ雌顔に突き刺し、手から強力な電流を流した。
バルガ雌は苦しみ、セラヴィムを離し、デナム機に襲い掛かり、前足で攻撃し、デナム機はセラヴィムのブレードメイスで受け止めた。
パワーはバルガ雌の方が上のようだったが、デナム機はそのパワーに押されることなく維持し、隙を見てそこから脱し、別の足にブレードメイスを突き刺した。
フギャォ~
その攻撃に苦痛を感じたバルガ雌は錯乱して他の足で攻撃するが、デナム機はその体躯に似合わない機動性を発揮してその攻撃を避けてバルガ雌の死角に当たる真下に入り、機体の角に電流を溜め、それでバルガ雌の腹に突き刺し、更にブレードメイスも貫通させた。
フギオォ~!!
その攻撃によってバルガ雌は体制を崩し、倒れると、デナム機は回り込んでバルガ雌の背中に乗り込み、右手から出したワイヤーブレードでバルガ雌の頭を絡み取り、更に左手からのワイヤーブレードを背中に突き刺し、再び電流を流し、バルガ雌は苦しみ、デナム機を振り落とそうと暴れだし、洞窟内のあちこちにぶつけていった。
デナム機は壁に当たらないよう移動してそこから離れようとしなかったが、バルガ雌の巨大が洞窟内のあちこちに当たることによって洞窟内が危ない状態と判断したデナム大尉はそこから飛び降り、セラヴィムのいるところに着地した。
「ふぅ、図体の割には随分動けるようだな。」
「あ、あなたは…」
「お、そういえば、こうして直接顔を合わせるのは初めてだったかな? 少年。」
「その声は、もしかしてスカル・デナム大尉ですか?」
「なるほど、君が例のセラヴィムのパイロット、ラルド・オルスター特務二等兵か。これ、落ちていたが、中々いい武器だったぜ。」
そう言うと、デナム機は持っていたブレードメイスをセラヴィムに返した。
「あ、ありがとうございます。」
「しかし、あれだけの攻撃を受けても、まだ生きているとは…思ったよりタフだな。それに…」
バルガ雌の後ろの奥深くにバルガ雌が産み付けた卵が孵り、何体かのバルガ幼体が現れてきた。
「こいつが暴れた影響で、卵の中身も出てきたようだな。こいつらを外に出すのは不味いな。」
デナム大尉は通信を開き、
「俺だ、巣を見つけて目標と交戦している。場所の位置を送るが、どれぐらいでこちらに着く?」
「現在の位置だと、そちらに着くのは後20分と思われます。」
「わかった、到着したら、超低温ミサイルランチャーを洞窟の入口にセットし、俺の合図が来たら、直ぐに発射しろ! それまで時間を稼ぐ。」
「了解しました!」
「部隊は後20分でこちらに到着する。それまでに俺たちは奴をここで足止めする。少年、やれるか?」
「もちろんです! メイスが戻れば、十分戦えます。」
「よし、俺が援護する。君は攻撃に集中しろ。」
「はいっ!」
「行くぞ!」
デナム機は両手からワイヤーブレードを放ち、それをバルガ雌の首に巻き付け、電流を流した。
「少年、今だ!」
その言葉に従って、セラヴィムはバルガ雌の身体に登り、バルガ雌の頭部にブレードメイスを突き刺した。
フオォ~!!
叫びを上げるバルガ雌、しかし、雄より耐久力が強いのか、貫通せず、刺さった程度に留まり、セラヴィムは振り落とされてしまった。
「ぐっ!」
「思ったより、しぶといな。」
バルガ雌は前足で襲い掛かり、セラヴィムはそれをブレードメイスで受け止めた。
「ぐっ! 駄目だ、パワーがテガくてこれ以上は…」
「いや、それでいい!」
何を狙ったかのか、デナム機はワイヤーブレードをバルガ雌の前足に突き刺し、それを利用して跳躍し、電流を貯めた角で前足に突き刺し、それを焼き切った。
フギャオォ~!!
バルガ雌は苦痛の叫びを上げ、デナム機を別の足で突き飛ばした。
「グハァッ!」
「大丈夫ですか? 大尉。」
「心配ない、これぐらいは大したことない。だが、足1本もぎ取ってもまだ、奴は動けるようだ。ホントにしぶとい奴だ。」
その時、ラルドが気付くとバルガ雌の背後に卵から孵ったバルガ幼体が無数に現れて前に進み、バルガ雌の近くまで来た。それを見たラルドはライフルでバルガ幼体を攻撃するが、それを見たバルガ雌は体制を崩しながらも、前足でセラヴィムを突き飛ばした。その隙にバルガ幼体は進み、デナム機はライフルで次々と撃破した。
「(雄を捨て駒にするかのように喰ったのに、自分の子供を守る意思はあいつにはあるのか…もし、そうだとしたら…)」
そして、幼体を攻撃するデナム機をバルガ雌が集中攻撃し、暴れるバルガ雌の身体が洞窟内のあちこちに当たり、洞窟は崩れそうな様子だった。
「くそっ、これじゃ、キリがねぇ!」
「スカル・デナム大尉!」
「何だ、少年?」
「僕に考えがあります。」
「考え? まさか、あいつを倒せる秘策か?」
「いえ、僕たちだけでは無理ですが、部隊が到着するまでにあいつをここに釘付けにすることは出来ます。」
「その内容は?」
「幼体だけに集中して攻撃してください! そして巨大バルガが攻撃しても幼体のみ攻撃して巨大バルガの攻撃に当たらないよう避けてください。」
「一見、バカっぽい作戦だが、今はあのデカブツよりあんだけウジャウジャ沸いている幼体の方が厄介だから、理に叶っているな。よし、その作戦に乗ろう!」
承諾したデナム大尉はラルドと共に、バルガ雌の攻撃を避けながら、幼体だけを攻撃を開始した。バルガ雌は錯乱して闇雲に攻撃するが、身体が洞窟内のあちこちに当たり、洞窟内の頭上は崩れる勢いになっていた。 しばらくそれを続けると、デナム大尉の元に部隊が到着したという通信が来た。
「スカル・デナム大尉! 洞窟の入口に到着しました!」
「そうか、よく来た。」
「少年! 部隊が到着した。急いでここを離れるぞ!」
「はいっ!」
ラルドはデナム大尉と共に洞窟の入口に向かって走っていき、バルガ雌と幼体はその後を追っていった。セラヴィムとデナム機は一目散に走っていき、洞窟は今にも崩れそうな状態だった。
ラルドは何かを待つように後ろを向きながら走っていった。そして、徐々に洞窟の入口に近付いて再度振り向くと、バルガ雌の頭上に向かって肩のミサイルポッドを放ち、それによって頭上が崩れ去り、バルガ雌と幼体は埋もれた。その様子を見たデナム大尉は信号弾を洞窟の入口に向かって撃ち、入口から現れた信号弾を見た部隊は、
「デナム大尉からの合図だ! 超低温ミサイルランチャー撃てぇー!!」
その指示に従った超低温ミサイルランチャーを配置した兵士はミサイルを洞窟内に向かって撃ち込み、入口から入ってきたセラヴィムとデナム機はそれを避け、2発のミサイルは崩れた瓦礫から現れたバルガ雌と幼体に直撃し、洞窟内は強烈な冷気が漂い、起き上がったラルドとデナム大尉が後ろを振り向くとバルガ雌と幼体は凍結し、その影響で洞窟も崩れていき、セラヴィムとデナム機は急いで脱出した。
「スカル・デナム大尉はまだか!?」
洞窟の入口が塞がれそうになったその時、セラヴィムとデナム機が間一髪でそこから脱出することに成功した。
「スカル・デナム大尉。」
「すまない、待たせたな。」
デナム大尉の部隊と共に到着したマッカーシー特務大佐はデナム機の隣にいたセラヴィムを見、
「オルスター特務二等兵、君もいたのか!? まさか、これも君が倒したのか?」
「いや、僕だけじゃないけど…」
「私とこの少年で雌個体と幼体を始末した。先程の超低温ミサイルが放たれた後、凍結を確認した。後は洞窟を掘り起こして焼却処分をすれば、駆除完了だ。」
「そうですか…お手並みを拝見させていただきましたが、どうやら、あなたの実績は予想以上です。同じ部隊でないのが惜しいくらいです。」
「だが、君の推薦した少年…いや、ラルド・オルスター特務二等兵は中々の逸材だ。彼のような人材と君たち特務隊、そして我々統制連合艦隊が加われば、最早何者も敵う者はいない。もし、宜しければ、このことを議長に報告してロックフェルド嬢の護衛に加わらせてもらえないでしょうか?」
それを聞いたラルドは、
「え? それって…」
「今度の護衛、よろしく頼むよ。ラルド君。」
To be continued
次回予告
デナム大尉との共闘によってバルガを討伐することに成功したラルドだが、アラスカ経由は危険と判断され、ヨーロッパ経由で中東のレバン王国に向かう航路が計画され、ラルドを含む特務隊とデナム大尉率いる統制連合艦隊の部隊が護衛としてヘレナをを送り、ロンドンに到着するが、そこでは巨大蛇の噂が立っていた。
次回「悪魔の大蛇」その機体は少年を戦いの運命へ導く。